幼稚園教諭の仕事内容にはどのようなものがあるのでしょうか。
保育士と同じように考えられがちですが、実は保育士と幼稚園教諭では仕事内容が大きく違います。
おおまかに言えば、保育園は生活の補助の場、幼稚園は教育の場といったところでしょうか。
ではここで実際にどのような業務があるのか、幼稚園教諭の役割や良いところ、働いていて楽しいと思えるところについてを詳しくお話ししていきたいと思います。
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幼稚園教諭の役割
幼稚園教諭は子どもに教育を行うことが一番の役割
幼稚園教諭は教諭という名前がつくように、文部科学省が管轄している教諭です。
保育士が保護者に代わって生活全般の世話をするのに対し、幼稚園教諭は社会性やコミュニケーションといった能力を5領域にのっとって教育することが求められています。
子どもの個性を尊重しつつ、社会のルールや生きていく上で必要なことを指導します。
園の教育方針によっては、数字や文字といった勉強を教える場合もあります。
幼稚園教諭の仕事内容
幼稚園教諭の仕事内容1:朝(登園前~登園時):清掃、朝礼、園児のお迎え、バス添乗
子どもたちが登園する前に保育室の整備や園内の清掃、朝礼を行います。
朝礼ではその日1日の保育のカリキュラムの予定を伝えたり、夕方行われる予定の会議や行事のリハーサルがあればその内容について再度確認します。
保護者からの欠席の連絡もほぼ入っている時間のため、その日の登園人数を報告しています。
当番の場合はそのままバスに乗り込み、バス添乗の業務を行います。
朝礼が終わると保育の準備に入り、子どもたちが安心して幼稚園で生活を送れるよう笑顔で迎え入れます。
幼稚園教諭の仕事内容2:登園後~昼:その日のカリキュラムを行う
1日の活動内容は、製作、戸外遊び、行事に向けての練習、全園児が集まっての集会など日によって様々であり、1年間で全く同じ内容の日はありません。
幼稚園によっては朝全園児で集まって体操を行ったり、宗教法人の園であれば瞑想や礼拝などを行ったりする時間が設けられています。
幼稚園教諭の仕事内容3:昼~降園時:昼食、連絡帳の記入、帰りの支度、園児の見送り、バス添乗
お昼には、子どもたちと一緒に給食やお弁当を食べます。
給食も大切な業務の一つ。
子どもたちが姿勢よく食べているか、箸の持ち方はあっているか、必要に応じて指導を行います。
最近では食育に力を入れる園も多く、野菜の栄養の話をするなど、子どもたちが「食べてみたい!」と思えるような言葉かけをすることも求められます。
体調が悪かったり調子が良くない時には給食の進み具合が遅くなることもあるため、体調の変化にも気を配ります。
また、連絡帳に記入したり帰りの身支度の確認をしたりと一番忙しい時間でもあり、慌ただしく過ぎていきます。
給食が終わった後は簡単な清掃の後、帰りの会を行います。
その後バス降園の子どもを見送り、当番の場合はバスに添乗します。
徒歩降園の子どもは責任を持って保護者に受け渡し、今日の様子などを伝えます。
幼稚園教諭の仕事内容4:降園後:清掃、会議、翌日の準備
園内や保育室内の清掃を行い、簡単な休憩をとったあと、会議や話し合いなどが行われます。
会議は全体の職員会議の他にも、学年会議、行事会議、給食会議など多岐にわたっていて、1週間の半分が会議で埋まっているなんていう週もありました。
会議がない日は翌日のカリキュラムの準備をしたり、壁面制作を作ったりとやることは山ほどあります。
幼稚園教諭の仕事内容5:預かり保育
降園時間を過ぎてからも、預かり保育のために園内に残る子どももいます。
預かり保育専門の職員がいれば別ですが、いない場合は職員が持ち回りで預かり保育を担当します。
クラスでの活動と違って異年齢での保育となるため、学年によって行う内容を少しずつ変えたり、座る位置を変えたりと様々な工夫が必要です。
多くの配慮を必要とするため、クラスのカリキュラムを組むよりも大変なことが多いです。
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延長保育の3個の業務
延長保育の業務1:異年齢の子どもたちをまとめる
担任の業務とは違い、3歳〜6歳までの子どもたちを一度に保育します。
同じ製作をするにしても、3歳児はまだはさみが使えずにいる子もいますし、6歳児では複雑な造形物を作れる子もいます。
そういった学年による発達の違いを考慮しながら計画を立てなければならないため、延長保育の担当になると様々な工夫を凝らした活動を考える必要があります。
戸外で遊ぶ場合も3歳児と5歳児ではルールの理解に差がありますし、運動神経の発達具合も違います。
