作業療法士の将来性とは?私が考えるこの仕事をずっとやっていたいと思う7個の理由
リハビリテーション職の中でも、クライエントの大切な作業を支援し、その人らしい生活へのサポートを行うことを専門としている作業療法士は、現在、病院では医療、居宅では訪問などの保健・福祉、および社会復帰施設などでは就労支援関係など、様々な領域で活躍されています。
今後もますます活躍が期待されている職種でもあり、今回はそんな作業療法士の将来性や様々な特徴について、現役作業療法士が解説いたします。
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作業療法士の仕事内容は?
作業療法士はクライエントにとって大切にされている作業、つまりクライエントの日常生活上で「したいと思っている」、「する必要がある」、「することを期待されている」生活行為を支援する専門職となります。
作業療法士のクライエントは身体障害・精神障害を罹患した入院中の患者様や、発達障害や老年期障害などの社会生活に問題の抱えている方も含まれます。
クライエントが何かしらの要因によって、日常生活上のするべき生活行為ができなくなり、健康を害されている方に対し、クライエントの必要としている作業を通して、心身の健康を促進・サポートするという目的で作業療法が行われます。
作業療法士の将来性とは?
日本は高齢化社会が進んでいる状況の中、社会生活に問題を抱えている方への支援を目的に、作業療法士は地域からのニーズがますます高まっています。
ここでは具体的な作業療法士の将来性について解説いたします。
職域がますます拡大している
作業療法のサービスが提供される機会や利用者は増加傾向となっており、病院などの医療関連施設から、特別養護老人ホーム、デイサービスなどの老人福祉関連施設、児童福祉関連施設など、作業療法士の活躍できる職域は次第に拡大してきています。
また作業療法士が活躍できる場も徐々に拡大しており、作業療法士としての経験を生かして福祉用具の一般企業で働く方や、作業療法士養成校の教師として働く方、大学院などの研究施設で自分の関心のある研究分野に研究員として働く方もいらっしゃいます。
作業療法士養成校が増加傾向にある
少子高齢化社会が進んでいる社会の対策として、政府は高齢者の健康福祉を支援する職種の増大を図っており、それに伴い作業療法士の養成校も作業療法士学生の数も増加傾向にあります。
それだけ作業療法士は社会に必要とされており、地域での活躍を期待されている職種であると推測できます。
作業療法士養成校は、神戸大学や広島大学等の国立大学の他に私立大学や専門学校なども含まれます。
地域のニーズが高い
作業療法士は全国的にも需要が高く、特に地域医療でのニーズがあります。
作業療法は「作業(=生活行為)」の支援を専門とする専門職であり、地域で健康上の問題の抱えている高齢者が増えている中、地域は健康的な生活の援助の為、こうした作業療法士の専門性を必要としています。
また地震などの天災で被災された地域の方に、少しでも健康的な生活の支援を目的として、国から作業療法士の派遣が要望されることがあります。
それだけ作業療法士は地域から必要とされている職種であるように感じます。
実際に被災地での支援では作業療法士がエコノミークラス症候群の予防のため、避難所での運動支援や、子供たちへのストレス軽減を目的とした遊びの提供などの支援をされている作業療法士もいらっしゃいました。
作業療法士免許は、生涯保有する資格となる
作業療法士免許は国家資格であり、更新も必要がない為、生涯持っていける資格となります。
つまり作業療法士免許を取得してしまえば、リハビリテーション界にて作業療法士としての就職市場から一生涯漏れないことになります。
現在も、作業療法士の就職先は多数存在しており、作業療法士の求人はますます増加傾向にある為、就職先に困らない状況が続くと思われます。
養成校の教師が生涯自分の味方となる
作業療法学専攻は、他の学部とは違って作業療法士養成校を卒業しても、養成校の指導教員と長くつながることが多いように思います。
養成校を卒業し作業療法士として就職しても、作業療法士養成校の教員は強いメンターとなってくれます。
作業療法士同志のつながりも強く、困ったことを相談しやすい環境がある点も作業療法士の強みであるように感じます。
私自身も作業療法士として悩んだ時は卒業論文を指導してくれた養成校の教員に何度も相談していました。
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この仕事をずっとやっていたいと思う7個の理由
作業療法士の仕事を続けていく中で様々なメリットがあります。
私自身が実際に経験した内容を中心に、ここでは作業療法士として勤務していくメリットについて解説していきます。
ワークライフバランス
作業療法士という仕事のほとんどは夜勤がなく、勤務は朝から夕方までに設定されている職場が多いように感じます。
休日は基本的に週休二日制が多く占めています。
病院によっては、遅出勤務などの変形労働制や精神科のデイナイトケアが設置されている職場もありますが、それでも作業療法士の勤務時間が19~20時以降を越える職場はあまりなく、残業も少ないように感じます。
医療職の中では比較的、終業後の自由時間が取れるので、仕事とプライベートの両立できるワークライフバランスの整った職種であると感じます。
福利厚生が充実
特に病院勤務が多い作業療法士は、福利厚生が比較的整っていると思います。
社会保険などの各種保険や家賃手当、休日手当、資格手当、昼食時は食堂も完備しているところもあれば、病院によっては保育園を並列して経営しているところもあります。
家族持ちの作業療法士の方でも生活面で負担なく勤務できるメリットがあります。
デスクワークが比較的少ない
作業療法士の仕事は基本的に座りっぱなしである時間はあまりなく、長時間のデスクワークにおける運動不足の心配が軽減される職種であると感じます。
また精神科デイケアなどでは利用者と共にレクリエーションやスポーツを取り扱う場合がありますので、運動不足に悩む作業療法士の方は少ないように感じます。
