小さな男の子が憧れる職業の一つにバスの運転手があげられますね。

子供の頃は飛行機や船、ダンプなど大きなものに興味を持つようです。

ですが、バス運転手の実際の仕事や生活ぶりなどは経験者しか知らない部分も多いかと思います。

路線バスの乗務員と事務所の運行管理補佐を10年以上務めた私が、一般的には知られざる裏側まで、バス運転手の仕事内容を可能な限りお伝えします。

バス運転手の仕事は大きく2個の役割に分けられる

乗合

乗合バスはふたつに分類されます。

ひとつは通勤・通学の足であり、公共交通機関・社会インフラとしての重要な役割を果たしているもので、一般道の決まったルートを運行する路線バス。

もうひとつは高速道を中心に運行して、都市間の移動を比較的リーズナブルに実現する高速バスです。

この記事においては主に乗合路線バスについて記述します。

貸切

お客様のニーズに合わせて、適切な車両で適切なルートを運行します。

例えば結婚式場への親族の皆様の送迎、会議場で行われる学会のためにホテルから医師の方々を送迎するケースなどがあります。

旅行代理店からの依頼で運行することも多いです。

2000年の貸切バス事業規制緩和以降、新規参入が増えてから運転手不足に繋がり、事故が続発して社会問題にもなりました。

バス運転手の5個の業務の流れ

アルコール検知

営業所に出勤すると先ずアルコール検知器で呼気をチェックします。

この機械はだいたい8時間以内にビール500ml以上の飲酒をしていると異常値として検出するように設定されています。

もし異常値を出すとその日の乗務はもちろんできませんし、その後長期にわたって厳しい指導・処分を受けることになります。

また、出勤・退勤時間は日によって異なります。

私が勤めたところでは基本的に週休2日で、休み明けの一日目は14時位の出勤が多かったです。

そしてその日はだいたい25時くらいに退勤。

翌日9時頃出勤して22時くらいに退勤。

毎日の開放時間は9時間程度で、だんだん早い時間の出勤・退勤時間に移行して、休み前の五日目は4時半出勤で15時退勤と言った風でした。

開放時間が短いので、平日にそう飲酒はできません。

職業ドライバーで毎日飲酒する人は少ないかと思います。

日常点検

その日に乗務する車両の点検を行います。

乗務する車両は日毎に異なることが多いです。

タイヤの空気圧やクリップナットの取り付けなど足回りから、エンジンのオイル量やファンベルトや張りなど、多岐にわたる項目を確実にチェックします。

もし異状が見つかれば、自身ですぐ直せる部分は修理して乗務します。

エンジンチェックランプの点灯など運転手の手に負えない場合には、車両を替えての乗務となります。

その故障のあった車両は整備担当者が点検・整備を行います。

出庫点呼

身だしなみを整えて、運行管理の資格を持つ点呼執行者と対面して出庫点呼を行います。

健康状態、アルコール検知、携帯品、車両状態に異常がないことを伝えて、点呼執行者からの伝達や指示を受けます。

乗務

ここからが運転を中心とする乗務のはじまりです。

バス事業を行う企業にとって一番重要視されるのは『無事故』です。

そこは経営者から運行管理者、運転手まで徹底して意識を共有します。

なかにはその意識が希薄で大事故を惹起する事業者もありますが…。

ですから、運転手が最優先するのは『安全』です。

そのため自然と、ゆっくりとした運転が推奨されます。

また、事故には『乗客負傷事故』と呼ばれるものがあります。

これは急発進・急ハンドル・急ブレーキなどを原因に、お客様が転倒するなどして負傷させてしまうものです。

このような事故も人身事故として、行政からも厳しく処分されます。

ですから、運転手は先ず『安全』を念頭に運行に臨んでいます。

多くのバス会社では入社後みっちりと安全運転に関する知識・技能の研修を行っています。

私が勤めた会社では、一月半ほど専用の教習施設に泊まり込みで新人研修を受けました。

その後配属された営業所で、まずはお客様を載せない車両での空車教習を一週間。

それから先輩乗務員と二人で一台の車両に乗務するツーマン研修を二、三ヶ月行いました。

こうした研修を経て、一人前の運転手としてワンマン運行が始まります。

乗務中は法定速度を守るのは当然として、社内で規制速度を設けて、デジタルタコグラフなどで運行状況をチェックされています。

こうしたことから道路状況にもよりますが、バスの発着時間はバス停に掲示されている時刻表よりも遅れがちです。

時々、誤って時刻表よりも早い時間にバス停を出てしまうケースもありますが、これは早発と呼ばれて社内処分の対象となります。

また遅れを取り戻そうと速度を上げたり、十分な確認をせずに操作することは先急ぎと呼ばれ、事故原因のひとつに挙げられます。

日々の乗務においては、スターフと呼ばれる指示書に運行ルート・停車バス停・発着時間などが記載されており、それに従って運行します。

運行系統によっては同一の交差点を直進したり右左折したりと異なる場合もあり、充分にスターフを確認してから車両を動かさなくてはなりません。

もしこれを誤った場合は『誤運行』となり処分の対象となります。

大型車両ですから最寄りのコンビニなどでUターンなどするわけにも行きませんし、何より焦りから事故につながるケースも少なくありません。

その誤運行の予防も兼ねて、私が勤めたバス会社では『次は何々です』といった行き先案内を行なっていました。

もちろん、行き先案内の主旨はお客様へのサービスです。

事故・誤運行と並んで、バス会社が減らしたいものにお客様からの苦情があります。

バスが時刻表に掲載されている時間よりも遅れて来ることに対しての苦情もありますが、それは交通状況や乗客の乗り降りの時間に起因していたりするので、故意にでもない限り運転手が責任を問われることはありません。

