整形外科での看護師の仕事というと、どんな内容なのかすぐにはイメージが湧きにくいですよね。

私も初めは「腰が痛い症状の患者さんが行く病院」「骨折などの怪我をした患者さんが来る病院」という簡単なイメージでした。

この記事では、実際に整形外科外来で働いた経験を基に仕事内容や役割、患者さんへの関わり方、やりがいについてお伝えしたいと思います。

整形外科に配属になった方や転職で整形外科を検討している方がイメージしやすいようにご説明していきますね。

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整形外科の基礎知識

整形外科の主な疾患

整形外科を受診される患者さんの疾患は、骨・関節・筋肉・神経系に関するものが主です。

  • 外傷性疾患(打撲・捻挫・骨折・脱臼・断裂・擦り傷など)
  • 慢性変形性関節・脊椎疾患(変形性腰痛症、変形性膝関節症、ヘルニア、狭窄症など)
  • 代謝性疾患(骨粗鬆症、痛風など)
  • 免疫系疾患(リウマチなど)

これらの疾患の完治や改善、運動機能の回復を目的に診断・治療を行っていきます。

年齢層

整形外科は、全ての年齢層が対象です。

言葉を話せない1歳未満の幼いお子さんから学生、主婦、耳が遠かったり認知機能が低下している高齢者の方まで実に様々です。

医師や看護には、それぞれの年齢層に合った関わり方が求められます。

整形外科の仕事は大きく3個の役割に分けられる

整形外科の役割は、大きく三つに分けられます。

医師の診療介助・看護業務・患者さんとの関わりや指導が、看護師の主な仕事です。

この三つの役割について説明していきます。

医師の診察介助

整形外科では、様々な種類の医療処置を行います。

関節注射や腰椎へのブロック注射、怪我で受診した方への処置行為、骨折・断裂・脱臼時のシーネ固定やギプス固定など多くの処置を介助していく必要があります。

時には医師の指示だけでなく看護師自身が判断して業務を行う必要もあります。

点滴や採血などの看護業務

整形外科では、点滴や採血の業務も行う必要があります。

外来の患者さんも同様です。

医師の指示により抗菌剤の投与や脊柱管狭窄症治療、骨粗鬆症治療などで点滴や採血、注射を行います。

患者さんとの関わり、指導

最近では骨粗鬆症の治療も積極的に行われています。

そのため、在宅での自己注射についての指導や評価なども看護師の業務の一つです。

患者さんの病気や治療への理解、在宅での治療方法や評価など、ご家族の協力が必要な場面についても指導します。

指導を行う上で、日々進歩していく治療についての勉強が必要となってきます。

医師と患者さんとのの橋渡しをするのも看護師の役割です。

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診察前の3個の業務

医師の診察前に看護師が行う業務があります。

患者さんがどのような疾患で受診されたかを把握し、診察をコーディネートするのも看護師の業務内容です。

患者さんへの問診

それぞれの病院でのやり方はありますが、患者さんに問診を記入していただく病院が多いと思います。

問診表を基にレントゲン撮影の必要部位を確認し、医師からレントゲン指示を仰ぎます。

例えば患者さんが「右足が痛い」と受診されて右足を捻挫していることが分かった場合、右足関節のレントゲンを撮る必要はあるでしょうか。

また、右下肢の痛みがあり腰からの神経症状だった場合は、腰椎のレントゲンは必要でしょうか。

このように患者さんの疾患や患部の症状を看護師が把握し医師に伝えることも必要となってきます。

また怪我や事故などで患者さんが搬送されてきたときに、緊急性の判断や対応をするのも看護師の業務の一つです。

レントゲン介助(必要時)

