世の中には様々なお仕事が存在します。

「えっ、こんなことも仕事なの」と思ってしまう仕事もありますし、そんな大変なことまでしていたんだ…とつくづく実感する場合もあります。

基本的にはどのような仕事もきちんとやろうとすればするほど大変になるのは当然で、そこに自分の存在意義や価値を見出すことでモチベーションを維持できるのです。

さて、今回は演劇やお芝居の舞台監督の仕事について説明します。

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舞台監督はどんな仕事?

シンプルに言えば、本番の舞台の進行を司る仕事です。

スムーズに本番を進行させるため、打ち合わせから稽古、本番に至るまでの取り仕切りを行います。

舞台監督の大まかな仕事内容

1.内容を大まかに掴む

台本や配役等の資料が届いたら、大まかに内容を掴みます。

2.方向性を話し合う

演出家や美術家が考えたプランに沿って打ち合わせをしたり、プランの検討や修正の方向について話し合います。

3.役者を決める

子役等のオーディションがある場合は、参加してどの子役が適しているかの検討を行います。

4.必要なセットや小道具を揃える

稽古場でスムーズな稽古が行えるように、絶対に必要なセットや代用の小道具等を揃えます。

5.稽古の段取りをする

稽古場での段取りを組んで、進行していきます。

6.舞台稽古前の確認をする

舞台仕込みで、本番用の大道具や小道具、音響の確認や照明の明かり作りを舞台稽古の前に行い、演出家の確認を取りつつ、本番でどのように指示を出すかの確認を行います。

7.修正を行う

舞台稽古の全てを仕切り、本番で失敗しそうな箇所の確認やリハーサル、修正を行います。

8.本番前のチェックをする

本番で滞りなく進行させるための全てのチェックや確認、指示を出していきます。

9.演出家の意向に沿っているか確認する

演出家の意向に沿った作品になっているか毎回確認しつつ、外れている場合は演技などの修正をします。

10.公演終了後の段取りを行う

公演終了後のバラシや借りた物を返却する段取りを組んで、各々返却をします。

仕事上の役割とは?

できる限り演出の意向に沿う形で、お客さんに作品を提供する全ての行為を責任を持って果たす役割です。

制作者の意向も考慮しつつ、経済的な部分も代案等を立てて満たしていきます。

舞台監督の仕事はどんな人に向いている?

あらゆることに興味を持ち、勤勉で独創性があり、我慢強く機転のきく人が向いています。

人に指示を出さなければならないので、人付き合いが良くリーダーシップを取れるだけの人望も大切です。

時には妥協も必要で、代案のアイディアが次々と出せるだけの頭の柔軟性も欠かせません。

そして、お客さんを含めた人間全般を好きになれる人が理想です。

創ることが好きな人

稽古場などで本番用の物が揃わない場合に類似した物を作ったり稽古において人間の心理を作ったりと全てが創造に関わってくるため、物作りが嫌いな人では仕事が進みません。

周りの人の力を引き出すのが得意な人

この作業ができる場合は、極めて能力の高い舞台監督として認められます。

全ての舞台監督に求められる能力ではなく、演出家やプロデューサーに求められるべき能力で、舞台監督がこの能力を行使する場合は演出家かプロデューサーの了解を得る必要があり、勝手に進めると演出家等に疎まれる要因に成りかねません。

演出家に引き出す能力がない場合、初日に近づくと切羽詰まって行使することもあり得ますが、演技者には感謝されるものの演出家には疎まれることが多いです。

先を見通す力が高い人

全ては本番を見に来るお客さんのためなので、打ち合わせから稽古中も本番でのお客さんを意識して物作りをします。

先が見通せない場合、作品が良くなることはほとんどあり得ません。

基本は演出家が考えるはずの仕事ですが、往々にして意見を求められたり、舞台監督の方から提案したりすることがあります。

経験の浅い演出家に多いのですが、見てからあそこは良かったとか、今日は悪かったなどといった建設的ではないダメ出しがあります。

どう見えたかではなく、こうやればお客さんにこういう風に見えて効果的だというような、本番でお客さんに見せることを前提とした稽古を進めさせることも、ベテランで能力のある舞台監督には大切な作業となります。

