2021年2月26日

この記事では、研究開発職(特に製造業系)における仕事内容やキャリア、福利厚生などについて解説します。

また、おすすめ求人などについても紹介します。

研究開発職に興味がある方や、将来の職業として検討している人に参考にしていただければ幸いです。

研究開発の仕事とは?

製造業における研究開発という仕事のミッションは、「これまでになかったもの」を生み出すことです。

それを商品として売り出し、誰かに使ってもらい、世の中に普及させることで利益を上げていくのです。

「これまでになかったもの」を商品化するための答えや解決手段はどこにもなく、自身の力で考えなければならないのが研究開発の醍醐味です。

時間がかかる上に仕事の難易度は高く、高い専門性を必要とします。

研究開発資金に余裕がある大手企業や専業・特化型メーカーでの求人募集が圧倒的に多く、製造業で研究開発職に就くには一般的に理系大学卒(特に大学院卒)が多いです。

研究開発の大まかな内容

まずは最先端技術に追いつくところから

現在世の中に出回っているものを超えるものを生み出すわけですから、現在既にあるものについてよく知らなければなりません。

製品の原理や構成をよく調査し、課題を明らかにする必要があります。

自社の先輩社員のこれまでの開発成果・経緯を勉強し、また他社や競合が開発中のものよりも先んじて開発しなければならないため、幅広く深く調査する必要があります。

具体的には関連する製品の特許文献や論文・学会発表などの公開情報についてよく調査し、場合によっては製品を分解するなどして調べることもあります。

専門性の高い文献の読解や論理思考が必要となることが、大学院などの高等教育を受けた人が研究開発職に就く理由でもあります。

新しいものを生み出す

調査と並行して自社での製品を企画設計し、実現するための研究開発を始めるフェーズになります。

従来製品をより良いものにする開発、全く新しい事業を始める挑戦的な計画など様々ですが、計画後は会社から予算や人員・時間などのリソースがつき、チームで取り組みます。

メンバーはそれぞれの専門性を発揮しながら仕事を担当し、実現可能性を追求します。

新卒の場合は先輩社員が企画設計した研究開発の仕事を手伝いながら仕事の進め方を学んでいくことにになるでしょう。

多くのトライ&エラーを繰り返し、目標の仕様に近づけていきます。

技術の専門性を広めたり高めたりしながら、担当する課題解決に貢献していくことが求められます。

また研究開発の最中に得られたアイデアや発明などを特許として出願し権利化することも大切な業務です。

研究開発のサイクルを回し、目標を実現する

研究開発は実験・検証・フィードバックのサイクルを回し、少しづつ目標に近づけていき達成するのが基本です。

短くても2年、長いと10年以上の月日をかけて実現していくため、努力と根気の要る職種と言えるでしょう。

また仕事は当初の予定通りに進まないことが多々あります。

計画の遅延や予定通りの性能が出ない場合など、ストレスにさらされながら継続していきます。

開発中に人事ローテーションなどで他の研究課題に異動することも多々ありますし、計画が実現できずチームが解散、再構成になる場合などは、専門性を活かして別の研究開発に参加することもあります。

幸運にも課題が達成されたら事業化のフェーズに入れますが、その際に事業を立ち上げる仕事に取り組むか、研究開発職として更なる研究を続けるかは、会社や分野によって様々なキャリアがあります。

研究開発の仕事でよくある募集内容とは?

