「通訳」の仕事というと、ハードルがとても高く未経験から気楽に始められるような職種ではない、というイメージを持っている人も多いと思います。

実際、通訳として求められるスキルは非常に高度なものです。

しかしどんなことにも始まりがあるように、全ての通訳者が「未経験」からスタートしているのもまた事実です。

今回は、この仕事に興味がある人を対象に、通訳業務に向いている人の特徴や、この仕事に生かすことのできる経験、通訳としてのキャリアパスや転職事情等、この仕事にまつわる事柄をかいつまんで紹介していきます。

通訳に興味のある方は一度目を通してみて、通訳の仕事を少し具体的にイメージしてみてください。

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通訳はどんな仕事をするの?

まずは、通訳がどのような業務に従事する仕事なのかを確認しておきましょう。

「通訳」は、母国語や使用言語の異なる人同士の間に入って会話をサポートします。

単に会話を訳すだけというより、言語の壁を取り払う役目を担います。

すなわち、広い定義として「コミュニケ-ションの橋渡し」をする仕事ということができるでしょう。

通訳の言語能力が、会話レベル以上であることはもちろん、それらの言語が使用されている国の文化的背景などに関する理解も大切です。

「言語」はそれぞれの文化を具現化した表現方法の一つにほかならないからです。

言語的コミュニケーションに留まらず、文化的背景や宗教観の違いなども含めた「ニュアンス」を話者双方に伝えることができるかが通訳の腕の見せどころと言えます。

実際、通訳は仕事現場では想像以上に頭をフル回転させています。

本来、人間の脳は複数の言語を同時に活用するような作業には慣れておらず、通訳は脳の処理能力の限界に挑戦しているとも言えます。

よく英語学習の現場で「英語脳を習得する」というようなフレーズが使われることがありますが、これはつまり普段日本語を使用しているときとは異なる「脳の使い方」を習得するという意味であり、通訳はまさにこのスキルを習得しなければならない仕事と言えるでしょう。

通訳の仕事はどんな人に向いている?

通訳の仕事はその特殊性から、向き不向きが影響しやすい職種であると言えます。

私自身通訳の仕事を経験して実感したことは、語学力や頭の回転の速さ等の能力以外にも、重要な特性があるという点です。

その「通訳に求められる特性」の中でも主要なものを以下に取り上げてみます。

これらの特性を持ち合わせている人は、通訳の仕事に向いていると判断することができるでしょう。

臨機応変な対応ができる人

実際の通訳の現場では「臨機応変」な対応が頻繁に求められます。

台本がある「翻訳」の仕事とは異なり、その場で会話の内容を伝える業務をこなさなければならない通訳の仕事においては、スピード感が非常に重要です。

通訳業務に時間をかけてしまうと、円滑なコミュニケーションができずに会話の当事者がストレスを抱えるだけでなく、最悪の場合は当事者間に言葉の壁による誤解が生じ取り返しのつかない事態に発展することもあります。

そのため通訳には正確な訳をすることに加え、その業務をスピーディにこなすことが求められるのですが、余程腕に自信がある人を除いて、会話の内容にその場で完璧な訳を提供することはとても困難なタスクです。

通訳の現場では、適当な言葉が出てこなくて四苦八苦するような場面も多々あります。

このようなケースで重要なのは、「臨機応変」に誤解のない程度にその場を乗り切ることのできる能力です。

日常会話のようなスピードで進む会話であれば、ニュアンスさえ間違わなければ、一言一句正しい訳をする必要はありません。

大切なのは完璧な訳ではなく、完璧な「ニュアンス」です。

臨機応変に対応することに慣れている人はこの点をしっかり理解していることが多いため、通訳の仕事に向いていると言えるのです。

精神的にタフな人

通訳業務は言語能力をはじめとした「脳力」を酷使するため、体力的に疲労感を感じることもしばしばですが、「精神面」においても、ストレスを抱えやすい仕事と言えます。

通訳の仕事でも勤務する現場によって様々な種類があるので一概には言えませんが、通訳に求められる「コミュニケーションの橋渡し役」としてのポジションは、言語的な意味合いだけでなく「当事者双方の気持ちを汲み取る」といった精神面での仲介役としての意味も含まれます。