体力がある人

稽古から舞台稽古に至る時期は、体力勝負となります。

全ての総責任者なので、どのセクションの作業にも指示をしたり確認したりしなければなりません。

場合によっては徹夜が続くこともあり、肉体労働と頭脳労働の双方を同時にこなしているので、体力は相当使います。

ほかのセクションもできる人

全ての舞台監督に求められる能力ではありませんが、

  • 台本を書ける
  • 演出ができる
  • 演技指導ができる
  • 照明プランや現場の仕事をこなせる
  • 音響プランや現場での音出しができる
  • 大道具の転換ができる
  • 楽器が弾ける
  • 絵が描ける

など、人間にできる全てのことがそれなりにできる人はとても強い存在として認識されますし、武器にもなります。

人間が好きな人

何より、人という存在が好きでなければ演劇は成立しません。

様々な人生を通して作品に関わっていくことが仕事であり、虚構の世界の中なので、お客さんに伝えるためにはリアルに感情を出しても伝わりづらいです。

感情に反して大きく動いたりたっぷり間を取ることで演技者の感情をお客さんが理解する時間を作ったり、そこだけ音楽や雷等で粒立てたり、照明を変えて周りを暗くして目立つようにしたりと、演技者のリアルな感情を裏切る作業が必要になります。

演技する人達も我慢が必要なシチュエーションで指示を出して見せていく、舞台監督を含めたスタッフも経験がものを言う場面ですが、全ては見ているお客さんのために良くなる手段を取っているので、終わったときの拍手で良かったということを実感できるのです。

何より、この拍手が演劇人は大好物なのです。

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舞台監督の仕事で活かせる経験

人間の全てを扱う可能性のある仕事のため、経験したこと全てを仕事に活かせる可能性を秘めています。

広く浅い知識でも、今回必要となればその知識を調べ尽くして活用します。

つまり、知識の中のどれを使うかを選択できるようにするために知識を広げておくことが大切なのです。

楽器演奏

古典のものの場合、木頭を一通り打てると仕事が広がります。

お祭り等で拍子を取るときに叩く物で、相撲や「火の用心」の紐の付いた物とは少し違い、紐はありません。

また本来は大道具さんの仕事ですが、「ツケ」もできるに越したことはありません。

この二つは大変に稽古と知識を要しますが、あまり使われる機会がないのが玉に傷で、値段も結構します。

ほかはこれと言って何の楽器でなければいけないというものではありませんが、ピアノは強いです。

あとはバイオリンやギター、三味線、琴、笛関係と打楽器等です。

踊り全般

ミュージカルや音楽劇、レビューやショーなどダンスシーンがある作品は年々増加中で、ダンスの基礎を知っている方が当然有利です。

洋舞だけに限らず日本舞踊やフラメンコ等、知っているに越したことはありません。

特に日本舞踊は、着物を着た芝居では動きの所作に深く関わるため、知識がないと対応できなくなります。

また、日本舞踊をある程度極められ木頭が叩けると、日舞の発表会の狂言方という舞台監督と似ている役職でギャラの良い仕事もまわってくることがあります。

執筆

脚本や台本等の執筆経験がある場合、周りが認識しているとちょっとした直し等を手伝う場合があります。

作品により活かせるものが多種多様なため、その都度調べたり自分で事前に経験してみたりします。

自分でできることは、演技者の方にも可能だと証明できるからです。

反対に、自分で難しい場合は演技者の方も難しいと考えられるため、代案を用意しなければなりません。

舞台監督で働くメリットとは?

