人の心に興味がある。

悩んでいる誰かの支えになりたい。

臨床心理士になってみたいけど、実際どういう仕事をしているのかわからないことも多いですよね。

今回は心の専門家といわれる臨床心理士という仕事についてご紹介したいと思います。

臨床心理士とはどんな仕事?

臨床心理士って実際にどんな仕事か知っていますか?

臨床心理士の活躍の場は多岐に渡ります。

大きく分けると医療、教育、福祉、産業、司法の5つの分野があります。

それぞれの分野によって臨床心理士が行う仕事は大きく変わってきます。

ただしどの分野に行っても臨床心理士として働く上で共通することがあります。

それは心理査定、心理療法、心理教育、研究です。

最近はどの分野においてもチーム医療やチーム学校などチームで動くことを求められます。

そのため、その3つの仕事にプラスして他職種との連携なども仕事内容に入ってきます。

臨床心理士は何かしら悩みを抱えている、もしくは心のバランスを崩した人に対して心理テストや対話、観察を行い、現在の心理状態をアセスメントします。

そのアセスメントをもとに、どういったサポートの仕方が適しているのか、ゴール設定はどのあたりにするのかを見極めます。

そして実際にカウンセリングを行い、自分で立ち上がる力を引き出すサポートをしながら見守ります。

ともに悩み、ともに考え、寄り添う。

それが臨床心理士の仕事なのです。

臨床心理士の仕事の役割とは?

では具体的にどういった分野でどういう役割を担っているのかを、具体的に見ていきましょう。

医療

医療分野では精神科もしくは心療内科として配属されている場合、主な役割は主治医の指示のもと心理査定を行い、その後必要に応じてカウンセリングを実施していくことが役割として求められます。

どういった精神状態なのか、どういう人なのか、どういうものの考え方をするのかなどをテスト結果から読み取って主治医に報告します。

それが、クライアントの自己理解を深め、主治医が治療方針を立てる手助けとなります。

また、じっくり話を聞くことがクライアントにとって有意であると判断された場合、臨床心理士が対応をします。

そういった腰をすえてじっくりクライアントと関わるということが、病院で臨床心理士に求められる役割のひとつです。

臨床心理士は、病院のスタッフではありますが、医療行為はしません。

そのため、クライアントにとって、不利益を被ることを懸念せずに話せる存在であったりもします。

また、総合病院などの場合は、それだけではなく、他職種に対して、その方がどういう風なことを大切にして物事を決める人なのか、どういう伝え方が理解しやすいのかなどの解説を求められます。