座ってじっとして仕事している時間だけでは物足りない、アクティブな方には向いている職種であるように感じます。
もちろん必要な書類業務もありますので、デスクワークを行う時間もあります。
反対にデスクワークが得意な人は、病院のホームページ作りや、広告作りに勤しんでいる方もいらっしゃいました。
自分の強みが生かせる
「作業」を生業とする仕事である為、クライエントからは様々な「作業」ができるようになりたいと要望があります。
この際、習い事や趣味活動など自分が得意としている作業とクライエントの要望としている作業が一致していれば、クライエントの為により具体的な訓練プログラムの打診ができます。
つまり、作業療法士は自分の今までの経験がすべて生きる唯一の仕事と感じています。
私自身もスポーツや音楽をやっていた知識が、デイケアのレクリエーションに直接役に立ったり、農業をした経験が園芸活動の一助となった場面もあって、仕事にやりがいを感じていました。
様々な雇用形態がある
作業療法士は正規雇用として1日8時間のフルタイムで働かれている人もいれば、非正規雇用で1日5~6時間で働かれている人や週3~4日のみ働いている人もいらっしゃいます。
自分の家庭状況に合わせて自由に勤務時間を相談できる為、主婦で家庭と両立しながらの勤務を希望されている人は、子供の送迎時間に合わせて遅出勤務をされている方もいれば、育児の為に午前中のみの勤務をしている方もいらっしゃいました。
比較的勤務時間の融通が利くため、女性にとって働きやすい職種であるように感じます。
半数以上が女性である職種
現在、作業療法士の全体の70%が女性であり、管理職も女性の方が増えています。
それゆえ、女性のライススタイルを理解してくれる機会に恵まれており、育休休暇や復職にも比較的協力的な職種であるように感じます。
実際に仕事と育児を両立させて活躍されている作業療法士の方も多くいらっしゃいます。
また育児休暇からの復職にも協力的であり、まずは時短勤務から慣れていって、徐々にフルタイム勤務にシフトしていくような働き方をされている方もいらっしゃいました。
転職のハードルが低い
一般職の転職であれば、書類選考→1次面接→2次面接→最終面接→合否判定の過程を踏む必要がありますが、作業療法士の転職のほとんどは、面接を希望し、日程が決まればそのまま面接→合否判定となる場合が多いです。
つまり転職に必要な過程が比較的少なく、一般職での転職と比較して転職しやすい職種であるように感じます。
転職しやすいので、新卒で入った職場が仮にブラックな職場であっても、すぐに他の職場を検討することが可能です。
転職はもちろん生活上のリスクを伴いますので、容易な転職はおすすめしません。
転職を考える際は、転職のメリット・デメリットを十分に吟味してから行動するようにしましょう。
けど、作業療法士って大変なところも・・・
私自身、実際に作業療法士として勤務していて良かった点ばかりではなく、デメリットであった点もありました。
ここでは作業療法士の仕事について大変だったところについても解説していきます。
若い作業療法士の給与は相場より少ない
20代作業療法士の平均月給は20万円~25万円であり、学歴によって多少の前後がありますが、給与は一般職の相場と比較して同じ、または少ないのが現状です。
また高齢化社会で、必要な社会保障負担費が増えていっている中、リハビリテーション報酬は減算の一方を辿っており、初任給が相場より少ない職場では、長く雇用し続けていても期待した昇給が望めない可能性があります。
場所によっては勤務にプレッシャーがある
特に急性期医療を展開している病院では、集中治療が必要な患者様に対してリハビリテーションを行う場合があります。
急性期の患者様は医学的にリスキーな状態でリハビリを行うので、医学的知識が十分でない時では、作業療法にプレッシャーを感じることが多いように思います。
急性期に限らず、リハビリテーションを展開していく中で、クライエントに不要な不利益を与えることがないように、事前に作業療法を行う上でのリスク管理を理解しておくようにしましょう。
人間関係のトラブルがある可能性
「人」に対して直接、作業療法というサービスを提供するため、それなりに人間関係の壁にぶつかってしまう場合があります。
患者様の例でいうと、認知症や高次脳機能障害を罹患されている患者様への対応では、稀なケースですが、暴言や暴力などに遭ってしまう可能性があります。
職種間の例でいうと、看護師や理学療法士と比較して世間的にも認知度が低い医療職である為に、自分の職業アイデンティティが確立していない間は、他職種とのヒエラルキーに悩んでしまうことがある場合があります。
また主治医によってはリハビリテーションのオーダーが出ても理学療法のみ処方が出る場合もあり、自分の作業療法士としての存在価値に悩んでしまう場面があるかと思います。
現時点での日本作業療法士協会の教育制度では、頑張ってもリターンが少ない
作業療法士は日本作業療法士協会が独自に定めている生涯教育制度にて自己研鑽を行う方が多くいらっしゃいます。
生涯教育制度にて必要な研修を受講し、事例報告を行えば、国から認定作業療法士、専門作業療法士の認定が受けられます。
しかし、現時点での制度では、研修をクリアし、認定作業療法士や専門作業療法士の認定を受けても、昇給にそのまま反映されることは少なく、研修参加に数多くの時間とお金を必要とする割にはリターンが少ないデメリットがあります。
まとめ
作業療法士の現状について、実際に経験したことを中心に、できるだけ現実的にポイントをまとめて解説しましたが、いかがでしょうか。
作業療法士として働き続けるメリットもデメリットもありますが、それでも私自身は作業療法士という職種に魅力を感じており、このまま作業療法士として働き続けたいという思いがあります。
作業療法士は「人」にサービスを提供する職種であるからこそ、人から感謝される場面も多く、自分の仕事にやりがいを感じやすい職種であるように感じます。
少しでも作業療法士に興味を持っていただけた方と一緒に臨床現場で切磋琢磨できることを楽しみにしております。
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