2020年7月6日

病気や怪我で苦しんでいる人に直接、医療というサービスを提供する医療職、そんな医療職になりたいと思った人はきっと多いのではないでしょうか。

そんな医療職の中でも作業療法士は、様々な専門的知識を使って、クライエントの生活を支えることができる専門職であり、地域からのニーズもますます高まっている貴重な存在であると感じます。

しかし、現役作業療法士である私自身も順調なキャリアライフを踏んでいたわけではなく、理想と現実のギャップや転職活動の現実で何度も挫折を経験し、時には自分の仕事を辞めたくなるほどの経験もしました。

ですが、つらい経験をした後も、私は今も作業療法士を続けており、それだけ作業療法士の仕事に魅力があると感じています。

そんな私自身の経験を踏まえて、仕事がつらいと感じる時とその乗り越え方についてお話ししますので、少しでも参考になれば幸いです。

作業療法士の仕事って大変なの??

作業療法士は医療職であり、様々な症状を呈した患者様を何人も担当するため、就職後も継続的な勉強が求められます。

また、作業療法士という仕事自体があまり社会的に認知されていない為、就職後の勤務内容が想像できず、理想と現実のギャップに悩んでしまう方も見られます。

主治医や看護師等の他の医療職との定期的なコミュニケーションも求められるので、人間関係に悩む方もいらっしゃいます。

私自身も新人作業療法士時代は、知識と経験の違いから他職種とのコミュニケーションに悩んだ時期がありました。

新人時代は経験も少なく、それでも多方向からのコミュニケーションを求められることから、業務がつらいと感じる方も多くいらっしゃるかと思います。

作業療法士がつらいと感じる7個の瞬間とその乗り越え方とは?

ここでは、実際に私自身が作業療法士として勤務した経験をもとに、作業療法士という仕事につらいと感じた点とその乗り越え方について解説していきます。

報酬が少ない

20代の作業療法士における平均月収はおよそ20万円であり、給与は一般職の相場と比較して同じ、または少ないのが現状です。

また高齢化社会で若者が払うべき社会保障費も増大している中、リハビリテーション報酬は減算を辿っている傾向があります。

一部の民間企業による個人病院では初任給と昇給が低く設定されているところもあり、長く雇用し続けていても期待した昇給が望めない場面があります。

その乗り越え方とは?

「副収入を持つ」

まず1番の方法は副業です。

実際に作業療法士のみを収入源としているだけでなく、自分の強みを生かして、様々な副業にチャレンジしている方も多くいらっしゃいます。

作業療法士は自分の趣味や得意分野を生かせる職業であり、その自分の得意分野を伸ばして副業にも生かすことができます。

私自身も作業療法士だけでなく、ブログやウェブライターを通して副収入を得ています。

また職場の昇給が見込めない場合には、より給与所得の高い職場に転職して昇給を得るという方法もあります。

ただし、転職は必ず選択肢のメリット・デメリット両方をしっかり吟味した上で行動に移すことをお勧めします。

安易な転職はお勧めしません。

業務のプレッシャー

様々な症状を呈した患者様に対するリハビリテーションを担当するので、症状が改善する患者様もいれば、悪化の一方をたどる患者様もいらっしゃり、業務が苦痛に感じる方もいらっしゃいます。

また急性期での作業療法では、体調が安定しないリスキーな状態でのリハビリテーションを担当する場面もあるため、必要な医学的知識を備えていなければ、業務に心理的なプレッシャーがかかると思われます。

その乗り越え方とは?