ルールをしっかり決めて、幼稚園教諭が主導しながら活動を進めていく必要が出てきます。
延長保育の業務2:補食の提供をする
大体15時頃に補食の提供があります。
補食は市販のおせんべいなどが多いですが、中には給食室で手づくりしている園もあるかもしれません。
子どもたちに配膳することも仕事のうちです。
5歳児にお手伝いをお願いしたり、テーブルの配置を異年齢で組んだりと、補食中も楽しめる環境を作れるようにしています。
延長保育の業務3:保護者に申し送りをする
延長保育を実施している施設のほとんどは、延長保育利用の人は幼稚園に直接お迎えに来てもらうことが多いです。
バス便を保護者の予定に合わせて組むのは難しく、普段バスを利用している保護者も預かり保育の後は直接園にお迎えに行く必要があります。
そのため、延長保育担当の職員が、担任から事前に一人一人の日中の活動の様子を聞いておき、必要があれば保護者に申し送りをします。
怪我をしていたり、体調が悪そうだったりした場合は必ず保護者に伝えて、重大なことであれば担任を呼んで一緒に保護者に説明をすることもあります。
バス添乗の6個の業務
バス添乗の業務1:添乗するルートを確認する
バス便が複数ある幼稚園の場合には、添乗するバスルートをその都度確認します。
私が働いていた幼稚園は割と規模が大きく、マンモス幼稚園だったため、バスルートも12あり、4台のバスを時間を分けて3回ローテーションして回していました。
バス添乗専門の職員もいたのですが、主婦のパートさんが多かったためお休みのときは代わりに入ったり、子どもの様子によって担任が同乗することになったりと日によって添乗するバスルートが違っていました。
そのため、今日はどのバスルートを受け持つか必ず事前に確認していました。
バス添乗の業務2:子どもを受け入れ、簡単な視診をする
バスに乗ったら、そのルートで乗車する子どもを確認しながら、子どもを受け入れます。
保護者の方が、普段先生と会うことができる機会がバスの添乗の先生だけということもあるため、挨拶や笑顔は絶やさないようにしていました。
朝の段階で保護者の方に昨日と様子は変わらないか、休みの間に何かトラブルはなかったか確認していますが、一緒に目で怪我や体調の変化はないか確認しています。
幼稚園で怪我をしたのか、登園前から怪我をしていたのかで対応も変わってくるため、大切な仕事です。
バス添乗の業務3:遅れている保護者には電話で連絡を
ほとんどの保護者の方が時間通りにバスに乗り込めるよう協力してくれていましたが、中にはなかなか外に出てこない保護者の方もいらっしゃいました。
特に雨の日は外でバスを待つことが嫌なのか、時間になってもいないことがありました。
バスにも時間があるため、来ない保護者にはまず幼稚園に連絡して電話で連絡してもらうようにしていました。
バスの添乗員が電話するということは、個人情報を持ち歩くことになるため、私が勤めていた幼稚園では行っていませんでした。
バスのルートの都合上もう一度寄れる場合は、○○時にお願いしますと幼稚園から連絡が来ましたし、そういったことができない場合は保護者の方に直接幼稚園に送ってもらうようにお願いしていました。
バス添乗の業務4:担任の職員に朝の様子を伝えるまでが仕事
朝のバス添乗は担任に朝の様子を引き継ぐまでが仕事です。
朝保護者に言われたことを引き継がず、そのままにしておくと、保護者と幼稚園との信頼関係に関わってくるため、必ずメモして報告するようにしていました。
バス添乗の業務5:帰りのバス添乗はまず子どもの点呼から
バス添乗は朝だけではなく帰りも行います。
帰りも受け持ちのバスルートを確認した後、ホールで待っている子どもたちを迎えに行き点呼します。
点呼も幼稚園内で1回、バスに乗車してから1回、出発する直前にもう1回と、3回は確認していました。
乗り込んだ後「トイレに行きたい」と戻ってしまう子がいたり、バスの時間と気づかず外で遊んでいたりする子もおり、発車間際はいつも慌ただしかったです。
また、子どもが乗っていないとなると一大事になるため、出発前にも必ず最後の確認をしていました。
冬場の感染症が流行する時期は子どもの人数が少なく、近くを通る2つのルートを一緒にしてしまう時もありました。
そのようなときにはいつも以上に慎重に子どもがいるかチェックをしていました。
バス添乗の業務6:担任から引き継ぐことがあれば保護者に伝える
幼稚園での生活中に怪我をしてしまったり、様子がおかしかったことがあったりした場合は、保護者の方に伝えるよう担任からお願いされていたため、保護者の方にその旨を伝えていました。
又聞きにはなってしまうものの、保護者からしてみればバスの添乗員も職員の一人であるため、保護者に分かりやすく、どうしてそうなってしまったのかの経緯までしっかりと伝えられるようにしておきます。