運転手の責任が問われる苦情で多いのは言葉遣いなどの接客態度に関するものです。

現在では多くのバス会社で『お客様』という言葉を使っています。

運賃が半額の小学生であろうとお客様であり、失礼な言葉遣いが原因で親御さんから苦情が来るケースもままあります。

また、一般のお客様に混じって専任の社員が乗務指導に乗ってくることがあります。

これは運転操作や案内用語の活用など、社内ルール通りの乗務が行われているか調査するものです。

あまりにできていない部分があって指摘されると後日に接遇研修を受けなければならなかったりします。

バス会社が求める優秀な運転手とは、事故・苦情・誤運行がなく、日々の職務を穏やかにこなせる人です。

精算・帰庫点呼

一日の乗務が終わったらその日の売上を精算します。

売上は現金の他にICカードでの支払い分があります。

他にICカードへの現金チャージ分などのデータと現金が照合され、一致していれば精算完了です。

精算が終わったら点呼執行者のいる点呼台で帰庫点呼を行います。

車両、道路運行状況、お客様取り扱い、遺留品などの異常がなければその旨を報告します。

何かあった場合には詳細を報告して一日の勤務が終わります。

なお貸切バスは精算方法などが乗合バスとは異なりますが、おおよその職務は変わりありません。

トラック運転手との仕事内容の違い

大きな違いは人が乗るか荷物が載るかです。

私はどちらも仕事として経験していますが、それぞれ求められるスキルが異なります。

アクセル・ブレーキ・ハンドルの操作を丁寧に行い、車内に余分な遠心力などの力が働かないようにするのは共通しています。

その他の部分で私が気づいた点を記述します。

バスは運転手とお客様の協力の上で安全運行が成り立っている部分があります。

乗車されたら座っていただくか、つり革・手すりにつかまっていただく。

お客様にご自身の安全を守ってもらっているわけです。

対してトラックは荷物を運びますので、荷物が我が身を守ることはありません。

ですから、運転手の荷造りがキモになります。

荷物を重ねる際の重心のかかり方や固定の仕方、全てが運転手の責任となります。

私の考えでは、バス運転手に必要なスキルの一つとしてお客様とのより良い関係を築けるコミュニケーション能力が挙げられると思います。

それに対してトラック運転手に必要なスキルは荷造りの技術とそれを高める向上心になるかと考えます。

バス運転手の仕事の良いところ

やりがいを感じるポイント

給料面

仕事のやりがいというと、給料について触れないわけにはいかないですね。

私の勤めた会社では、運転中と待機中の時給が分けて計算されていました。

ですから一日の拘束時間がたとえ15時間あっても、時給1,500円で22,500円とか簡単には計算できませんでした。

とても複雑な計算式で、支給されてみなければよくわからないといった印象でした。

月給はトラックの運転手とそう変わらないかと思います。

ただ、私が勤めたバス会社は鉄道系の大きな会社だったので、ボーナスは運転職にしては良かったです。

年間基本給五ヶ月分近くが支給されていました。

それから、勤務期間に応じた退職金も大きな魅力の一つでした。

仕事はキツイけど、退職金もらえるまで頑張ると考えている運転手は多かったです。