整形外科では診察前や診察後にレントゲンを撮影しています。

他の科に比べてレントゲンを撮る量は非常に多いです。

レントゲンは、レントゲン技師や医師が撮影します。

しかし撮影部位や撮り方、乳幼児・高齢者の撮影時に介助が必要な時には看護師も一緒に協力し撮影を行うこともあります。

診察コーディネート

外来の業務では、患者さんの診察コーディネートが必要です。

「どのような流れで診察・処置を行うか」など、リーダー看護師を中心に診察のコーディネートをします。

医師からレントゲンの指示を受けてレントゲン技師に依頼したり、他部署と連携しながら診察をまわしていきます。

看護師は医師と連携し中心的な存在として業務を行っていく必要があるのです。

診察中の5個の業務

診察時、医師の介助は看護師の看護業務の一つです。

特に外来での業務は医師の診察を基に業務を行っていくので、医師との協力が必要となってきます。

診察介助

整形外科へ受診される患者さんは、体のどこかしらの部位に痛み・異変を感じて受診されます。

医師はその症状を判断するために、問診・触診・検査などを行います。

医師が診察・診断を行う上で必要な検査をする際に、看護師は患者さんを誘導したり声掛けを行い不安や緊張の緩和を心掛けます。

医師がスムーズに診察を行えるようフォローしていくことも大切な仕事なのです。

また患者さんは、体に痛み・異変を感じており一つ一つの動きが苦痛・困難な場合も多いです。

そんな時、痛みが少なくて済むように介助を行うことも看護師の役割です。

処置介助

整形外科で行われる処置は傷の縫合や消毒などで医師の介助・指示を受けて実施していきます。

縫合などの処置は医師が行うので、そのフォローを看護師が行います。

処置後のガーゼ固定や包帯を巻くことは看護師に任されることがあるのでその方法や知識を身につけておくことが必要です。

また、処置の介助につくことも多いため、滅菌物の取り扱い、処置・縫合で使用する器材の名前、必要物なども把握しなければなりません。

このように傷などの処置を行う際にはきちんと清潔操作を行わないと、感染のリスクにも繋がります。

患者さんや自分自身が感染する危険を避けるためにも、きちんと不潔・清潔操作をマスターしておきましょう。

ギプス固定

骨折、脱臼、捻挫、断裂など様々な症状で患者さんは受診されます。

医師がレントゲンやMRIなどの画像的診断や触診を基に、固定が必要と判断した場合はギプス固定を行います。

ギプス固定をするため、看護師は物品の準備から固定の介助、そして患者さんに固定を行う上での注意点などを説明します。

ただギプスの固定を行うだけではなく、良肢位での固定方法、固定を行うことで起こってくる合併症などについてもよく理解しておく必要があります。

例えば骨折は骨を損傷しているので出血も多く、受傷直後は腫脹・疼痛の症状も強いです。

この症状に対する適切な処置をしなければ、様々な合併症を起こしてしまうことも…。

ギプス固定の状態で腫脹が強くなると患部を圧迫し、神経障害や循環障害が起こります。

患者さんにもこの合併症についてしっかりと説明できるよに、看護師はきちんとした知識が必要なのです。

ただ固定を行うだけでなく、合併症、次回の診察日程、継続治療の必要性、治療の経過について患者さんにも分かりやすく説明することも看護師の役割です。

点滴・採血・注射

内科ほど採血を行う機会は少ないですが、整形外科でも採血・点滴は行うことがあります。

特に最近「高齢者の健康寿命を延ばし、寝たきりを予防しよう」ということで、日本の整形外科では骨粗鬆症の治療に力を入れています。

骨粗鬆症の治療薬にも様々な種類があります。

以前は内服治療が主流でしたが、現在は点滴、静注、皮下注射、在宅での自己注射などもあります。

そのため、整形外科でも点滴や定期的な採血、皮下・筋肉注射を行うことが増えてきています。

もちろん骨粗鬆症以外にも抗生剤の投与や狭窄症などの治療で点滴を行うこともあります。

患者指導

整形外科外来では、看護師は患者さんに対して患者指導を行います。

「指導」というと難しく感じるかもしれませんが、「今後どのような治療を行っていくのか」「治療を行う上で気を付けてもらいたいこと」「注意事項」などを分かりやすく説明することです。

医療従事者にとっては当たり前のことも、患者さんからすると分からないことばかりです。

患者さんの立場に立ち接すること、患者さんが不安や疑問を訊きやすい雰囲気作りや接し方を心掛けることも求められます。

診察以外での2個の業務

看護業務以外の雑用も看護師の業務です。

看護師業務が多忙でなかなか看護業務以外の仕事に手がまわらないという時には、看護助手さんに看護師の仕事をフォローしてもらっている病院も多いですよね。

滅菌物の管理

総合病院では滅菌物の管理を行うことは少ないです。

滅菌物の管理には医療器具の期限切れなどの点検も含まれており、看護師や助手さんが協力して行います。

個人の病院やクリニックでは、看護師が滅菌物を管理します。

滅菌パックやケッテル、攝子を滅菌機にかけ、自分達で管理を行っています。

整形外科では関節注射や創傷処置などの業務が多いため、ガーゼや消毒に使われる綿球、攝子などの器材は沢山使います。

そのため、1日に数回滅菌をかけないと診療がまわらないということもあります。

外来では、看護師が滅菌具の操作を行うこともあるのです。

物品管理や薬品の発注

医療物品や薬剤の管理も看護師の仕事です。

日々使用する薬剤や物品の在庫を管理し、在庫がなくなって治療ができないという状況にならないようします。

在庫管理は非常に重要です。

治療薬・物品が足りないと患者さんの治療ができず、大変なことになってしまいます。

当然、信用問題にも繋がります。

このような状況が起こらないように看護師が医療物品や薬剤の管理をすることも、大切な役割の一つです。

整形外科の仕事の良いところ

やりがいを感じるポイント

整形外科は最初の内は覚えることが沢山あり大変だと感じることもありますが、日々業務を行う内に自然と知識を深めることができます。

その中でも整形外科ならではのやりがいについてご紹介します。

処置が得意になる!