実際に接してみたり観察したり、カルテから行動を読み取ることで、アセスメントを行っていき、それを伝えることも役割として求められています。

教育

教育分野では主にスクールカウンセラーや適応指導教室などが主な所属場所となります。

昔は学校といえば教師だけが生徒を抱えて指導していく場と考えられていましたが、現在はチーム学校といって様々な職種が生徒に関わりを持つようになりました。

臨床心理士はその一員として、適切な心理アセスメントをし、生徒およびその家庭を支援するための方針作りに参加する役割を求められています。

自ら相談室へ来る生徒や教師に誘われて来る生徒に対して、心理アセスメントおよび心理カウンセリングを行います。

また子育てに悩む保護者に対しての心理カウンセリングなども役割として挙げられます。

不登校児や発達障碍児などを抱える保護者の悩みを聞き、対応の仕方をアドバイスしたり、普段の気苦労を少しでも解消できるよう関わります。

そしてチーム学校の一員として、生徒への対応を検討する際、心理の専門家としてアセスメントを伝え、支援方法の提案を行います。

また担当する学校や近隣学校にて自殺や不慮の事故での突然死などがあった場合、緊急対応として心理カウンセリングが必要な生徒や保護者への対応を求められます。

また、教師に対して、これから予測される生徒の心理状態の変化や対応方法などのアドバイスを行うことも臨床心理士の役割となります。

福祉

福祉分野でも臨床心理士は活躍しています。

児童相談所をはじめ、心身障碍者福祉センター、女性相談センター、老人福祉施設など子どもからお年寄りまで、あらゆる年齢層が対象となってきます。

役割はそれぞれの施設によって様々ですが、児童相談所や心身障碍者福祉センターであれば発達検査や心理検査によるアセスメント。

心理カウンセリングなどが主な役割となります。

また女性相談センターですとDV被害など女性の家庭の悩みに対するカウンセリングやグループカウンセリングのファシリテートなども役割に入ってきます。

また老人福祉施設では、認知症のアセスメントやデイケアなどが求められます。

産業

ストレス社会の今、産業分野における臨床心理士の活躍が非常に求められています。

産業分野ではストレスが強まりすぎて心のバランスを崩した人へのカウンセリングをはじめ、予防的関わりとしての研修の取り仕切りなども役割になります。

また復職する際のリワークプログラムを作成することも臨床心理士の役割として求められています。

司法

司法分野では家庭裁判所や少年院、刑務所、保護観察所など犯罪に関わった人が対象となります。

今後どのような処遇が適切であるかを見極めるために心理査定を行ってアセスメントを行うことが役割として求められます。

またその後、矯正プログラムを組んで実施したり、その一環として心理カウンセリングを取り入れたりする際に、臨床心理士が対応していくことになります。

研究

臨床心理士が研究職である場合、様々な心理的側面について研究し、心理を論理的に説明することが求められます。

信頼性や妥当性の高い心理テストの開発であったり、よくある心理的問題への有効な対応方法を編み出したり。

そういった心理学の研究を行うことで、より心理的問題に対して効果的に立ち向かう術を見出すことが役割として挙げられます。

臨床心理士の具体的な仕事内容とは?

それぞれの分野で違う役割を求められる臨床心理士。

具体的にどういう風に仕事をしているのでしょうか?

仕事内容

心理アセスメント

臨床心理士は心理カウンセリングを行う前に、心理アセスメントを行います。

どういうものの考え方をする人であるのか、攻撃性の表出の仕方はどうなっているのか、どういったことが得意でどういったことが苦手なのか。

心の状態はどうか。

そういったことを様々な心理テストや観察、対話を通してアセスメントしていくのです。

心理テストが使える病院などであれば、テストバッテリーといって、その人をアセスメントする上で必要な情報を得られる心理テストの組み合わせを検討します。

道具がなくて心理テストが使えない場合でも、最初の面接でアセスメントを出来るように対話を行っていきます。

心理アセスメントは絶対的なものではなく、その後カウンセリングを続ける中で様々に変化していく柔軟なものです。

こうアセスメントしていたけど違うと感じれば、すぐに修正してそこから最適な支援方針を立てなおしたりもします。

こういった柔軟な姿勢が臨床心理士の大切な要素となります。

心理カウンセリング

臨床心理士といえばカウンセリングのイメージが世間的には強いでしょう。

実際、どの分野においても、やはりカウンセリングを行うことが多いと言えます。

中には発達検査だけ、研究だけという場合もありますが、多くの臨床心理士は心理カウンセリングを仕事の一部として行っています。

臨床心理士が心理カウンセリングを行う上で、クライアントと信頼関係を築くことが最初に求められます。

安心して話しが出来るような場づくり、話したいと感じられる応対、雰囲気を作り出すのは臨床心理士自身です。

無理に聞き出すのではなく、相手が話したいと感じて能動的に話しだすのを気長に待つことが必要なのです。

心理カウンセリングは数回などの単発で終わるものもあれば、中には10年近く関わり続けるケースもあります。

どのようなスパンの心理カウンセリングであっても、ゴール設定を最初にクライアントと行い、そこへ向かってともに進んでいくマラソンの伴走な役割を担うのが臨床心理士なのです。

臨床心理士もひとりの普通の人生を歩む人間です。

ですので、カウンセリング場面で自分自身の経験や感情に振り回されてしまうこともあります。

出来るだけそうならず、クライアントのペースをしっかりと守って心理カウンセリングが出来るよう、臨床心理士は教育分析という自身のカウンセリングに行ったり、ケースを先輩心理士に客観的に見てもらうスーパーバイズを受けたりしているのです。