「他者からのアドバイスをもらう」

難しい症例を担当していると感じた場合は、一人で解決しようとせず、必ず他者からのアドバイスを求めましょう。

新人時代は必ず直属の上司が自分に配属されます。

アドバイスを受けることができれば解決に向かうだけでなく、自分の業務負担も心理的に軽くなると思います。

また自分が難しいと感じている課題は他職種も同じように難しいと感じている場合が多い為、自分一人ではなくチーム全体として考える姿勢を持っておけば、業務のプレッシャーも和らぐと思います。

アドバイスを頂いた際は、必ず他者に感謝を伝えるようにしましょう。

社会的認知の低さ

看護師や理学療法士など他の医療職と比較して世間的にも認知度が低い医療職であり、自分の職業アイデンティティが確立していない間は、どうしても他職種から下に見られる傾向があります。

また主治医によってはリハビリテーションのオーダーが理学療法のみの場合もあり、自分の作業療法士としての存在価値に悩んでしまう場面があるかと思います。

その乗り越え方とは?

「些細な行動に自信を持つ」

立派な作業療法士としての成果を上げることばかりにとらわれすぎず、些細なことでもクライエントに貢献できたと感じる場面があれば、その自分に自信を持つようにしましょう。

クライエントへの挨拶や何気ない会話だけでも構いません。

その日その時に少しでもクライエントの為に動くことができた自分を見つけることができたら、その自分に自信を持つようにしましょう。

対人関係のトラブル

医療職は主治医、看護師、理学療法士などの様々な医療職とチームを組んでクライエントにアプローチを行います。

様々な医療職とのコミュニケーションが求められるので、意見の相違があれば、その職種と対立してしまうこともあります。

その乗り越え方とは?

「自分の課題を明確にして、他者の課題には介入しない」

対人関係で悩む場合の多くは、自分の課題に他者が干渉している場合か、他者の課題にも自分が介入していることがほとんどだと思われます。

自分の仕事内容に関して明確に課題を分離し、自分の課題だけに集中するようにして、他者の課題には考えないようにしましょう。

例えば、上司からもっと仕事内容を報告するように怒り口調で言われた際は、報告の頻度を増やすかどうかを考えるのは自分の課題ですが、上司の怒りの後始末に関しては上司の課題なので、無理に上司の顔色を伺う必要はありません。

ブラックな病院もある

病院によってさまざまではありますが、稀に終業時間よりも遅くまで勤務している病院や、残業代が支払われず、不必要なセミナーの参加を強要させられる病院、パワハラやセクハラが横行している病院もあります。

また新人や学生に対する指導が厳しく、間違った教育が常習的に行われている病院もあります。

その乗り越え方とは?

「早めに転職への行動に移す」

残念ながら、労働環境がブラックな職場が改心されることは滅多にありません。

今の職場がブラックであると感じるようなことがあれば、早めに転職への行動に移すことをお勧めします。

作業療法士の求人は全国にたくさん存在するので、業務内容が合わない職場に無理に我慢して適応する必要がないように思えます。

継続的な勉強が求められる

作業療法士は医療職であり、現在も様々な領域にて職域を広げていっている状況でもあって、就職後も継続的な勉強が求められます。

病気に対する知識だけでなく、作業に関する知識や介護保険に対する制度など、様々な分野での知識が求められる職種でもあります。

その乗り越え方とは?

「自分の興味のある分野から勉強してみる」

作業療法学は医学だけでなく作業学や社会学、心理学等も含まれている幅の広い学問であり、勉強する内容も様々です。

参考書を読んで医学的知識を覚えたりすることももちろん必要ですが、料理教室で料理の手順を学んだり、木工などの創作活動を経験したりすることも立派な作業療法の勉強の一つです。

自分の日常生活の中から、ほんの少しでも患者様に貢献できるヒントがないかを探すことで、勉強へのハードルが低くなるかと思います。

臨床実習は学生と指導者お互いがつらい

作業療法士養成校の学生は、国家試験受験資格の一つとして、臨床実習の単位取得が求められます。

臨床実習は学生が実際に病院内にて、特定の臨床実習指導者の指導のもと、作業療法の実践演習を行います。

作業療法学の臨床実習は8~12週間と長く、学生は一人で臨床実習施設に向かう為、心理的プレッシャーが大きくなります。

また、指導者側も臨床実習指導に対する報酬が規定されていないため、概ねボランティアで指導に当たらなければいけません。

現状の作業療法士養成制度では学生と指導者お互いに負担の多い状況にあると思われます。

その乗り越え方とは?