整形外科では、手術後の処置や怪我で受診された患者さんの創傷処置や縫合の介助を行います。

毎日の業務の一環なので、消毒やガーゼ交換、包帯の巻き方などが自然と身につき得意になります。

包帯を巻く処置は、なかなか巻き慣れていないと実践できません。

圧迫固定や包帯の巻き方一つ一つにも意味があり、疾患や症状によっても包帯やテーピングの固定方法は違います。

その知識や技術を持っているというのは、看護師としての強みです。

応急処置の方法を習得できる

最近は災害や地震などの自然災害が多くなっています。

そのため、都道府県看護協会や看護学校の授業でも災害研修を行っています。

整形外科では汎用性の高い処置の方法を身につけることができるので、応急処置の方法も自然と分かるようになります。

骨折した時のギプス固定や良肢位の固定方法なども習得できます。

このような知識や技術は、応急処置にも対応できるという面でもやりがいを感じられます。

患者さんの回復が目に見えて実感できる

整形外科の患者さんの症状は、目に見える形で回復を実感することができます。

例えば骨折していた骨がレントゲンで経過を見るたびに治癒していたり、下肢の筋力低下で歩けない方がリハビリを行うことで歩けるようになったなど、はっきりと変化が分かるのです。

患者さんが元気になっていく姿や、どんどん笑顔が増えていく様子を身近で見られた時に、看護師としてやりがいを感じます。

コミュニケーション能力の向上

小さなお子さんから高齢の方まで多くの方々との関わる中で、様々な年代の人と上手に関わる方法を身につけることができます。

年齢層や性別によって関わり方、また説明の方法も変わってきます。

初めは人と関わることが得意ではなかった人や人見知りだった人も、業務を通して自然とコミュニケーション能力を磨くことができます。

自分の能力が向上することもやりがいの一つですね。

また、患者さんに感謝されたり何度も関わる内に親しくなったり信頼していただけると、看護師としてのやりがいを感じます。

患者さんに「あなたのおかげで安心し、元気を貰えた」と言ってもらえた時は、本当に嬉しく感じる瞬間です。

アクシデント対策を身につけることができる

これは仕事環境にもよりますが、整形外科は転倒・転落のリスクが高い診療科です。

インシデント・アクシデント対策などが行われている病院も多いと思います。

整形外科ではそのような対策を積極的に行っている場合が多いので、院内リスクに対しての知識も自然と養うことができます。

リスク管理や危険予知を把握して仕事を行うことは勉強になると思います。

子どもに夢を与える仕事

子どもの頃、テキパキと包帯を巻いたり注射したりしている看護師さんに憧れたことがある方もいるのではないでしょうか。

私たち看護師の姿を見て子どもたちが将来看護師を目指そうと思ってくれたと知ると、とてもやりがいを感じます。

面白いポイント

整形外科ならではの面白いポイントをご紹介していきます。

他の科では体験できないようなあるあるネタをお伝えしていきます。

骨や筋肉、関節の解剖に詳しくなる!

私が実際に働き始めて感じたことは、他の科と比べて整形外科の看護師は骨格、筋肉、関節名にとても詳しいということです!

手の骨、指の骨や関節一つ一つに部位名があり実際に日常の業務で使うので、名前を全て覚える必要があります。

整形外科に勤め始めた頃は、覚えるのにとても苦労しました。

しかし、覚えてしまえば面白いです!

他の科の看護師と会話していると、「自分って骨や筋肉にマニアックだな」と感じることもあります。

しかし、正しく体の部位を答えられるという点は看護師としてとても良いことだと思います。

そういう面では整形外科は少し異色なのかもしれません。

清潔・不潔の操作に強い!

手術室、外科、整形外科は、特に清潔操作に厳しい科でもあります。

日々の業務でも処置行為が多いので、滅菌操作や清潔操作の知識は自然と身につきます。

これは医療従事者として働く上ではとても大切な知識です。

整形外科で働くと清潔操作、滅菌操作に非常に強くなります!

まとめ

今回は、整形外科外来の仕事内容についてご紹介していきました。

「整形外科外来の仕事ってこんな仕事なんだ!」というイメージができたでしょうか。

私が実際に働いて感じたことは、整形外科外来の患者さんは体に痛みはあっても元気な方が多い印象なので、患者さんと直接コミュニケーションを取る機会が多い職場だということです。

お話をすることが得意な方や明るい方は整形外科の看護師に向いていると思います。

実際に働いている看護師も、元気でさっぱりした性格の人が多いです。

アットホームな職場も多いので、明るく元気に働きたい人にはぴったりだと思います。

整形外科は処置や点滴・採決など業務内容も多いので忙しく、バタバタしてしまうのは事実です。

しかし、どこの診療科に行っても学べることは沢山あります。

整形外科では骨や筋肉などの解剖学も学べ、清潔操作や処置方法などの知識にも強くなります!

興味があればぜひ看護師として整形外科の分野に進み理解を深めてみてください。

とても勉強になる診療科だと思いますよ。

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