有名な人達と一緒に働くことができる

私自身のことを書くのならば、演出家としては石井ふく子先生や故榎本滋民先生、文学座の故戊亥市朗先生や故蜷川幸雄さん、妹尾河童さんなどとご一緒することができました。

俳優さんでは故松方弘樹さんや、故植木等さん、故長門裕之さんや故南田洋子さん、故淡島千景先生や故市川歌太衛門御大といった大物の方々と交流が持てましたし、思い出もひとしおです。

ほかにも沢山の著名な方々とご一緒させていただいています。

楽屋見舞い

多くのスターの方々とお話もできるのですが、楽屋にいらしたお客様の美味しいお土産等の相伴にも預かることができます。

それなりの物の差し入れがきますので、普段の生活では食べられないものを食べることもできます。

また、時々出演者の方が食事等を差し入れてくださるのですが、どれも美味しい物ばかりです。

御祝儀

それなりのトップの方は、初日か中日にいくらかを包んでくださいます。

若い方でも、大劇場だと何人かで少し包んで渡してくださいます。

臨時ボーナスといったところでしょうか、チップを月に一回まとめてくれるような考え方です。

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その後のキャリアについて

この仕事に就いた後のキャリアアップの道は?

目指す方向にもよりますが、先輩は美術家になりました。

作家や演出家になる方が圧倒的に多いですが、中にはプロデューサーになっている人もいます。

生涯、舞台監督という先輩も存在しています。

ほかの仕事にもこの経験を活かせる?

もちろん活かすことはできますが、専門職はそれなりの勉強が必要です。

サービス業は経験が活かしやすい職種と言えます。

ある程度の大道具のスキルが身についていれば展示等の仕事にも活かすことができますし、すでに仕事に必要となる道具は持っているはずなので、初期投資はほとんどなく転職可能です。

大工さんに関しても、若い内の転職ならスキルは活かせるでしょう。

自分に合った舞台監督求人の選び方や注意点

舞台監督は、基本的にオファーで動いています。

あとは知り合いの紹介等がほとんどで、時々インターネットで探して隙間の仕事を埋めたりもします。

【選び方①】雇用形態から探す

基本の雇用形態はグロスです。

その仕事のはじめから最後までいくらという値段で決めますので、楽な仕事の時はラッキーです。

残業等ない世界なので、どれだけ働いても決められた金額になります。

場合によってはステージ計算の場合もありますが、この場合は稽古のギャラは出ないので、稽古分を上乗せした金額で交渉します。

【選び方②】仕事内容から考える

大まかな内容としてはいかに本番をスムーズに進行させるかに尽きますので、作品によって細かい仕事内容が全て違い、稽古をやってみないと分からない場合がほとんどです。

【選び方③】給与や雇用条件から考える

雇用条件はどこの仕事でもほとんど変わりがありませんが、ギャラに関しては交渉します。

大体の相場があるので、その金額に乗っ取った交渉になります。

まとめ

大まかに舞台監督という仕事の説明をしました。

上記は基本の演劇やお芝居の大劇場の舞台監督の形であり、小劇場等は更に小道具を作ったり、劇場で大道具を建てたりと行うことが増え、ギャラも少なくなります。

また歌ものと称する歌手の方のコンサートなどはリハーサルがほとんどない場合が多く、芝居より制作費が安く抑えられるので、スタッフのギャラや待遇が良い場合がほとんどです。

ただしコンサート系は譜面を読めたり、楽器やPAに詳しくなければ雇用されません。

舞台監督と一口に言ってもその仕事内容は多岐にわたり、様々な場面で頭を使い、また同時に気を遣わなければ務まらない仕事です。

先にも述べた様に自身の経験全てが役に立つ仕事ですので、あらゆるものにアンテナを張り吸収できるよう、意識して過ごしてみましょう。

リクナビNEXTに会員登録をした後、自分の経歴やキャリアプランを匿名で登録してみましょう。そうすると、企業から好条件のスカウトを受けることがあるのでお得です。転職の成功確率も上がりやすくなります。




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