演劇やコンサートなどで進行を取り仕切っている「舞台監督」という職業を聞いたことがあるでしょうか?

大体のきちんとした公演のチラシには、舞台監督という文字が見られます。

しかし、どんなことをしているのかご存知の人は少ないようです。

私が舞台監督をしていると言うと、「凄い人ですね」という言葉が返ってきます。

実はそんなに凄くないのです。

映画か野球の監督のイメージで言われるのでしょうが、実はテレビのADさんに少しの権力を持たせてもらった程度で、その分責任を重くされているという可哀想な立場なのです。

しかし、ステージの隅でする仕事は大変楽しく、一度やったら辞められません。

今回は、舞台監督に向いている人の6個の特徴や必要なスキルについて、経験者が解説します。

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舞台監督の仕事内容と給料

稽古から仕込み、本番、バラシの全てを取り仕切り、責任を持って進行させるのが舞台監督の仕事です。

状況に応じて指示を出して行き、いかにスムーズに全てを動かすかがその人の能力に直結しています。

私の場合は会社に所属していないので、フリーランスです。

社員さんだと月々、会社での契約に基づいた給料が支払われます。

演劇の場合、私の知っている会社では10年選手で月30万円くらいだそうです。

コンサート系で大物歌手を扱っている人達は、BMWを乗り回せるくらい貰っています。

基本、芝居畑なのでそんなに高くは頂けません。

毎月コンスタントに仕事があるわけではないのですが、例えば1,400人の劇場の1ヶ月公演で、ひと月の稽古に付き合ってグロスで60万円〜80万円といったところです。

ただしこれは私の相場で、もっと高い人も安い人も存在しますし、公演規模が700くらいになると月45万円〜60万円といったところに落ち着きます。

小劇場になるともっと安くなってしまいます。

舞台監督が向いている人の6個の特徴とは?