通訳をしていると当事者間で「板挟み」になってしまう場面もあり、『一体自分はどちらの側についているのか』『そもそも中立の立場で業務をこなさなければならないのではないか』『どっちつかずの態度だと双方からそっぽを向かれるのではないか』などと悩んでしまって、精神的に追い詰められるケースも少なくありません。

「精神的にタフな人」は、このような点から、通訳業務に求められる適性の一つを備えていると考えられます。

私自身も、日本人と外国人との間で互いの不満の聞き役になったり、「相手はこう言いたいんだと思うよ」というようなニュアンスの説明を加えることに苦労したケースが多く、精神的にまいってしまいそうな瞬間もありました。

その分大きなやりがいに繋がるという点も否定できませんが、精神的なタフさがある程度備わっていないと、想像以上に厳しい現実を突きつけられるでしょう。

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通訳の仕事をするために生かせる、今までの経験は?

通訳の仕事は、その特殊性からなかなか類似の職種を見つけることができません。

そのため未経験で通訳を始めようとしている人の中には、特別何か準備をしなくても良いのかという不安を抱えている人も少なくないでしょう。

ここでは、通訳の仕事に生かすことのできる「経験」を二つ紹介します。

以下に挙げる経験をしたことがある人は、その経験を通訳の仕事を始める際の「準備」の一環と捉えることができるでしょう。

言葉や価値観が違う人と過ごした

通訳の仕事は単に言語的能力を駆使して人々のコミュニケーションを円滑にするだけでなく、国によって異なる文化を超えた「異文化コミュニケーション」の橋渡し役も担わなければなりません。

そのためには、者自身が異文化コミュニケーションを体験した過去を持ち、これがいかに難しいことなのか、スムーズな意思疎通のコツは、といった点を理解していなければなりません。

異文化コミュニケーションとは、言い換えれば「自分と相手の違った価値観を理解しながらの意思疎通」と表現することもできます。

つまり、異なる言語を使う人同士がコミュニケーションをとる場では、言葉の違いだけでなく文化の違いという壁も存在するため、円滑なコミュニケーションが困難を極めることはむしろ当然と言えるのです。

通訳は、このような場で本領を発揮する職種といえます。

外国語の習得と異文化コミュニケーションを手っ取り早く経験できるのは、留学や出張などによる「海外滞在の経験」であることは否定できず、その期間が長いほど能力向上の可能性も高まります。

加えて、まわりに日本語を話せる人があまりいないなどの「厳しい環境」であればあるほど、実のある滞在になるでしょう。

しかし最も重要なのは「海外で生活した」経験ではなく、「言葉や価値観の違う人たちと過ごした」経験である点には、注意しなければなりません。

海外渡航の経験があったとしても、まわりのサポートが手厚いものであれば自身の能力向上はあまり見込めませんし、日本国内においても、住み慣れた場所を離れて一人暮らしをすることで得られる経験はとても貴重です。

大切なのは、今まで当然のように信じてきた「価値観」を揺さぶられる経験であり、そんな修羅場をいくつも超えてきた人は通訳業務にその経験を存分に生かすことができるでしょう。

場をまとめたり、人を説得するようなポジションで仕事をした経験

職場によっては通訳という立場はとても特殊であり、上司・部下や先輩・後輩という枠組みを超えて独立した立ち位置になることがしばしばあります。

外国人にとっては、通訳がいなければ職場でのルールや上司から求められていることが理解できないので、通訳は自分たちが職場で最高のパフォーマンスをするための生命線と言えます。

