言語聴覚士の仕事はどのような人に向いているのでしょうか。

今回は、得意な人の特徴やキャリアについてご紹介致します。

言語聴覚士の仕事はどんな仕事?

言語聴覚士は言葉や飲み込みについて困っている方を支援するセラピストです。

国家資格であり、医療現場では理学療法士や作業療法士と合わせて3療法と呼ばれます。

専門学校や大学で座学や実習を終えると国家試験の受験資格を得られます。

受験資格を得るまでに2年ないし4年を要します。

勤務地は病院の他、デイケア、デイサービス、訪問リハビリなどがあります。

言語聴覚士の大まかな仕事内容

言語聴覚士は患者や利用者の病状を確認し、訓練計画を立て、訓練を実施します。

まずは、初回面談を実施し、対象者の状態を把握します。

小児が対象の場合は、保護者にも付き添ってもらいます。

成人でも意思疎通が困難な方は家族に情報を確認します。

次に検査を行います。

検査はスクリーニング検査から詳細な掘り下げ検査へと進んでいきます。

言語聴覚士が実施する検査は多岐に渡ります。

小児分野では発達検査、知能検査、言語発達検査、構音検査、聴覚検査などが実施されます。

成人では知能検査、遂行機能検査、注意力検査、構音検査、失語症検査、聴覚検査、認知症検査などが実施されます。

また、摂食嚥下機能は実際に食事場面も見ながら検査します。

人工内耳の調整でオペ室に入ることや、VFのために検査室に入ることも一部の医療施設ではあります。

検査を終えると訓練計画を立て、患者やその家族に説明します。

そして、実際に訓練を開始します。

仕事上の役割とは?

患者や利用者の意思疎通の能力向上や、手段の確保が主な役割です。

また、低下している脳機能の訓練や摂食嚥下能力向上にも介入します。

仕事内容は主に3つの領域に分かれます。

1つ目は成人を対象とした分野、2つ目は小児を対象とした分野、3つ目は聴覚に特化した分野です。

成人分野は病院やデイサービス、訪問リハビリなどです。

医師の指示や指導に従いながら訓練を実施しますが、実際には言語聴覚士自身が判断し、医師の方針から逸脱している時のみ意見を仰ぐことが多いです。

つまり、受け身ではなく自発的に必要な検査や訓練を提案していかなければなりません。

特に注意すべき点は摂食嚥下に関する介入です。

患者や利用者の体調は多くの職種が気を配っていますが、飲み込みの状態は言語聴覚士でなければ分らない事が多いです。

自分が担当となった時点ですぐに、その患者や利用者の摂食嚥下能力を大まかに把握し、食事形態を確認しなければなりません。

摂食嚥下の他にも、高次能機能について他職種に正確な情報を伝える必要があります。

例えば、失語症の人は知能は低下していないことが多いため、子供扱いしないよう周知しなければなりません。

記憶が低下している場合は忘れないようメモをベッドサイドに貼るなどの工夫が必要です。

小児分野は放課後デイサービスや訪問リハビリ、療育センターなどで言語聴覚士が活躍しています。

成人と違う点はリハビリテーションではなく、ハビリテーションであることが多いことです。

一度獲得した機能が失われるのではなく、まだ獲得出来ていない機能を獲得、あるいは代替手段を確保します。

小児の介入においては保護者への指導も重要です。

初めての子育ての場合、その発達レベルが早いか遅いかを判断することも難しいです。

よって、正しい知識を与えて、家庭においても実践すべき事を伝えます。

また、他の施設とも連携を取り、必要な検査等が必要な場合は紹介する事も重要です。

聴覚に特化した分野は、他の分野と比べると小規模な分野です。

具体的には、耳鼻咽喉科に所属する事や、補聴器メーカーに就職する事等があります。

簡単な聴覚検査を実施する病院は数多いですが、防音室で精密な機械を用いる病院は限られています。

精密な検査をする場合には検査方法が複雑で、普段触れていないと操作が困難です。

また、人工内耳の調整は一部の医療機関しか行われていないため、聴覚に特化した言語聴覚士になりたい場合はそういった分野に力を入れているか、機材があるかを調べておく必要があります。

言語聴覚士の仕事はどんな人に向いている?

