看護師免許を取得し、まず最初に就職する医療機関で最も多いのが地域の総合病院でしょう。
退院後の患者様の様子をご存じですか。
ここでは、入院治療を終えて在宅へ戻る患者様を対象とする、訪問看護について仕事内容など述べていきたいと思います。
訪問看護師を経験し、訪問看護師の役割、地域で病気や障がいと共に生活することなど、病院で働いている限り見えてこなかったことがたくさんあります。
訪問看護は、大変なこともありますが、やりがいもその倍あります。
訪問看護の魅力について少しでも知ってもらい、地域で活躍する看護師の方が増えることを願っています。
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訪問看護の仕事は大きく3個の役割に分けられる
訪問看護とは
訪問看護とは、看護師がご自宅に訪問して看護を実践するお仕事です。
対象となる方は、病院で入院治療をされ退院が決定しているが、1人暮らしの高齢者や病状管理に不安がある方、また、住み慣れた自宅で可能な限り最期を過ごしたいと望まれる終末期の方、難病や障がいを患い定期的な看護が必要な方など、多岐に渡ります。
現在は入院期間も短く、病状が安定すれば退院か転院を余儀なくされるため、その後の生活に不安を抱える方が増えています。
訪問看護の仕事内容
訪問看護の仕事内容は大きく分けて3個の役割に分けられます。
在宅での看護業務、他職種との連携、書類作成です。
詳しくは次項で述べていきたいと思います。
在宅での看護業務について
在宅での看護業務1:病状が安定しているか健康状態の観察をする
まずは、バイタルサインの測定と全身状態の観察をし、異常がないかの確認をします。
生活している中で気になる症状が出現していないか、出現していればどのくらいの程度や期間持続していたかなど、詳しい情報をうかがいます。
病院で入院されている患者様と違い、生活されている方は医療者の目が届かないため、訪問看護師が病状管理の大きな役割を果たします。
その他、食事や水分摂取量、排泄リズム、睡眠リズム、運動と休養のバランスなども普段と変わりなく過ごされているか確認します。
在宅での看護業務2:治療のための看護
訪問看護を必要とする方は、何らかの医療処置が必要な方です。
訪問看護師は、主治医の訪問看護師指示書に基づき看護を実践します。
内容は、病院で実践している看護と同じです。
服薬管理、褥瘡の処置・予防対策、血糖コントロール、人工肛門の管理や排便コントロール、経管栄養、痰吸引や気管カニューレ管理、吸入、ガーゼ交換、導尿やカテーテル管理、人工呼吸器管理、点滴、注射、採血、在宅酸素管理、看取りなどです。
在宅では、病院と異なり、看護を提供する環境が全て異なるため、創意工夫が必要となってきます。
在宅での看護業務3:主治医への報告と指示受け
在宅で生活する利用者に体調の変化や急変が起こった場合は、速やかに主治医に報告します。
各医療機関と連絡を取り、病状や訪問時の様子を伝え、主治医の指示を待ちます。
場合によっては、直ちに救急搬送が必要となることもあり、臨機応変に判断して行動することが重要です。
在宅での看護業務4:療養生活の介助・相談・助言
訪問時は、利用者や家族とコミュニケーションをとり、普段の生活上困ったことがないか確認をします。
内容は、主に食事・排泄・口腔ケア・保清・体位変換・車いす移乗などです。
自立している方ばかりではなく、家族の介護が必要な方も多いため、介護者が困っていないか、介護方法は適切かという確認もします。
必要によっては、家族への指導やアドバイスも行います。
また、生活環境が合っているか、福祉用具が適切に配置され利用されているかも確認します。
住み慣れた自宅で、より安全に快適に生活していただくために、常に療養生活の支援をすることも訪問看護の役割となります。
在宅での看護業務5:メンタルケア
訪問看護の対象者は、慢性疾患を患っていたり、癌や手術などにより大きな精神的ダメージを受けていたり、終末期にいたりと様々です。
病気と共に生活をしていくということは容易ではありません。
訪問看護では、相手の精神状態の把握にも努め、病気と共存していく生活を支援します。
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他職種との連携の業務について
