舞台は総合芸術と呼ばれていて、様々なジャンルを扱う職種の人が大勢集まり一緒に仕事をしています。

大きな劇場になればスタッフだけで100人を超える場合もあり、出演者まで合わせると時には200人を超える作品も。

関係者が一同に集合し、大きな食堂での立食形式の千穐楽(舞台の場合は秋ではなく穐の字)の打ち上げパーティで、会場にいる人数の多さがそのことを物語っています。

ある有名男性歌手の打ち上げなどは、このパーティで抽選会が開かれますが、手際良くやっても抽選会だけで45分程かかります。

ほとんど全ての関係者の手元にそれなりの金額の物が行き渡り、皆喜んで会場を後にしていくのです。

今回は、そんな舞台の仕事はどのような人に向いているのかご紹介します。

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舞台の仕事はどんな仕事?

舞台の仕事においては、毎回お客様を目の前にして一つの作品をお目にかけるわけですが、その演目における与えられた役割をこなしていく作業がメインです。

しかし全てが生である為、トラブルや事故等も当然発生します。

そのような場合にどのように迅速な判断を下し、最善策を取ることができるかは重要な要素です。

例えば過去には、京都の鴨川の氾濫により、現地のスタッフさんやお客様が開演時間に劇場入りすることが不可能になったことがあります。

その日は幸い昼の部だけの1回公演だった為、制作と我々と主演者で相談して30分開演を遅らせて、遅れてくる人々を待っていました。

また東北大震災の時は、公演を中止してお客様を近くの安全な公園に避難誘導した劇場もあります。

様々なトラブルに臨機応変に対応しなくてはならないのです。

出演者やスタッフも人間なので、公演中に成長することもしばしば。

場合によっては、良い芝居を作る為に仕事のやり方を変えることもあります。

「今、一番良いもの」をお客様に提供することが大切な仕事なのです。

舞台の仕事の大まかな仕事内容

舞台の仕事は、大きく分けて三つあります。

出演者

当然、役者さんや俳優さん、女優さん、タレントさん、素人さんとお芝居の演技者にも格付けがあり、ここに記した順番の格付けになります。

ジャンルが変わると、歌手さん、ミュージシャン、演奏者(純邦楽の奏者や民族楽器の奏者等)、ダンサーさんや踊り手さん(これも日本舞踊や民族舞踊の踊り手等)、パフォーマー、語り手さん(講談や落語、講演等)など、お客様の前で何かを披露する人々です。

表方スタッフ

受付の人や案内の人、劇場内の飲食に携わる人や売店の売り子さん、チケット販売所の人や、劇場支配人やその部下の人、営業の人や宣伝の人等、年間を通して同じ劇場で働く人達です。

舞台上に来ることはなく、主に客席側で働くポジションです。

ここに清掃の人も入りますが、清掃の人の場合は楽屋等の清掃も担当します。

その他にも警備の人や管理の人、会社の社屋内に劇場がある場合は社長以下、各部署の社員さんも含まれることになります。

裏方スタッフ

舞台監督や狂言方(歌舞伎における舞台監督の役割)、大道具、小道具、音響、照明、衣装、床山(ヘアーメイク)、操作、特殊効果、付き人やマネージャー、制作(プロデューサー)、楽屋番、頭取、消え物さん、搬入搬出のバイトさん、運送の運転手さん等の現場スタッフと呼ばれる人たちです。

公演の大抵の日に働いている人と、作家、演出家、美術家、音楽家、振り付け師、殺陣師、照明プランナー、音響プランナー、稽古ピアノの奏者、ボイストレーナー、各アドバイザー(方言指導や所作指導、茶道指導等)など、初日が開いて落ち着いたら次の仕事に行く人がいます。

舞台の仕事3つ、それぞれの仕事上の役割とは?

それぞれが細分化されていて、各々の仕事が総合して一つの作品となります。

時には違うセクションの仕事を手伝う場合もありますが、基本的には自分のセクションの仕事を同じセクションの仲間同士で補い合う形です。

それぞれがそれなりの経験とスキルを必要としますが、1人でやる仕事はほとんどなく、先輩が後輩に教えながら育てるというシステムが現状でも残っているので、初心者が入ってきても成立するようになっています。

我々、舞台監督のセクションでは昔からの風習として、先輩は後輩を教えながらお酒も奢り、「先輩達にしてもらったことと同じことを後輩にしてあげるのが、先輩に対する恩返しだ」という流れがあります。

その流れが時代を繋げていくシステムであると教わり、育ててもらいました。

先輩と会話や仕事をする中で様々なことを教わり、次に自分の後輩に教えていくという、血が繋がっていないけれども、一族の子孫に残していくような繫がりで仕事をしています。

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舞台の仕事はどんな人に向いている?