好奇心旺盛な人

何にでも興味を示すことは、芝居の舞台監督において大切なことです。

様々な人生を描いていく為に、知っていることはいくらあっても邪魔にはならず、応用を利かせることもできるからです。

したがって、どんなことにも首を突っ込んでみたくなるような人は芝居の舞台監督に向いている人であると言えます。

コンサート等の場合は特に、音楽や照明に特化して深く勉強をする必要がありますし強い武器にもなりますが、芝居においては浅く広くの知識が物を言うのです。

もちろん、自分が面白いと思ったものや仕事に役立つと思ったものは深く掘り下げておくことも将来の為になります。

そういう私も音楽は大好きで、ライブハウス等にも楽しみに行きます。

そこで新たな交流が生まれ仕事の役に立ったことが何度もありますし、素敵な仲間も増えていきました。

人生を題材にして仕事にしている以上、自分の人生を楽しむことで、お客さんにとって何が楽しいのかを知ることに通じるのです。

理解力の高い人

1を見て10を知ることのできる人は、とても強い力を持つことができます。

何度も説明しなければ理解できないようでは、瞬間瞬間に変化していく生ものの舞台に対応できないのです。

瞬間判断が必要な舞台監督という仕事において、理解力は高い方が良いのです。

理解していなければ判断は下せません。

1だけで想像して理解することで、後の9が見えてきます。

マネージメント力が高い人

私は得意ではありませんので羨ましいと感じるのですが、仲間の中にはこのマネージメント力が高く自分を高く売り込むことができる人が存在します。

気が付けば私の想像より、3万円〜5万円多くギャラを持っていけるのです。

同じ一つの仕事をして少しでも儲けられることは、決して悪いことではありません。

不景気な昨今、少しでも安い方を選ぶのは当然の時代で、仕事能力が同等なら安く引き受ける方に軍配が上がります。

相手に分かりやすく説明できる人

説明において、人に伝わらなければ意味を持ちません。

基本的に単純明快な説明が大切です。

難しい言葉を使って知性を出したりすることは時間の無駄であり、舞台監督には不必要なのです。

シンプルイズベストで、徹底してシンプルにすることが失敗しないコツです。

何かに例えるにしても楽しく分かりやすくが互いの勘違いが少なくて済み、成功する可能性を上げる鍵です。

人望の厚い人

人望と信用と財布の中身は、厚いに越したことはありません。

各スタッフや俳優に指示を出す立場としては、遊んでばかりではいけないのです。

人望は大切で、様々なセクションの人とお酒を飲んで交流しつつ、仲間を増やしていきます。

音楽や照明等、指示を出す時にきちんと聞いていて、1秒〜2秒ならやりやすく観客も気持ち良くなるところを探って指示を出します。

中には転換ができたらすぐに指示する人もいますが、私の場合は良いところを狙うのです。

長く付き合っているスタッフはそのことを理解しているので、非常にやりやすいしカッコいいと言われます。

そんなところにまで気を遣うことによって、信頼はついてきます。

臨機応変で変幻自在な人

生ものの舞台において、アクシデントは付き物。

誰かが怪我をしたとか、全然違うセリフを言っているとか、衣装が切れたとかのアクシデントはざらにあります。

地震が起こったり、煙がもうもうと立ち上がったり、セットが壊れたりと、想像しないことも沢山起こります。

そんな時に、臨機応変な対応が求められるのです。

衣装が切れたら早く幕を下ろし、セットが壊れれば次に出る人達に迅速に伝えて芝居位置を変えさせ、中身に影響が出ないように差配します。

時には、黒子で出て行って繋げられるようにすることもあります。

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舞台監督が向いていない人の3個の特徴とは?

人より物に対するこだわりが強い人

物も大切なのですが、我々の仕事は人がいてなんぼの世界です。

それも、普通ではいない人達との付き合いになります。

関わっている人々はどのセクションにおいてもちょっと一癖ある人の集まりで、ヘタをしたら舞台監督が一番普通に振る舞っているようにさえ見えてしまいます。

最近はサラリーマンのようなスタッフも徐々に増えてきて個性がなくなりつつありますが、私の若い頃は黒い服を着た変な人の集団でした。

そして、サラリーマンみたいに見えても普通ではないのです。

やはりやんちゃなところはなくなりません。

そんなやんちゃな心がステージを支えているのです。

周りを見ると、純粋な心を持った仲間が多いです。

口の悪さは否定できませんが、そんな仲間達が助け合いながら働いています。

体が弱い人

とにかく仕込みから舞台稽古、初日までは体力勝負のところがあります。

大抵、仕込みと同時進行で総ざらいという通し稽古を行いながら、照明を作って行きます。

最近はあまり徹夜させない傾向にあり終電までには終わらせるようになりましたが、何年か前だと徹夜という表現が生温い感じでした。

朝9時まで照明を寝ないで作って11時には舞台稽古を始めるという、実質30分程の休憩で翌日の業務に取りかかり、続きが終わったのが深夜2時だったなんてこともざらにありました。

私は、過去に最長64時間寝ずに働いた覚えがあります。

体力は絶対条件です。

コミュニケーションが苦手な人

人との会話が成立しなければ、指示を出すことはできません。

まず指示の出し方からどうするか確認しなければならないのです。

インカムで声で指示するのか、電気のランプのつけ消しで指示を出すのか、他の方法なのかを初めに確認します。

その上で進めていくのですが、アクシデントがあればどう変更するのかを即座に伝えなければなりません。

過去の話になりますが、花道に引っ込んだ主役がロビーを通過している間に幕を下ろし、セットチェンジをしている時に、主役の付き人が僕のもとへ走ってきました。

「座長、下痢でトイレ」と伝えられ、着替えてすぐに違うセットの真ん中にいなければならないので、セットができても、暗い中音楽を流して本人を待ち続けます。

伝令を聞いてすぐに音響さんと照明さんに連絡を取っていて、音楽は何度でもリピート、明かりものんびり待っててと伝え腹をくくって待ちました。

すぐに対応したのでごまかせましたが、照明はともかく音響はまだテープの時代だったので、もう少し伝達が遅れたら、暗い中音のないシーンとした間抜けな状態になるところだったのです。

舞台監督のスキルを活かせる職種・仕事にはどんなものがある?

舞台監督を経験したことで、どんな職種に役立つか考えてみます。

クリエーター

様々なセットの絵や映像等を見てきた経験から、クリエーターになれる人も中には存在します。

僕自身はその方向は無理ですが、絵を描くことが上手かったり、映像のセンスがあったりする人がいますし、そういう人達との付き合いがある人が存在しています。

脚本家

様々な作品や人生を人一倍見てきた舞台監督の中には、文章のセンスを持っている人が存在しています。

脚本を書いている人も実際にいますし、脚本家や演出家になる為の途中経過という位置取りとして舞台監督になる人もいて、現在でも元舞台監督の脚本家や演出家は多く存在します。

しかし、映像の脚本家になる人はほとんどおらず、やはり舞台の脚本を書いている人が大半です。

プロデューサー

実際に舞台監督からプロデューサーをやっている人がいます。

初めは舞台監督の契約社員でしたが、社員として制作部に配属されて働いています。

これから舞台監督の仕事をはじめるには?