最も募集が多いのは、将来の市場拡大が見込まれ多数の開発人員が必要な分野です。

基本的に人が足りておらず忙しいとされる注力分野に最も募集があります。

2018年現在で製造業系の研究開発ですと、自動運転、AI/IoT、再エネ/蓄エネ/省エネ関連、新素材などが多いでしょうか。

各社得意製品分野やシェアが異なるので、それぞれの会社が最も注力している研究開発分野に求人数の比重が大きくなります。

また継続開発が必要な技術分野では、定期的な人員の補充の求人が見られます。

それらの職種に採用されるのは、その時必要とされる専門性や就職活動のタイミングやなど、巡り合わせも大きな要因となるでしょう。

給与相場

研究開発は高度な専門性を持った理系社員が担当することが多いです。

高学歴且つ年齢も大学院を出ると20代後半に差し掛かるため、比較的給与は高めです。

従業員数が多い会社では修士卒で年収300万円からスタートし、2年目には年収400万円以上になります。

博士だと年収500万円~600万円台からスタートすることが多いです。

順調に昇進すると、30代前半で年収800万円にも到達します。

しかし、労働形態も給与に大きく影響します。

裁量労働かフレックスかで月あたりの支給額が変わりますし、景気が悪く残業禁止となった場合は年収は4分の3程度になることもあります。

逆にフレックス制で残業手当が多い場合は大変大きな額が手に入るケースもあります。

裁量労働制の場合は労働時間によらず業務手当は一定なので、どんなに働いても給料は同じです。

かつては無理な残業の温床になっていたこともありますが、現在はかなり改善され、残業の上限規制などが導入されるようになりました。

勤務時間や休日、残業

研究開発職はいわゆる総合職と同じ扱いであり、残業や休日出勤などを求められる事があります。

裁量労働、フレックス共に残業は日常的にありますが、客先納品前や進捗判断の期限間近などには急な休日出勤が求められることもあります。

若手にしわ寄せがくるケース、研究チームリーダーが責任を持って取り組むというケースは会社の社風やチームの考え方によって様々です。

責任者は家にパソコンを持ち帰って作業するということもまだまだあります。

勤務時間は多くの場合9時~18時、8時~17時などですが、フレックス・裁量労働共に±2時間程度の枠内で活動しています。

どちらかと言えば夜型の社員が多いです。

福利厚生

時間がかかるという研究開発の性質上、会社は規模の大きな体力のある製造業であることが多いため、福利厚生は比較的充実していると言えます。

自社製品の安価な購入や保険・社宅・保養所・持株会などが充実している会社が多いです。

働き方やプライベート時間の考え方の変化により、近年は社員旅行などはあまり見られなくなりました。

しかし社員の仲が良く、職場のレクレーションや家族見学会などがある会社もあります。

勤務場所

関東圏では、製造業の性質上海に近い臨海部に勤務場所があることが最も多く、神奈川県の川崎・横浜・千葉県の沿岸部などに勤務地が集中しています。

また研究開発は地価が高い所で仕事するメリットはあまりないため、内陸部にも点在します。

日本全国で見ると、それぞれの会社の製造拠点に隣接した研究所が設けられているケースも多いです。

研究開発でも設計・解析などIT技術の比重が多くなると、拠点が都内の一等地にあることもあります。

求められる人物像

研究開発案件は一人で社会実装できるようなものはほとんどなく、また時間も長くかかります。

したがって多くの専門家と長きにわたり密にコミュニケーションを取る必要があります。

専門性が高いだけでなく、コミュニケーション力や忍耐力も求められます。

採用面接時にはその辺りも合否判断になるでしょう。

また研究課題ごとに専門性や補充人員スペックが異なります。

他分野の人間では判断しかねる部分があるため、直属の上司となる人間が面接に入ることが多いです。

その人物の考え方によって求められる部分(専門性か人間性かなど)が変わりますので、運やタイミングも重要です。

年齢・性別・経験などで判断されることはよくあります。

必要なスキルや資格、経験

必要な資格は特にありませんが、専門性が面接時に最も見られます。

技術職の人間、特に研究開発職の採用判断をするような立場となる人は努力して専門性を磨いてきたケースが多いため、専門性が低く勉強の足りない人物を好みません。

就学時や前職でしっかりと勉強している人物が採用に至りやすいと言えるでしょう。

英語に関する資格や海外経験などがあると印象は良いですが、必須ではありません。

これらは仕事をしていく上で外国人とのコミュニケーションや海外学会参加時に役に立つでしょう。

学術論文投稿や発表などを経験していると、実績として判断されます。

研究開発のおすすめ求人の特徴

研究開発職は各社様々な分野で募集しており、業種も多岐にわたります。

自身がやりたい研究や実現したい技術がある人は、その課題に取り組んでいる会社に行くのが一番良いです。

そこで技術を磨いてキャリアを積み、該当分野で社内・国内・学会で第一人者となるのが成功とみなされるでしょう。

しかしそのような人は一握りで、多くは技術の新陳代謝に飲み込まれ、専門外の職種に転職・配置転換されることもあります。

ここでは、研究開発職としてキャリアを全うする上でおすすめな求人について解説します。

市場の大きな技術分野の求人

バリバリ働きたいという人は、現在活発で今後も市場の拡大が見込める分野に就職して元気に働くのが良いでしょう。

非常に忙しいですが、募集も多く専門性が異なっていても採用されやすいというメリットがあります。

予算が潤沢にあるので残業も沢山できることが多く、努力のしがいがあります。

キャリアを積んで実力をつければ、仮に事業が頓挫・売却されるなど予定外の事態が発生しても、配置転換や転職の際にも評価されるでしょう。

2018年現在では電気電子・情報端末・蓄電池・自動車(自動運転)などがこれらの技術分野です。

じっくり腰を据えた研究開発の求人

会社のシェアNo.1商品など、継続的に開発することが想定される製品分野に就職するケースもおすすめです。

一つの会社に長く勤務して専門性を高め、キャリアを形成したいという人に向いています。

電力やガスなどのエネルギー・金属・石油・素材などの資源のほか、社会インフラ・農業・食品などの内需系などが研究開発期間が長く安定的なワークスタイルを形成できるでしょう。