そういった自己鍛錬も臨床心理士が心理カウンセリングを行う上で必要な仕事のひとつです。

心理教育

常に受け身な印象の臨床心理士ですが、時には心理教育といってクライアントに対してアドバイスを行う場合があります。

アルコール依存や薬物依存などの場合に割と行うことになる仕事です。

依存がどういう風に成り立っているものなのか、どういう経過をたどって治っていくのかなどを伝えます。

それ以外でも必要に応じて心理教育は取り入れられます。

心理教育というのは、相手が自らのことを論理的に知ることで、よりコントロールしやすくするという目的を持って行われる仕事です。

どういった時に心理教育を取り入れるのがよいかを見極め、実際に心理教育を行う、それも臨床心理士の仕事のひとつです。

またストレスマネジメントの話を研修で実施したりするなど予防的に心理教育を取り入れる時もあります。

人の話を聞くだけが仕事と思われがちですが、人前に立って教育的な関わりを行ったりすることも臨床心理士の仕事には入ってくるのです。

専門用語をわかりやすくかみ砕いて説明する力なども求められます。

こういった部分も年と共に経験を積んでいくうちに少しずつ養われる力のひとつです。

仕事の流れ

スクールカウンセラー

スクールカウンセラーは、県によって少し違いますが、多いのは6時間勤務の学校です。

10:00 出勤(たいてい週に1日ですので、日替わりで出勤する場所が変わります)。相談予約表をチェックし、継続のケースであれば過去のケース記録を見返す。

11:00 来室した生徒へのカウンセリング

12:00 お昼休憩 お昼休みに職員室へ降りてくる教師が多いため、出来るだけこの時間に情報交換

13:00 来室した保護者へのカウンセリング

14:00 長欠対策会議への出席

15:00 近隣小学校からの依頼により小学校へ出張

16:00 ケース記録を記載し、担任や養護教諭と情報交換、方針をたてる

17:00 退勤(保護者が夜しかダメという場合や、不登校児が放課後登校を希望している場合は残業もあります)

総合病院

総合病院の場合、多いのは8時間勤務です。

8:30 出勤。その日の予約を確認。カルテをチェックし、他職種が記載している情報を得る。

9:00 病棟へ上がり、順番に心理カウンセリングを行っていく。その都度カルテ記載や必要に応じて看護師との情報交換。

11:00 小児科外来からのカウンセリング希望への対応。カルテ記載や医者との情報交換。

12:00 お昼休憩

13:00 緩和ケアチーム会議への参加およびラウンド

15:30 再び病棟へあがり、心理カウンセリング

16:30 カルテ記載や研修の準備

17:15 退勤(院内研修などが夕方に入るため、そういった場合は残業となることもあります)

児童養護施設

児童養護施設は、昼間子どもたちが幼稚園や学校へ通っている場合が多いため、出勤が遅い場合が多いです。

11:00 出勤。その日の予約を確認。プレイルームの掃除や備品のチェック。保育士や栄養士と情報共有、日によっては会議

12:00 お昼休憩

13:00 児童相談所と情報共有

14:00 子どもの心理面接を順番で行う

16:00 空いた時間を使って子どもたちと公園へ行ったり庭で遊んだりする

17:00 食事を待つ間、勉強をみたり部屋で話をしたり

18:00 夕飯は子ども達と一緒に食べる

18:30 子どもの心理面接を順番で行う

20:00 ケース記録を書く

20:30 退勤(施設によっては夜勤なども入ってくる場合もあります)

臨床心理士の給料事情は?

臨床心理士は大学院を出ないと取得できない資格ではありますが、いまだ就業が安定していない職です。

早くて大学院卒業1年後に資格を得ることが出来るため、新卒の時は無資格のまま就業することになります。

非常勤職を掛け持ちして生活をたてている臨床心理士も、非常に多いです。

時給は1200円~5000円と幅が広く、色々な分野をかけ持つことで、たいていの臨床心理士は年収300万円~400万円程度の稼ぎとなります。

正規雇用でも概ねそのあたりの給与がボリュームゾーンとなります。

中には1000万円以上の高所得者もいますが、ほんの一握りです。

国家公務員や病院の正規雇用などであれば、最終的に800万円~1000万円程度の年収は見込めます。

ただしそういった高収入で安定した臨床心理士の職は非常に狭き門になっています。

臨床心理士のやりがいに感じること

臨床心理士はやりがいがあるから出来る仕事であると言われています。

臨床心理士のやりがいに感じることは、どういったことなのでしょうか?