言語聴覚士は人と関わる事が好きな人が多いです。

また、論理的に考える事が得意な人が向いています。

それ以外にもどんな人が向いているのか詳しく紹介いたします。

コミュニケーション能力の高い人

言語聴覚士は言葉のスペシャリストです。

患者や利用者が円滑に意思疎通出来るよう支援するため、支援者もコミュニケーション能力が求められます。

言語訓練において、何故伝わったのか、伝わらなかったのかを精査する必要があります。

機械的に型にはまった訓練をするのではなく、その状況に合わせて手助けをする事が必要です。

手話やマカトンサインを知っていると活躍の幅は広がりますが、必須ではありません。

実際に言語聴覚士で手話を実用レベルで使える人はごく一部です。

論理的に考えることが出来る人

医療現場で働く人間として、根拠に基づく医療を行わなければなりません。

点数により境界が引かれている検査であっても、どの項目をどのように間違ったかを精査する必要があります。

そうすれば不必要な検査を避け、適切な訓練を提供出来ます。

特に失語症の検査結果は解釈が難しいです。

認知神経心理学的モデルを理解した上で、検査結果を当てはめ、論理的に解釈する必要があります。

認知神経心理学的モデルは複数あり、学校により異なるモデルを教えるかもしれませんが、基本的な考えは共通します。

リハビリの仕事に就くと、多くの勉強会が実施されます。

病院内で実施されるものもあれば、外部で実施されるものもあります。

医療機関であれば学会や勉強会の費用を負担してもらえる可能性は高いです。

自分に必要な勉強会を探して積極的に参加する事をお勧めします。

勉強会があるという事は発表の機会があるという事です。

苦手な人にとっては苦痛かもしれませんが、一人では不安であった事も、勉強会で思い切って皆に話し、意見を集める貴重な機会になります。

どの職場であっても一度は発表する機会はあると思うので、論理的に考える習慣を普段から身に付けておく必要があります。

世話好きな人

病気や怪我により手足の動作が困難になった場合、ほとんどの方はリハビリで良くなりたいと言います。

一方で、飲み込みが悪くなったり、言葉が喋りづらくなった方は必ずしもリハビリで良くなりたいとは言いません。

言語聴覚療法の効果が分かりにくいことや、言葉の重要性を理解していない事が多いからです。

しかし、飲み込みの能力が落ちて誤嚥性肺炎で亡くなる方は数多くいます。

また、言葉が喋れない事によるストレスは大きく、孤立してしまう事が多いです。

よって、言語聴覚士はその重要性を説き、積極的にリハビリを促す必要があります。

始めの頃は相手の主張に押し切られて積極的に介入出来ない事もありますが、やらない事による後悔は必ず出てきます。

よって、自然と自分の主張に自信は付いてきます。

言語聴覚士の仕事をするために活かせる、今までの経験は?

子育てや介護は言語聴覚士の仕事に活かせる経験です。

子育て経験

小児の発達支援をする場合は子育て経験が役に立ちます。

発達障害児を支援する場合、健常児と比べて発達段階に明らかな差を見つけなければなりません。

また、子供がどういった事に興味を示し、どう対処したら良いか経験上学んでいれば支援も容易になります。

また、母親からしてみれば、相手が子育て経験をしていると知るだけで気を許す場合があります。

必須ではありませんが、相手の信頼を得るのに時間が掛からないという意味では子育て経験は活かされます。

介護経験

子育て経験と同様に、家族の介護経験も役に立ちます。

どのような施設で働くにしても、言語聴覚士も介護士や看護師と協力して利用者の支援を行います。

移乗や歩行介助を始め、入浴介助やトイレ動作を介助する可能性もあります。

言語聴覚士を取得する為に必要なカリキュラムには介助動作は最小限しかありません。

よって、ほとんどの動作は実践を通して学んでいかなければならないのです。

よって、家族の介護を実際に経験している方は職業上役に立つ経験をしていると言えます。

また、前職で医療福祉業界で働いていた場合も当然その経験が活かされます。

言語聴覚士の仕事しか分からないと、訓練以外で患者や利用者が困っている時、その都度他の人を呼ばなければなりません。

看護師や介護士も忙しい為、ある程度自分で出来る人の方が評価され易いです。

接客業の経験

職務経歴として役に立つものとして接客業が挙げられます。

特に新卒者の場合、自分と世代の違う方と話す機会は少ないです。

高齢者の場合、若い人の失敗は大目に見てあげようと考える人が多いです。

よって、気付かぬうちに失礼な言動をして信頼関係が崩れる事があります。

接客業を通して他者との接し方を学んでおく事は武器になります。

言語聴覚士として働くメリットとは?