学生と指導者はともに単独で臨床実習に臨まないような環境設定が必要と思われます。

学生であれば、養成校担当の教員と定期的に連絡を取り、同級生または先輩から臨床実習に必要な情報を事前に得ておく、指導者は必ず指導経験の長い作業療法士からアドバイスをもらうようにして、その都度他の作業療法士へ報告し、助言をもらうようにする、などが挙げられます。

また指導者側も指導に困ったときは養成校担当の教員に連絡して必要な対策を協力して考えるようにしましょう。

キツい時もあるけど、作業療法士がおすすめの理由

これまで作業療法士の勤務に対するデメリットを中心に解説していきましたが、それでも私が作業療法士をお勧めする理由について解説していきます。

転職が比較的容易である

一般職での転職の場合は、書類選考の後に1次面接→2次面接…となる過程が必要ですが、作業療法士での転職は、募集している病院に電話し、書面にて応募すれば、そのまま面接→合否判定となるケースが多いように感じます。

一般職と比較して、転職に必要な過程が少なく、転職に移りやすい職種だと感じます。

転職市場にて需要のある職種である

作業療法士の活躍できる職域は徐々に拡大しており、毎年全国から求人を募集している状況です。

現在も、作業療法士の就職先は多数存在しており、作業療法士の求人はますます増加傾向にある為、就職先に困らない状況が続くと思われます。

また、国家資格であり、更新も必要ない為、一度資格を取得してしまえば、このままずっと仕事先に困らないように感じます。

様々な働き方がある

作業療法士はフルタイムの正規雇用だけでなく、非正規雇用としてのパート勤務として働かれている人も多くいらっしゃり、自分のライフスタイルに合わせて、企業先に相談すれば、柔軟に勤務時間を調整することが可能です。

女性に関しては、産休・育休休暇の取得や、育休後の職場復帰も可能です。

また、女性が多い職種であるため、女性特有のライフスタイルに理解が多い職種であるように感じます。

比較的自由な考え方ができる職種である

作業療法は広い学問分野を包括している学問であることから、様々な方法でクライエントに貢献することが可能な職種であると感じます。

徒手療法だけでなく、園芸療法や音楽療法、創作活動や調理訓練など様々な手法を用いることができます。

自分の趣味や得意分野を生かしてクライエントに貢献できる機会があるので、やりがいを持って仕事に取り組めるように思います。

ワークライフバランスが良い

作業療法士という仕事のほとんどは夜勤がなく、仕事とプライベートの両立できるワークライフバランスの整った職種であると感じます。

勤務は朝から夕方までに設定されている職場が多いように感じます。

休日は基本的に土日休みまたはシフト制の週休二日制が多く占めています。

病院によっては、遅出勤務などの変形労働制や夕方出勤が必要なデイナイトケアが設置されている職場もありますが、それでも作業療法士の勤務時間が19~20時以降を越える職場はあまりなく、残業も少ないように感じます。

まとめ

作業療法士について実際に経験したことを中心に、できるだけ現実的にポイントをまとめて解説しましたが、いかがでしょうか。

作業療法士として難しい経験もしてきた私自身ですが、それでも作業療法士の仕事にはやりがいを感じており、このまま少しでも長く作業療法士として働きたいという思いがあります。

作業を通して、患者様の健康的な生活をサポートできることは作業療法士にしかできないことであり、患者様に感謝されることもあって、魅力もたくさんある職種であるように感じます。

この記事を通して少しでも作業療法士に興味を持っていただけたなら、将来一緒に臨床現場で切磋琢磨できることを楽しみにしております。



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