舞台の仕事はとても人間的な関係で働くことが重要です。

一番大切なのがお客様で、そのお客様の心に何を残し、家路に着いてもらえるかを最優先に考えます。

以下のような人であれば、舞台の仕事が向いていると言えるでしょう。

お祭り好きな人

舞台の仕事は、毎日がお祭りと一緒でウキウキできるものです。

お客様にお見せする以上、やる方もそれだけのテンションが必要で、終わった後は寂しさが襲ってくる感じがあります。

主役の出演者が御神輿か山車だと考えれば、それをいかに格好良く、楽しく大事にしながら担ぐなり引っ張るなりできるかが一番大切な考え方になります。

刹那で楽しくもあり、楽しいからこそ寂しくなるようなことを日常として毎日のように繰り返すことが好きな人は、舞台の仕事にぴったりの人と言えるのです。

関わっている作品を好きな人はほとんどがこの感性を持っていて、逆にこの感性がない人は、働いていても辛く感じてしまうことが多いでしょう。

神輿を担ぐのは決して楽ではありませんが、それでも担ぎ手は喜んで担ぎに行きます。

辛いことでも楽しみにできる状態を作ることは、お客様の心に残せると信じられるからこそできる作業で、その為の苦労も苦労に感じ、それならばと奮起して余計に頑張れる人は、完全に舞台スタッフ向きと言えます。

人が好きな人

相手の為に苦労しても苦にならない人や役立って良かったと考えられる人も、舞台スタッフに向いています。

精神的に強くなければこのような考え方をすることはなかなか難しく、とても優しい心を持っていなければこの域に達することはできません。

また、自己中心的な考えしか持っていない場合も、この域には到達できないでしょう。

大勢いるスタッフ全てがこのように考えられる人であるというわけではありませんが、見る目がある人はきちんと見分けてくれます。

特にトップクラスはお客様の心を扱っている人達なので、この程度が見分けられなければお客様の心をこちらの都合でコントロールしていく等の高等作業は不可能なのです。

舞台スタッフは人の心を扱う仕事なので、人の心を大切にできる人が集まります。

つまり人の心を大切にするプロが揃う場所では、人を好きでない人は簡単に見抜かれてしまい、やりづらくなることは明らかなので、人好きでないならば舞台スタッフとして仕事をするのは難しいかもしれません。

エンターテイメントが好きな人

舞台の仕事では、有名な出演者と会話をしたり知り合いになったりするチャンスもあります。

そして、そのアイドルなりスターなりが素敵な人だとモチベーションが上がり、仕事以上に良くしてあげたいと考えることが往々にしてあります。

あの人がお客さん達に格好良く見えてお客さんも喜ぶと思えれば、少しくらい大変でも苦にならなくなるものです。

現場に入って一度この感覚を味わってしまったら、辞めたいとは思わなくなります。

そして経験を積む内に、次第にこのような楽しみも増えていくものです。

社交性のある人

一つの作品を公演するには、多くの人が集まって一緒に仕事をします。

総合芸術と言われるので仕事の種類も様々で、違うセクションの人と話をするとあらゆる知識が身につきます。

そのような環境は、社交性のある人であれば楽しんで身を置くことが可能です。

他のセクションの人と話したくなければあえて会話する必要もないのですが、社交的な人の集まりの為、話に花が咲くことはしょっちゅうです。

別のセクションの人とお酒を飲みに行ったり、釣り等の趣味を一緒に楽しんだりすることもあります。

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逆に舞台の仕事に向いていない人の特徴は?