考えようによっては新陳代謝が低く、新しい技術をどんどん学びたいという性格の人は飽きてしまうかもしれません。

多くの研究職を経験する生き方

日本ではまだ少数ですが、同業・異業種・国内海外問わず数年ごとに転職するフットワークの軽い技術者も一定数います。

興味がある技術内容や必要とされる場所を求めて、すぐに移籍することができるタイプです。

自身の仕事のスタイルが概ね確立していて移籍・移動に抵抗のない人物の場合、このような働き方を選択することも可能となります。

転職先になかった技術を導入したり、新しい技術を学んだりしながら会社の中でのキャリアアップでなく技術者としての客観的な実力向上を目指します。

また技術系の労働市場では動きの悪い人より活動的な人の方が評価される傾向があるので、そのような人物の採用に積極的な会社・分野もあります。

自分に合った研究開発の求人の選び方とキャリア形成

自身のワークスタイルやライフスタイルによって、応募する求人についてよく知っておくと、就職後のミスマッチなく社会生活を送ることができます。

またその後のキャリア形成についても紹介します。

【選び方①】給与や雇用条件から考える

バリバリ働いて沢山稼ぎたい、仕事を身につけたいという人は、雇用条件の残業時間を確認しましょう。

昼夜土日を問わず働けるところが魅力的です。

ただし研究開発分野には該当分野があまりなく、半導体メモリや情報端末・ディスプレイなど、大規模の投資でシェアを取る分野に限られます。

また外資系の方が更にこの傾向が強いです。

長期的に続けるには体力的にキツいですが、若い内にお金を稼ぎ働き方を身につけるには良い分野です。

身につけた技術や仕事力を持って転職し、様々な所で活躍するキャリアが理想的です。

外資系を渡り歩きある程度の年齢になったら事業会社に腰を据えるなどのキャリアや、コンサルやベンチャー・テック系投資会社などを視野に入れても良いかもしれません。

【選び方②】事業・分野から考える

今後の市場拡大が期待される分野や事業に継続性がある分野に参入するのは、長期にわたって技術を身につけ、キャリアを形成できる良い選択肢です。

社内で研究開発成果を挙げ、事業化支援や既存事業の現場で生産技術や商品設計を学び、社内でキャリアアップしていくイメージです。

研究所で技術を極めるか、マネージャー・管理職としてキャリアアップしていくことを視野に入れるかなど、ゆっくり考える時間があります。

【選び方③】エリアから考える

職場をエリアで選ぶ人もかなり増えてきています。

どうしても首都圏が良いという人もいますし、家族形式やライフスタイルの考え方が多様化しています。

特に男性は、配偶者が就労していたり子供がいたりする場合、地方のポジションには応募しづらくなることもあります。

祖父母など家族全員で子育てをする場合など、自身や配偶者の実家に近いというのもメリットになります。

じっくりと腰を据えて研究開発ができる分野を選択し、研究者としてのキャリアを選択するのが良いでしょう。

マネージャーなど管理職は、辞令で地方に行くケースが多々あります。

【選び方④】ベンチャー企業に参入する

近年はベンチャー企業に就職するという選択肢を選ぶ人も増加傾向にあります。

IT系ベンチャーが多いですが、技術系の特化型ベンチャーも増えてきています。

大企業の研究職とは違ったスピード感があり、また多様な経験ができることから、若手にとって魅力的な選択肢です。

一度は大企業に就職したものの、巨大ゆえの閉塞感から中途でベンチャーに転職する若手が散見されます。

社会的にも挑戦が評価される時代になってきましたし、実力をつけ、ゆくゆくは自身も創業したいという熱意を持った方にはもってこいでしょう。

研究開発にはどんなやりがいがある?

自分の名前が社会に出る

会社でもアカデミックでも、技術の発明に貢献した人は特許や論文を書き、学会など技術のコミュニティにその価値を問うことになります。

いつ誰がその技術を発明・開発したかは人類の技術史に永遠に残るため、これは非常に大きなモチベーションになります。

自分が職業人生の中で「研究者・科学者として人類に何をもたらせたか」に価値を見出す人は、研究者に向いているかもしれません。

成果を上げれば特許収入や表彰され、キャリアが開ける

研究開発を行う中で特許を書きますが、これが将来商品になり利益を上げると、ある一定の割合で売り上げからライセンス料が支払われます(会社によっては一時金の場合あり)。

巨額の収入になることもあり、大きなやりがいです。

研究開発成果を商品化しようという熱意のもとになります。

また人類の技術史に残るような発明・貢献をした研究者は、様々な表彰を受けることもあります。

ノーベル賞がとても有名ですが、そのほかにも数千万円・数百万円クラスの賞金なども数多くあり、モチベーションの源泉です。

研究者としての評価や実績が高まるとアカデミックポスト(大学教授など)などへの道も開けますし、他社からヘッドハンティングされることももあります。

おわりに

以上、製造業系の研究開発職の仕事内容やキャリア・おすすめ求人などについて紹介致しました。

これから研究者になる方を想定して将来に希望の持てるような内容で書きましたが、現場には停滞して日々同じようなことしている人や、誰が見ても実現できそうもないことを長年やっている人、非現実的な研究計画だと分かっていても仕事だからやっている人など、あまり上手くいっていない方々も沢山いて、必ずしも明るい未来が待っているわけではありません。

しかし技術は嘘をつきません。

しっかりとした技術力を身につけ、謙虚に学び、社会からの要望に耳を傾けることで自身の研究者人生を切り開いていけると思います。