印刷会社の仕事内容12個の業務と向いている人・向いていない人の特徴
印刷会社の仕事内容について具体的に皆さんはご存知でしょうか?
印刷関係の仕事に就職を希望する際に不安に思うのが、どれだけ専門知識や技能がいるのか、また未経験で入社してそれらがどれだけ習得できるのかといったところではないでしょうか。
そこで印刷会社勤務経験者の視点から、印刷会社の仕事内容や職種、従事するために必要なスキルなどの詳細をみていきましょう。
興味のある方は印刷業界の仕事内容をこの記事で少しでも把握していただけたらと思います。
目次
閉じる印刷会社の仕事は大きく6個の役割に分けられる
印刷オペレーター
印刷機を動かすオペレーターです。
大小様々な印刷機があり、印刷できる材質や技術の進歩により多種多様な印刷機が出ています。
ここでは情報の混乱を避けるため、一般の紙に刷る印刷物に関わる「一般的なイメージの印刷会社」に焦点を絞りますが、それでもインクと版を使うオフセット印刷、その中の輪転や枚葉、その他デジタルでパソコンから出力するオンデマンド印刷やインクジェット印刷まで幅広くあり、それぞれに操作方法や特徴が違いますので、印刷オペレーターに必要なスキル、あるいは従事する中で習得できるスキルは多様でまちまちです。
営業職
印刷会社だからと、印刷機とそれを操作する人材だけを置いても仕事はできません。
誰かが営業をして印刷する案件を受注してくる必要があります。
専門技術に紐づいたビジネスなので、営業にも専門知識はある程度必要です。
工務管理
実際の印刷作業、刷り上がった後の紙加工のスケジュールや、作業を内製するか外注するかのジャッジ、そして外注する場合はその手配を受け持ちます。
小さい印刷会社では営業や印刷オペレーターとして現場にいる人材が兼ねる場合がほとんどですが、大手では物量的に専門職にしないと案件を回していけない場合もあるセクションです。
製版
昨今では、「オンデマンド機」などデジタル化した印刷機の台頭で製版自体の工程が存在しないワークフローを敷いている会社もありますが、少なくとも版が必要な印刷機を使う場合は、その版を作る「製版」の工程が必要です。
時勢の変化を受け激減していますが、この製版だけを行う会社も存在します。
紙加工
紙を指定の大きさに切る断裁、冊子に加工する製本、丸型や特定の形状に紙を切り抜く型抜き、折のついた印刷物を作る折加工など。
これらを専門に行う紙工会社に外注に出すこともありますが、機器の低価格化や加工用機械の操作の簡略化により、自社内で内製化する印刷会社も増えています。
検品・出荷
印刷物は工業製品ですので検品が必要。
不具合がなければクライアントの元に届けて初めて一つの案件が完了します。
会社の近隣のクライアントとの取引がメインの印刷会社では営業が直接納品という形も取れますが、全国的に展開している印刷会社で刷った後の商品の発送等、物流を管理する役割も必要となります。
印刷オペレーターの3個の業務
機械準備
印刷機を稼働させるためには手順に従った機械の運転準備作業が必要です。
オフセットなどインクを使う印刷機を使用する場合のインクの準備や、運転前点検、作業スケジュールの確認などもこの業務に入るでしょう。
印刷
実際に機械を操作して、印刷をしていきます。
多色刷り、カラー印刷の場合は各色の位置(見当)がずれていないか、色はしっかり再現されているかを見ながらオペレーションを進めていきます。
印刷オペレーターはカラー印刷などの仕上がりの精度に大きな責任を負いますので、単に使っている機械の操作方法だけでなく、印刷全般の知識と業界の技術的な最新情報へのアンテナも必要です。
機械整備・清掃
その日の業務が終了したら、機械の清掃、掃除、不具合の原因になるところはないかの点検をします。
また、もし作業中に故障や事故が起こったらそれへの迅速で柔軟な対応をする必要があります。
印刷物は案件ごとに納期が決められている場合がほとんどなので、予期せぬ故障等で作業が止まると多大な信頼失墜に繋がります。
そのため機械保守は印刷オペレーターの重要な業務の一つです。
営業の3個の業務
打ち合わせ
クライアントやビジュアルを作ったデザイナー等と打ち合わせをして、社内に複数の印刷機がある場合や特殊な印刷が必要な場合は、どんな機械でどうそれを印刷していくかを決めていきます。
現場と離れたところで様々な条件をジャッジする必要があるので、営業にも印刷に関する広汎な知識が必要です。
見積もり
印刷の仕様や使用する紙、加工、枚数が決定したらそれに準じた見積もりを作り、クライアントに提示します。
これをする際にも営業には全般的な印刷の知識が必要となります。
スケジュール管理・マネジメント
印刷物は広告物や刊行物といった納期が厳密に決められている媒体のため、スケジュール管理、工数管理、手配などの業務が必須になります。