舞台は人の力が集まってできています。

皆の努力の結晶とも言えますが、ベテランも新人の時代を経てきています。

人間である以上、失敗することもあることを皆が分かっていて、助け合いながら進めているのです。

このような輪の中に入れない人が、向いていない人の大半になります。

人嫌いな人

引きこもったりするような、人との接触が苦手な人は、向く向かない以前に舞台の仕事は近づいてこないでしょう。

協調性のない人も、助けてくれる人が少なくなる傾向にある為に辛く感じることとなります。

昔の巡業などでは、旅先での相部屋等はごく普通で、20年程前は日本旅館で6人部屋等通常のことでしたが、近頃は個室になり、その為先輩に様々なことを教えてもらえる機会も減ってしまいました。

以前よりプライベートは守られるようになっていますが、仲間同士の関係が希薄になりつつあり、個人の成長の度合いはスローペースになっています。

そのような状況で、人との接触が苦手な人はスキルを上げられる機会がないため、経験年数に比べて腕が劣る傾向になり、結果的に周囲の足を引っ張ってしまう存在になりかねないのです。

病弱な人

健康である程度の体力があれば仕事ができるセクションもありますが、病弱だったり極端に体力がなかったりする場合にはキツい仕事です。

また、埃だらけの状態なので、気管支等が弱い人も辞めていく率が高くなります。

やたらに細かい人

とても繊細で細かい人は、美術家や作家等の初日を開けたらいなくなる仕事なら良いでしょうが、時間との戦いでこなしていく現場向きとは言えません。

特に、自分の仕事に対してだけ細かいのなら良いのですが、人の仕事に細かすぎる注意を促すと周囲の人から疎まれることになります。

図太い神経を持っていて人から何を言われようが大丈夫な人もいますが、周りの迷惑としては変わりない為、いざと言う時に助けてくれる人が少なくなります。

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舞台の仕事をするために活かせる経験は?

経験は各セクションによって自分の仕事に役立つと思いますが、これだけ幅広い職種の人が集まっている場合、断定はできかねます。

しかし、結果的に人生の全てを扱って行く仕事の中の一部を担当している為、全ての経験を活かすことができるような思考が求められるでしょう。

全てを細かく書いていくと膨大な量になってしまいますので、例をいくつか挙げておきます。

楽器を演奏する

役者さんや舞台監督、演出家や音響さん、大道具さんや小道具さん、照明さん等で、楽器の心得がある人は仕事で重宝されることがあります。

音響さんは当然音楽を扱うわけで、ミュージシャンのマイク設置やPAを行う際に、どんな設置をすれば演奏しやすいかを把握できます。

また照明さんは音のフレーズ等、小節数で照明変化のきっかけになることが多いです。

ミュージカル等は8カウントで一つと考え、2X8(ツーエイト)や4X8(フォーエイト)等と言われる2小節単位で、どこから何エイトで明かりを変えるという表現が多く使われているため、自分が演奏できる方が感覚が掴みやすいです。

それから演出家や舞台監督も、生演奏がある作品の場合にどうすればスムーズになるかを知っている方が、演奏者とのやり取りが楽になります。

明るい中で音楽に合わせて大道具を転換する場合も、曲に合ったきれいな転換を行いやすくなります。

音の出ない楽器の小道具を用意する際にも、楽器の心得がある小道具さんはスムーズな作業が可能です。

美術品を沢山見る

舞台において全てではありませんが、美しいものを沢山見ておくことは大切な経験になります。

美術家はもちろん、演出家、舞台監督、大道具、小道具、衣装、床山等のセクションは目を肥やしておいた方が良いセクションです。

小道具等で、壁にかけたり床の間に飾ってある絵や掛け軸をチョイスしたりする時にセンスが問われます。

小道具の下駄等も、役によって貧乏な役だったりすると、本当に古びれた汚れた下駄を用意すると怒られてしまうことも。

そんな時は新品の下駄を用意して、刃をノコギリで短くして、絵の具で汚す(時代をつけると言います)作業をして出演者に渡します。

大道具なども、現場は馬立と呼ばれる収納場所からパネル(張り物)を舞台の決まった位置に持って行って立てるのですが、出してきて立てるだけだと、何度も使っていると色が落ちていたり傷が付いてしまっていたりする為、色を塗ったりノリで補修したりして初日に近い状態でお客様にお見せするようにします。

これは単にパネルを立てるということではなく、あえて「飾る」という言葉を使い、単に設置するのでなくプライドを持って飾りましたという心意気の現れなのです。

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舞台で働くメリットとは?