感謝される

食事の飲み込みの状態が良くなったり、意思疎通が円滑になると本人や家族から感謝されることがあります。

特に回復期の病院ではかなりの時間を患者と共に過ごす事になります。

お互いに親密になりますし、訓練を通して症状が改善されると相手や家族、セラピスト自身にとっても喜びになります。

障害を持つ方との接し方を理解できる

言語聴覚療法の対象となる障害は多岐に渡ります。

身近な人が障害を有した場合、その対処に困る事が多いですが、言語聴覚士の知識で相手をより深く理解する事が出来ます。

発達障害や言語障害等、徐々に社会に認知されつつありますが、人は理解出来ない言動をする人を見ると不安になります。

なんとかしてあげたいと思っても適切な接し方が分からないともどかしいものです。

言語聴覚士はすべての発達障害、すべての言語障害を対象としています。

学んだ知識から「ああ。こういうことか」と、相手の要求を理解する事も多く、心が通じたと感じられます。

子育てや介護の知識が得られる

言語聴覚士は子供の発達レベルを十分に理解する必要があります。

よって、子供の言語や運動の発達レベルを把握し、有効な働きかけをすることが出来ます。

また、高齢者や障害者の支援を行う事により、自分の家族に介護が必要になった場合でも適切に対応する事が出来ます。

明らかな障害でなくても、言葉の発達にやや遅れを感じる場合に、適切な介入をして少し早める事も出来ます。

認知症と診断されなくても忘れっぽくなった人に適切な脳トレを提案して進行を遅らせる事ができます。

社会に認知されていないだけで、実は言語聴覚士が介入する事によって改善される症状はたくさんあるのです。

その後のキャリアについて

この仕事についた後のキャリアアップの道は?

言語聴覚士は理学療法士や作業療法士と比べて人数が少ないため、ほとんどの職場で10人以下です。

よって、長年勤めれば役職が付く可能性が高いです。

昇進していくとリハビリテーション科の学科長になる可能性もあります。

病院においてはそれ以上の役職はありません。

デイサービスなどの施設では管理者となる可能性もあります。

管理者であれば月給で数万円程待遇が良くなりますが、経営の基本的な知識を学ぶ必要があります。

ごく一部ですが、個人で開業する方もいます。

言語聴覚士は人工内耳の調整や摂食嚥下訓練以外は医師の指示がなくても実施可能です。

他の仕事にもこの経験を活かせる?

専門性が高いため、経験を活かせる他職種は少ないですが、医療福祉分野であれば経験を活かせます。

言語聴覚士として働いていると、必ず介護の知識も身に付くため、医療福祉分野に活かされます。

言語聴覚士の社会的地位向上を目指す

言語聴覚士としてキャリアが長くなると講演の依頼も来ます。

その内容は子育て支援や認知症予防等具体的なテーマで行われる事もありますが、「言語聴覚士とは何か」という講演も多いです。

社会において、言語聴覚士の役割は非常に重要です。

しかし、その重要性を理解している人は多くありません。

このような講演を行ったり、講師として後進を育てるなど言語聴覚士業界を盛り上げる仕事もあります。

まとめ

言語聴覚士は専門性が高く、業務内容のほとんどが他職種や他業種の方の知らない知識を要するものです。

従って、患者や利用者と意見が対立する事もあります。

言語聴覚士しか分からない事が多いという事は、自分が責任を持って取り組まなければならない場面も多いという事です。

特に摂食嚥下機能の分野では、常に選択を迫られます。

患者や利用者は必ずもっと良い物を食べたいと言います。

しかし、自身の飲み込みの能力を把握している人はほとんどおらず、言語聴覚士が制限をかけなければなりません。

極端な場合、口からは食べられず、胃瘻等の経管栄養の選択をする事もあります。

葛藤の中、難しい決断をするのも言語聴覚士の使命です。

難しい選択をする一方で、感謝される場面や感動する場面も多々あります。

例えば、小児の発達障害の介入においては我が子のように接してきた子供が一つずつステップアップしていく様子が見られます。

しかも、それが自分の立案した訓練のによるものであればさらに喜びが増します。

成人の介入においても、喋れなかった人が喋れるようになったり、意思疎通が可能になった時には家族も含め、大変感謝されます。

他の仕事ではこのような感動的な場面に遭遇する事は中々難しい事です。

奥が深く、やりがいのある言語聴覚士の仕事に少しでも興味を持って頂けると嬉しく思います。


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