幼稚園教諭の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと
幼稚園教諭の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと1:子どもの名前と顔を一致させることが一番最初の仕事
担任を持ったときに、子どもの名前と顔を覚えることがまず最初の仕事です。
子どもの名前も、漢字まで覚えていなければいざという時にかけない場合があるため、セットで覚えていました。
できれば自分の受け持つ学年の子は、一緒に活動する機会も多いので覚えられると良いですね。
幼稚園教諭の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと2:指導案や月案といった書類の書き方
指導案や月案、日誌など1日の中で記入しなければならない書類は沢山あります。
書類の書き方は幼稚園によって変わってくるため、まずは書類の書き方を覚えます。
指導案などは幼稚園によって差が大きく、簡単に箇条書きですむ幼稚園もあれば、個々の名前も出して、一人一人どういう行動が予測されるか、予測した行動に対してどんな対応をするかまで細かく書かなければならない幼稚園もあります。
先輩に見本として1部ずつコピーをとらせてもらうと書きやすいかと思います。
幼稚園教諭の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと3:日直や係といった幼稚園の職員内にある担当
幼稚園では、日直や広報係、資材係といった係が決められている場合もあります。
私の働いていた幼稚園でも教材係や清掃係といった担当が決められていて、教材係は月に1度教材室の教材をチェックして発注をかける業務を行ったり、清掃係は清掃分担を決めて行ったりしていました。
自分がどんな役割を幼稚園の中で担っているのか、必ず確認しておくと良いですね。
幼稚園教諭の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと4:カリキュラムを立てて、実際に子どもたちを教育する
カリキュラムは幼稚園によって考え方が違うので、それに沿って計画を立てる必要があります。
座学での勉強を中心に考えている幼稚園で、自分がやりたいからと毎日散歩に出かけて自然に触れていたら、教育方針に沿っていないため保護者から疑問の声があがるでしょう。
まず働いている幼稚園の教育方針を覚え、そこから毎月の歌や活動内容、製作する物などを決めていきます。
同学年のクラス毎に大きな差がついても困るため、はさみを取り入れた製作をいつごろから行うのか、運動会の種目はどのようなものにするのかといった事は必ず学年で話し合うようにしていました。
幼稚園指導要領も幼稚園教諭になるにあたって必要となるものですので、全てとは言いませんが、大まかな部分を覚えて多くと良いですね。
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保育士との仕事内容の違い
保育士は、幼稚園教諭と同じく子どもと関わる仕事ですが、この二つは似ているようで大きく異なっています。
管轄の違い
幼稚園教諭は文部科学省、保育士は厚生労働省が管轄しています。
幼稚園教諭は満3歳から就学前の子どもを『教育』する仕事です。
それに対して保育士は0歳から就学前の子どもを何らかの理由で保護者が養育できない場合預かり、『保護者に代わって保育する』のが仕事です。
幼稚園は『教育』保育園は『生活』する場所
幼稚園では教育を中心に行っているため、日々の活動は製作であったり、運動であったり、ひらがなの勉強であったりとカリキュラムが決められています。
一方で保育園は生活する場であるので、活動は戸外に散歩に出かけたり、製作をしたりと様々ですし、排泄の仕方から食事の仕方まで生活に必要なこと全てを教えています。
受け入れる子どもの年齢も満3歳からが多い幼稚園に対して、保育園は0歳から預かっているため乳児保育の部分で大きく違っています。
まとめ
幼稚園教諭は子どもが憧れる職業の中でも上位にランクインする職業です。
それは自分が幼稚園に通っているときに、担任の先生に魅力を感じ憧れる思いが強かったからという人が多いのかもしれません。
子どもにとって最初に出会う保護者以外の『先生』という存在ですので、子どもにとって憧れの存在になることができると嬉しいですよね。
幼稚園教諭の仕事内容は子どもと関わる以外にも一見沢山あるように見えますが、一つ一つの業務が結果として子どもの成長を促すことに繋がっています。
幼稚園教諭はやりがいのあるお仕事なので、ぜひ目指してみてくださいね。