舞台監督になりたいのであれば、ネット等で舞台監督の事務所を探し求人を調べてみるのが手っ取り早い方法です。

後はコネが強い世界なので、ある程度力のある劇団の演出部に入り、スキルを積んでおくことも可能性を広げます。

僕の場合は劇団「前進座」という所の演出部に一年半所属して、大道具さん達と知り合い、退団してから大道具さんの口利きで仕事を貰い門戸を広げてきました。

紹介されたプロデュース会社がそこそこ大きい公演をやっていたので、ラッキーだったのです。

TOKIOの城島君主演作の舞台版「蛍の墓」も手がけさせて頂きました。

知り合いが増えていき、人が足りない舞台の舞台監督として紹介され、どんどん仕事を増やしていけたのです。

新橋演舞場などで昔のプロデューサーがよく言った言葉が、「一流だから一流にいるわけではない。一流どころにいられるから一流なんだ」と。

つまり芝居が上手いとかスキルがあるとかではなく、一流と言われる所にい続けられることが大切なのです。

AKBは決して上手くありませんが、お金は稼いでくれます。

氷川きよしさんの芝居は決して上手くありませんが、観客は満員で熱狂的です。

舞台監督の仕事で就職するために

舞台監督という仕事で就職するなら、舞台監督会社に入社するのが本来の道です。

コンサート系のその手の会社は結構ありますし、芝居だと劇団に所属するのが一般的です。

また、芝居の舞台監督会社も何社かありますので、求人を調べてみることをおすすめします。

中には、大道具の会社から舞台監督会社へ、舞台監督として出向している人達も存在します。

僕が「放浪記」の演出家の北村文典氏から氷川きよしの「銭形平次」シリーズの演出補を頼まれた時の舞台監督は、舞台監督会社に勤める僕の劇団の先輩にあたる人と、大道具会社から派遣された女性の舞台監督でした。

大道具さんで舞台監督もやるパターンも存在していて、僕の若かりし頃、一緒に舞台監督をやっていた一個下の後輩は、今では演舞場に出入りしている大道具会社の社長職に就いています。

舞台監督になるためには資格は必要?

資格は何も要りません。

誰でも良いけど誰でも良いわけではない仕事です。

特にこの資格が必要というようなことは一つもないのです。

舞台監督になるために必要なスキルや経験は?

スキルとしては、木頭が打てると使い勝手が良くなりますし、できる仕事が増えます。

経験に関しては、この仕事においては多ければ多い程良いです。

舞台監督のやりがいはコレ!

満場の拍手喝采は一日の仕事の疲れを忘れさせてくれますし、明日もやるぞという気にさせてくれます。

その拍手の中でキューを出して緞帳を下ろすのは舞台監督ならではの特権で、とても気持ちの良いものです。

そして、カーテンコールの幕の上げ下げ。

観客の拍手の中を思いっきり気持ちの良いところで狙って動かさせます。

お客さんの拍手が僕たちのガソリンです。

舞台監督の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと

関わるセクションの仕事内容

全セクションの基本的な仕事を網羅していなければ、指示は出せません。

楽屋の仕事の衣装さんや床山さんの仕事は、早ごしらえ(早着替え)以外はあらかたの認識でほとんど問題はないのですが、舞台上の大道具、小道具、照明、音響、操作盤、揚げ幕等のセクションに関しては、分かっているだけでなく、場合によっては自分でできるくらいが望ましいです。

京都南座で「香華」という池畑慎之介さん主演の舞台で、鴨川の氾濫で南座のスタッフの3分の1が劇場に来ることが不可能になり、キャストはホテルに泊まっていたので30分遅らせての公演でしたが、とにかくスタッフが足りないということがありました。

何でもやらなければお客さんが待ちくたびれてしまいますので、とにかく何でもやりました。

クリエイターの意図を理解すること

各プランナーの考えることの大元は演出家のイメージなので、演出意図とイメージを初めにつかんでおき、逆にプランナーに提案するくらいにならなければいけません。

クリエイターはそれほど稽古に付き合わないので、舞台監督の方が理解度が高いのです。

照明プランナーなどは、2回ほど稽古を見ただけでプランを考えます。

そこまでに作り上げる過程を知っているので逆に訊かれることが多く、よく教えてあげます。

まとめ

絶対に必要とされるスキルなど一つも存在しない舞台監督という仕事ですが、逆を言うならば全てができるということが強みになる仕事です。

そして、仕事も人生も楽しむことが必要な仕事でもあります。

観客は楽しみに来ているので、ステージの人々が楽しまなければ観客を圧倒することはできません。

悲劇においても、苦しんだり泣いたりしていることで観客を感動させているという事実を楽しんでいます。

我々の仕事は芸術ではなく、エンターテイメントなのです。

舞台監督になるには、こちらの記事を参考に!

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