印刷の実務や加工などに関わるこれらの業務は、組織の規模や採用するワークフローによっては印刷工場の人員を専任として割いている場合もありますが、そういう存在がいない場合は通常営業が行う業務となります。
工務の2個の業務
作業内容の確認
前項の営業職の内容と一部が重複しますが、スケジュール管理や協力会社、外注会社への手配・指示などの全般的なスケジュール管理を「工務」として専門職を置いている印刷会社もあります。
その場合の工務の第一の仕事は、複数の印刷オペレーターと機械がある場合にどの機械にどの案件をアサインし、それをいつまでにどう仕上げるのかの総合管理を行うことです。
その工務が立てた段取りに基づいて案件が動き出します。
進行管理
作業内容の確認をして立てた段取り通りにフローが流れているか管理するのも大切。
もしスケジュールや工程の変更の必要がある場合にはそれをしっかりコントロールし、 納期を遵守するための最善策をすぐに講じる必要があります。
製版の1個の業務
デザインデータを印刷の版にする
オンデマンド印刷や、デジタルプレス、インクジェット印刷の現場では製版作業自体がないのですが、オフセット印刷等の印刷では必須です。
製版会社に外注という形もあります。
紙加工の2個の業務
仕様の確認
どのような加工があるかの申し送りは仕様書や指示書をつけるワークフローをとっている会社がほとんどです。
時には特殊な加工をしてから内製作業をする場合もありますので、作業上のミスはもちろん、段取りを間違えないようにするためにもまずは仕様をチェックします。
実作業
一口に印刷後の紙の加工と言っても断裁、折、型抜き、または金箔を押して装飾する箔押しなどの特殊なものまで様々。
それをどこまで内製し、どこまで外注するかは各々の会社にある機材やスケジュールなどに基づいて決定されます。
検品・出荷の1個の業務
検品・出荷
印刷物は工業製品ですので、気をつけていても時にはマシントラブルなどにより不良品が混入することがあります。
それらをチェックし、品質の管理をするセクションが印刷会社には必須です。
印刷会社はどんな人に向いている?
それぞれの役割分担により向き不向きはあります。
どんな人がどの業務に向いているかをご紹介します。
几帳面な人
細かいチェックや正確さ、確実さが要求されますので、ガサツな性格の人は向いていません。
几帳面で繊細な人は、校正~製本~加工向きです。
職人気質な人
デザイナーは職人です。
24時間365日、常にデザインのことを考えられる人が向いています。
デザインは生き物と言われ、常に世界中で変化し続けています。
時代の先取りも必要ですし、世の中や企業が何を求めているのかを常にアンテナを張って俊敏に察しなければいけません。
その情報をもとに自分なりのデザインを創造していくので、大変な職業と言えます。
メンタルの強い人
何事においてもメンタルの強い人は成功への道は開けていると思いますが、印刷業界の営業は厳しい現状です。
時代の流れと逆行している部分もあり、ペーパーレスで経費削減と言われているこの時代での営業はかなり難しいと言って良いでしょう。
それでも必要であることには間違いありません。
気持ちを強く持って挫けずに営業できるかです。
逆に、印刷会社に向いていない人ってどんな人?
どの役割も強い意志と繊細さを持っている人が向いていると思われますので、ガサツで物事を流せる人は向いていないのではないでしょうか。
ガサツな人
大雑把でガサツな人は、向いていません。
特に校正チェックや仕上がりチェックでの誤字脱字、印刷の小さいシミや汚れなど、細かい部分を一つ一つキッチリと目視しなければいけません。
その時の心の状態で左右するようでは務まりません。
また、締切り期日があるので、どんなに遅くなってもその日に終わらせないといけないケースも多々あり、夜中でも朝でもどんなに眠くても遂行する強いメンタルも必要です。
話し下手、聞き下手な人
社内での企画会議や打合せは頻繁に行われます。
自分の意見をきちんと主張できない人や、クライアントや先輩、同僚の意見にしっかりと耳を傾けられない人は、向いていません。
ここのコミュニケートが潤滑にできている人ほど効率良く上手に仕事が遂行できています。
印刷会社の仕事に活かせる経験
ものづくりという観点から見ると、職人的なイメージもあります。
細かい作業やこだわりといった部分では、職人気質的は要素も必要となります。
細かい作業を苦手としない人
クライアントの要望に100%応える為には、細かい部分の作業にも手を抜かないことが必要です。
そこができて初めて認められることも少なくありません。
校正チェックでも一回目で完璧に修正できなければ一流とは言えません。
クリエイティブな仕事がしたい人
クリエイティブなことに興味があり、柔軟な発想で何かを作っていくことを楽しめる人が向いています。
より魅力的でニーズをとらえた印刷物を生み出すためにはどうしたら良いのだろう?