あとは無事故五年とは十年といった節目ごとに報奨金が支給されていました。

これもひとつのモチベーションアップにつながっていました。

バス運転手の給料は、こちらの記事を参考に!

善行

会社に寄せられるお客様からのご意見は苦情が多数を占めますが、ごくまれにお褒めの言葉も届きます。

その内容としては、『駆け込み乗車を待ってもらえて助かった。』とか『きちんと遅れの案内をしてさわやかな雰囲気作りをされていた』といったものがありました。

お褒めの言葉をもらえるとボーナス査定などが良くなったりします。

でもこれは狙ってもらえるものでもないので、日頃からマニュアルに沿った接客態度の実践が大事かと思います。

お客様からの労い

私が乗務した路線バスは中ドアから乗車して、運転席横の機械で運賃を精算して前ドアから降りる方式でした。

ほとんどのお客様は無言で先を急いで降りて行かれますが、時々乗務員の目を見て『ありがとうございました』と声をかけてくれる方もいらっしゃいます。

これには疲れが吹き飛ぶように感じられました。

また、中には毎日のようにバスを使う方で、降りるときにジュースやパンなど差し入れてくれるお客様もいらっしゃいました。

こういった出来事もあるので、いつも手を抜いた仕事はできないなと感じていました。

昇進

事故・苦情のない仕事を続けていると管理職からの評価は高くなります。

運転手として定年まで勤める気であればもちろん可能ですが、運行管理の職に就く道も開けます。

営業所内での等級で言うと、一般乗務員 → 助役兼乗務員 → 助役 → 首席助役 → 所長と上がっていきます。

実際、各営業所の所長の八割程度はもともと乗務員として入社した人たちでした。

運転の仕事は事故などリスクを伴いますので、多少給料が下がっても事務職を目指すといった選択肢もありました。

面白いポイント

営業所の施設など

※私が勤めた営業所には男性200人、女性20人程度の運転手が所属していました。

路線バスの車両台数は150台ほどで、日本では最大規模でした。

営業所の敷地内に給油や洗車の施設が設けられていました。

時々テレビの取材なども来られてました。

営業所内には宿泊・休憩の施設や食堂もあって、自宅が遠い人は週五日泊まりで勤務して休みは自宅で過ごすといった暮らし方をされていました。

休憩室は分煙されていて、運転手同士の情報交換の場でした。

やはりここにおいても、コミュニケーション能力の高さは大事だったと思います。

バスの乗務中は一人で過ごします。

待機時間中もバス車内で本を読んで過ごすよりは休憩室に顔を出したほうが、自身にとって勤めやすい環境づくりになったと思います。

まとめ

以上、バス運転手の仕事や日常について記載しましたがいかがだったでしょうか。

安全を再優先してお客様や同僚とよい関係を築くことができれば、長く安定した仕事を得られると思います。

今は若い人を中心としてドライバー不足が社会問題のひとつとなっています。

ですからドライバーの待遇は改善されつつあるのが現状です。

この記事が、読んでくださった方がバス運転手の職に就くことを考えるきっかけになれば幸いです。


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