また日本人にとっても、通訳がいないと外国人と円滑なコミュニケーションがとれないので、仕事に支障をきたしかねません。

そのため、通訳は両者にとって非常に重要な役割を担っていると捉えられ、その結果、通訳の意見や主張は比較的聞き入れやすい傾向にあると言えるのです。

この点を考慮すると、意見が対立するような場をまとめたり、自分と意見が異なる人を説得するようなポジションを経験したことがある人は、通訳の仕事でもその経験を生かすことができるといえるでしょう。

通訳が働く現場では意見の相違が発生することの方が多く、単純に双方の主張を訳すだけでは解決に至らないケースもあります。

このような場合に、通訳が自身の視点から双方に対して意見の不一致の解決に向けたアドバイスをすることができれば、その仕事ぶりが大いに評価され信頼される存在になることも考えられます。

通訳として必要とされる言語能力などの基本的スキルと共に、このような「ヒューマンスキル」とでも呼ぶべき能力の方が、ある程度の経験を積むことが必須であるという点において「希少価値」が高いと言えるでしょう。

このような経験をしてきた人で通訳業務に興味がある人は、この仕事にチャレンジしてみる価値ありと言えそうです。

その後のキャリアについて

最後に、通訳の仕事に従事した後のキャリアパスについて解説しておきます。

この仕事に就いた後のキャリアップの道や、通訳業務の経験を転職の際にどのように生かすことができるのか、という点を確認しておきましょう。

この仕事に就いた後のキャリアアップの道は?

通訳の仕事に就いた後のキャリアアップには、どのような方法が考えられるでしょうか。

一口に「通訳」と言っても、その職場や職種の違いによってキャリアパスも千差万別ですが、例えば比較的規模の大きな企業で通訳業務に従事するのであれば後に国際事業部や海外事業部といった部署でその責任者の職に就くこともあり得るでしょうし、より規模の小さな会社であれば、その語学力や他のヒューマンスキルを生かして営業部長や統括本部長といった更に責任の重い役職を目指すこともできるでしょう。

また、雇われの身として始めた通訳の仕事を退職し、独立した個人事業主としてプロの通訳の道を歩むことも考えられます。

この場合は、自身で営業から始めなければなりませんが、能力次第では、さまざまなジャンルの案件を取り扱うことができる可能性のあるキャリアパス、と言えるでしょう。

他の仕事にもこの経験を生かせる?

通訳の仕事とは全くの無関係、すなわち語学力を生かすような特徴のない職場へ転職する際にも、この仕事での経験はいくつかの点から有利に働くということができます。

例えば、通訳はその語学力等を生かしてコミュニケーションの仲介役を務めるためコミュニケーション能力が向上する傾向が強いですが、この能力を求めていない職場を探す方が難しいと言えるほど「コミュニケーション能力」は汎用性があり、転職の際に有利に働く特性です。

また、通訳は日々の業務を遂行する中で自然に「ヒューマンスキル」が鍛えられる職種とも言え、場をまとめたり相手を冷静且つ理論的に説得できたりする能力も、多くの職場で求められるものと言えます。

通訳の仕事は求められるスキルのレベルがいずれも高いため、他職種に転職する際にも履歴書を一段格上げする効果が期待できるでしょう。

まとめ

今回は「通訳」の仕事を、通訳に向いている人の特徴やこの仕事に生かすことのできる経験、更にはキャリアにまつわる事柄を通して紹介していきました。

通訳として求められるのは語学力だけでなくコミュニケーション能力やその他のヒューマンスキルである点、キャリアアップやプロとしての独立と併せて他職種への転職にも通訳に従事した経験は存分に生かすことができる点などが、お分かりいただけたと思います。

通訳経験者をまわりに見つけることはなかなか難しいかもしれませんが、語学力に自信があったり自身の言語能力を生かす仕事をしたいと感じている人は、一度通訳業種の求人検索をしてみることをおすすめします。

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