と日常的に考えられる人、自分自身が創造していくことに興味が持てるかどうかが大事です。
印刷会社の仕事の良いところ
やりがいを感じるポイント
多種多様な印刷物が世の中に溢れていますが、それを作るのが仕事である印刷会社での業務のやりがいや魅力はどんなところにあるのでしょう。
細かく紐解いていきましょう。
日常の生活に寄り添ったモノを作る魅力
私たちのまわりには様々な印刷物がありますが、そのどれもが私たちの生活に非常に近しいところにあるのが魅力です。
街中で配られるチラシや、立ち寄った商店で使われている伝票が自分の手がけたものである、なんてことも充分あり得るわけです。
もっとも基本的な情報伝達
印刷物は中世の昔から情報伝達手段として、人の世から消えることなく絶えず進化してきました。
デジタルメディアが勃興した現在にあっても、昔とは違った存在意義が付加され作り続けられている媒体です。
書籍やポスターなどは、印刷技術自体がアートになることもある仕事です。
面白いポイント
印刷の仕事の面白みは?と訊かれたときのポイントを挙げていきましょう。
技術的な職業でありながら、機械オペレーターだけでは絶対に成り立たないところに様々な要素の面白みがあり、そこが印刷会社の魅力です。
クオリティーにこだわる
印刷物のクオリティーは、突き詰めるだけ突き詰められる分野です。
写真原稿と刷り上がりの差異をなくすとか、より使いやすいものを作る、また宣伝物ならより独創的で綺麗なものを仕上げたり加工にこだわるなど、印刷物のクオリティーアップは印刷会社全セクションが一丸となって取り組んで初めて成果となるものばかりです。
それが上手くいった時の全体としての達成感は、仕事の面白味としては最高のものだと思います。
企画にこだわる
知識も熱意もある印刷会社は、受注物を単に刷るだけでなく自社独自のアイテムやサービスを開発して「攻めの経営」に転じています。
例えばオリジナルのステーショナリーや紙器、マーケティングリサーチに則した低ロットのアイテムなど、印刷するものを自ら創出できる印刷会社は活気があり楽しみに溢れています。
印刷会社の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと
印刷技術全般の知識
印刷オペレーターだけでなく、印刷会社で業務するスタッフ全てが基本的な印刷の知識を有しているのが普通です。
情報の目新しさや知識の深さはセクションごとに違いあって当たり前ですが、印刷のメカニズムや色の基本的なこと、紙などに関する知識は会社全体で持っておくべきです。
印刷オペレーターや加工機のオペレーターは、それにプラスして自分の操作担当機械のオペレーション知識が必要です。
トレンドに関する知識
印刷の手法や機材、印刷する素材、グラフィックデザインにはトレンドがあり、また新規技術の塗り替えも意外と早い業界でもあります。
営業も含めてそれらの動向についてのアンテナの鋭さや知識の深さは、時に仕事の受注率に直結する要素となります。
カラーマネジメント(色管理)に関する知識
印刷物のデザインをPCで作っている際に見たモニターでの色やゲラ(校正)出力した際に見た色と、実際に刷り上がった印刷物の色の差をできるだけ小さくしたいという願望は、いわば印刷技術に関わる者の永遠のテーマであると言っても言い過ぎではありません。
昨今ではそれを目視やイメージといった基準の分かりにくい尺度で判断するのではなくより機会的にシステマチックに判断・管理する技術があり、その進化も日進月歩です。
今では、そうやって世界的に定められた色の基準に則って印刷物の色味上の品質管理をするのが主流となっています。
現状の印刷会社に勤務する者としては入社時に持ち合わせている必要は必ずしもありませんが、入社後に勉強することが必要になる知識です。
印刷会社の仕事のその後のキャリアについて
この仕事についた後のキャリアアップの道は?
デザイナーやライターの経験をしていれば、独立への道も考えられます。
仕事をしていく内に自分のやりたいデザインや、センスが生まれてきます。
また、毎日指示されたことだけしていると、そういった欲求が出てくる人もいます。
独立して自分のセンスで仕事をしている人も沢山います。
他の仕事にもこの経験を活かせる?
クリエイティブ思考や、毎日コツコツと地道にしてきたことは、必ず他の職業でも活かせます。
出版会社や車の製造など 「ものづくり」 の業種では間違いないと思います。
まとめ
ここまで印刷会社での業務の内容と魅力、そして就職するために必要な知識や、あるいは従事することで身につくスキルなどを細かく解説してきました。
webや電子書籍などのデジタルメディアが台頭してくる中で、印刷物は決してなくならず、よりプレミアムな媒体へと変化していくことも考えられます。
昔から連綿と受け継がれてきた印刷技術は、機材や資材の進化と時代の要求に伴ってより高度でクリエイティブな技術となっていくと考えられます。
そういった時勢の中で優れた印刷会社としてしっかりとした仕事をするためには、実際に印刷機を操作するオペレーターの技術力のみが高いだけでは不十分です。
営業や工務作業、後加工に従事する者の技術力とセンス、そして組織内にグラフィックデザイナーを抱える会社なら、デザイン力の高さも問われてくるというような会社としての総合力が求められることとなります。
この潮流はますます顕著になっていくことでしょう。
それは印刷に従事する人材にとっては求められることが多くなるのと同時に、やりがいや楽しみ、達成感も多くなり業種としての魅力も増していくものと思います。
業界、業種のことをしっかり調べ、自分の特性とのマッチングを充分考慮し、目的を持って飛び込めば、印刷業界、印刷会社は非常に魅力的な職場です。
印刷の現場は、これからは昔とはまた違った印象のある職業になっていくものと考えられます。
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