舞台の仕事には様々な苦労もありますが、得られるメリットもあります。

有名人や憧れの人に会える

前にも書きましたが、憧れの人や有名な人と会えることが第一の楽しみです。

世間の誰もが知っているかっこいい俳優さんやきれいな女優さんと話すことができたり、ご飯を食べに行ったりお酒を飲んだりできる可能性が高くなります。

飲んでいる最中に周囲の他のお客さん達からサインをねだられるのを見たりしますし、サインのお礼にお客さんから御馳走になることもありました。

お店の人に頼まれて色紙にサインをした結果、とびきり美味しいものをご相伴にあずかることも少なくありません。

楽しく働けて仲間も増やせる

一つの劇場にずっといる場合は毎月違う出演者が来て新鮮な気持ちになれますし、作品によって仕事も違うので、飽きることは少ないです。

劇場付きでない場合は、最初は大阪の劇場、次が名古屋の劇場、そして博多の劇場というように、巡業で全国各地に行き、様々な人々との出会いや再会があり、とても楽しむことができます。

ひと月近く大都市にいれば、行きつけの酒場もできて土地の人とも知り合いになれますし、話題には尽きない職業なので仲良くなることもしばしばです。

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舞台の仕事についた後のキャリアについて

大道具さんなら行き着く所は頭領ですし、照明さんや音響さんはプランナーになって自分のやりたいことを後輩に指示して作ることができます。

舞台監督は作家になる人や演出家になる人、美術家になる人、プロデューサーになる人等、本人の望む所を目指します。

他の仕事にも舞台の仕事の経験を活かせる?

活かし方は本人次第で、部所によって潰しがきく所と、専門職なので潰しがききづらい部所があります。

音響さん等はスタジオのPAなどならすぐにできますし、照明さん等も結婚式等などで活躍できます。

衣装さんは成人式の着付け等、貸衣装屋として街で働くことも可能です。

自分に合った舞台の求人の選び方や注意点

まずは、自分自身の性格ややりたいことを把握することです。

【選び方①】雇用形態から探す

社員なのかフリーなのかを考えます。

社員なら安定した月給体制で生活できますが、上手く廻せているフリーのギャラには及びません。

しかし、フリーは廻せなくなると収入はゼロになりますので、とても危険な状態です。

そのあたりのバランス感覚はとても大切です。

【選び方②】職種から探す

専門職はそれなりの勉強や知識がなければ、雇用されることはほとんどありません。

しかし専門職でも、アルバイトからであれば雇ってもらいやすい傾向にあります。

アルバイトの女子大生だった方が松竹の社員になるケースもあります。

【選び方③】会社の業態から考える

各社様々な業態を持っていますので、事前にきちんと情報収集する必要があります。

一旦就職すれば社員として責任と義務が付いて回りますので、きちんと把握しておくことがその先の人生にとって大切なのは、他の職業となんら変わりはありません。

【選び方④】給与や雇用条件から考える

もちろんギャラは高い方が良いに決まっていますが、とても高名な人で高齢な人や憧れの人との仕事等、人生の中で一度だけになるかもしれないわけですし、お金に換えられない相手がいる場合もあります。

相手によっては、この人に毎日会うことができるのなら自分からお金を払ってでも仕事したいと思える人もいなくはありませんので、給与や雇用条件などどうでも良くなる状態も存在します。

【選び方⑤】エリアから考える

自分の生活においてどうしてもここでなければならないという背景がある場合は考慮に入れなければなりませんが、基本的にどこでも働ける人が望ましい状態です。

親の介護などを抱えている場合、基本的には表方でなければこの仕事に就くのは難しいでしょう。

裏方であれば、劇場付きになる以外無理だということが、3ヶ月もしない内に身に染みることになります。

舞台の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと

各セクションでそれぞれやるべきことが違うため、セクションごとに覚えるべきことは異なります。

各セクション共通で覚えておかなければいけないのは公演日程で、これ以外はセクションごとに細かく分かれています。

余りに細かく覚えることも多すぎるのでここではあえて書きませんが、仕事がかっちりできる80歳を超える人が、「まだまだだ」と言っているくらい奥が深いのです。

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まとめ

舞台の仕事という大まかなタイトルとして、大雑把に説明させて頂きました。

総合芸術なので余りに職種も多く、普通に全て書くと分厚い本が一冊書けるくらいになってしまう為、今回は簡単にまとめました。

少しでも参考になれば幸いです。

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