立ち上がっていく姿を見られる

臨床心理士が一番やりがいを感じるのはクライアントが立ち上がっていく姿を見られた時です。

心が弱ってしまい、自分らしさを見失っていた人が、少しずつ元気を取り戻し、生き生きと人生を歩き出すまでの姿を見届けます。

長く関わってきたクライアントが、いよいよ臨床心理士から巣立っていこうとするとき、この仕事をしていて良かったと感じるのは、どの臨床心理士にも共通するやりがいポイントです。

貴重な出会いがたくさんある

臨床心理士の仕事は貴重な出会いがたくさんあります。

カウンセラーとクライアントとしての出会いですが、様々なことを話し合っていく関係です。

つまり非常に深く結びついた関係性となります。

そういった深く結びついた関係性を築けることが臨床心理士は他の職種の人よりもはるかに多い人生となります。

クライアントから学ぶことも多く、物事の感じ方の幅も広がります。

つまり臨床心理士自身の人生や人柄にも、仕事を通して少しずつ深みが出るのです。

自分自身が楽に生きる方法を知ることができる

臨床心理士は心理学に精通しています。

あるひとつの出来事に対して、どういう風に見れば楽に考えられるのかということを理論的に知っているのです。

つまり何かトラブルがあった時に、うまく立ち上がっていく方法を知っているということです。

またその経験が、同じようなことで躓いたクライアントを前にしたときに、必ず活かされます。

自分の経験が心理カウンセリングに生かされた時、やりがいを感じるのです。

心理アセスメントがあったことで、関係修復に役立った時

臨床心理士は色々な手法を使ってクライアントを心理アセスメントします。

例えば病院や学校において、そのアセスメントがもとになり、悪かった関係が良い方向へ転換することがあります。

どうしても好きになれなかった相手の行動の背景を知ることで、受け入れることが出来る、なんてことはよくあります。

自分がアセスメントしたことによって、緊迫していた関係が修復された時、臨床心理士として非常にやりがいを感じます。

「気持ちが楽になった」と言われる時

臨床心理士は心理カウンセリングで話を聞いていると時折クライアントから「話して気持ちが楽になった」と言われることがあります。

また研修で話した内容によって「気持ちが楽になった」と言ってもらえることもあります。

自分が行った行為によって誰かの気持ちが少し軽くなったということを知れた時、強くやりがいを感じます。

臨床心理士の仕事で大変なこと

臨床心理士はやりがいがとても感じられる仕事です。

とはいえ仕事ですので大変なこともそれなりにあります。

一人職場で孤独感を感じやすい

臨床心理士は、割と一人職場になることが多いです。

他の職種は大勢いて、わいわい楽しそう…なんて孤独感を感じる場面があったりもします。

今はどの分野においてもチームで動きますので、孤独感を感じることは減りました。

とはいえ、同じ職種で飲み会があってなんていう話を聞くと、「孤独だな…」と感じることもあります。

自分自身が商売道具となる

臨床心理士は、基本的に自分自身が商売道具です。

心理カウンセリングなどは相性が大切となります。

やはりどうしても相性が合わない場合もあります。

そういった時に、不用意に傷つけられるようなことを言われてしまったり、急に関係を切られたりする場合もあります。

そういった時に、臨床心理士はそれがどうして起こったことなのか、自らの言動や相手の言動などを考えながら振り返りをしていきます。

ただ、やはり生身の人間ですので、少なからず傷ついており、落ち込むなんていうことも稀にあります。

職が安定しない

臨床心理士は職が安定しません。

非常勤の掛け持ちも、多いです。

また半年~1年ごとの採用であったりするため、いつ首を切られるのかわからない状況が続きます。

年を重ねても就職活動を行わなければならなかったり、新しい職場になじまなければならなかったりと、職が不安定故にストレスが多いのも事実です。

まとめ

ベールに包まれているような臨床心理士の仕事、少し見えてきましたでしょうか?

想像していたよりも仕事内容が色々あったかもしれません。

また臨床心理士というと、いまだに相談室にこもってクライアントを待っているようなイメージが強いです。

でも実際は、相談室の外に出て他職種と連携していく対人スキルの高さが求められる仕事になってきているのです。

色々な人に興味があって、好奇心が強い人に向いている仕事です。

お給料事情が安定しづらいことが職のネックですが、これから少しずつ常勤職も増えていくと言われています。

やりがいもあって、職も安定するならねらい目の仕事だと言えると思います。


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