他職種との連携の業務1:他職種とは
地域で生活する利用者の方を支援するにあたり、訪問看護はほんの一部分にしか過ぎません。
訪問介護・訪問入浴・訪問リハビリテーション・デイサービスやデイケア・ショートステイ・福祉用具など、介護保険法に基づいて様々なサービスがあります。
これらのサービスは自由に利用できるのではなく、担当のケアマネジャーがその方に必要なサービスを選定しプランを立てていきます。
その中でも、訪問看護を利用するケースは、医療的なケアが必要な方です。
そのため、通院先の主治医の指示があって始めて訪問看護が導入されることになります。
ひとりの利用者が地域で生活していく上で、その方が利用する全てのサービスに関わる人たちと情報交換を行い、支援していくことになります。
他職種との連携の業務2:他職種との連携の取り方
では、どのようにして他職種と情報交換して利用者を支援していくのでしょうか。
訪問看護の観点から述べたいと思います。
訪問看護では、利用者の健康状態、病状、主治医の治療方針を把握しています。
また、家庭での生活の様子などの情報も得ることができます。
これらの情報をもとに、生活上の注意点や普段と様子が違う時の対応方法などを、利用者に関わる人に伝えます。
その機会として、ケアマネジャーが定期的に開催する担当者会議があります。
この担当者会議は、主に利用者宅で開催され、関わる職種の方が集まるため情報共有の場となります。
書類作成の業務について
担当の看護師が必ずしなければならないこととして、訪問看護をするにあたっての訪問看護計画書の作成があります。
主治医の訪問看護師指示書とケアマネジャーが作成したケアプランをもとに作成します。
訪問看護計画書は日々の看護内容を文章化したものです。
状態の変化によってその都度見なおし、計画を修正していきます。
また、訪問看護計画書に対し、訪問看護報告書があります。
これは、文字通り状態の報告を文面にして主治医に提出します。
計画書と報告書は最低毎月1回発行し、随時変更が必要なときに発行します。
病院との仕事内容の違い
これまで、訪問看護について述べてきましたが、病院でおこなう看護との違いはわかりましたか。
入院されている患者様と異なり、対象者は比較的病状が安定しています。
そして、私達と同じく生活者として病気や障がいと共に生活している方々です。
病気の急性期を過ぎ、これから長く病気と付き合っていかなければならない状態におかれているため、常にコンプライアンスが良い状態を保てていない方が大半です。
生活状況への配慮もしながら看護指導をおこなうことは、病院での指導とは少し異なります。
相手の生活ペース(コンプライアンスが悪い状態も含め)を受け入れ、少しずつ長い目で付き合っていく必要があります。
また、病状の急変時は医療的な処置がすぐに行えない環境であることから、迅速な判断と対応が必要になってきます。
訪問看護では、医療機関や他職種との連携を取りながら、生活者である利用者を支援することが大切です。
訪問看護の仕事の良いところ
やりがいを感じるポイント
病院ではなく在宅で、訪問看護師として働くにあたってやりがいを感じるポイントは、生活者を支援するということです。
上記にも述べましたが、病気や障がいを患いながら地域で生活していくということは決して容易ではありません。
慢性疾患の方ですと、自覚症状がなくなると通院や薬の服用を中断してしまい、気が付いたら病状が進行・再発し再入院となる方がいます。
また、退院後の病状管理に不安を抱えながら、相談する人がおらず病院にかかるべきか悩みながら過ごされている方もいます。
終末期の方は、介護者(家族)も含めて、家で過ごしたいけれど介護に自信がない。
もし何かあったらどうしよう。
という不安から、やむを得ず入院という形で最期を迎えられる方もいます。
訪問看護師として働くようになって、様々な病気を患っている方が、不安と共に地域で生活されているということを目の当たりにしました。
そして、訪問看護師さんがついてくれているから安心。
と頼りにされることが多く、毎日とてもやりがいを感じています。
在宅で医療処置が行えると、入院治療をしないで自宅で家族と過ごすことができたり、通院回数が減ることで、家族やご本人の負担が減ります。
少しでも安心して毎日を過ごしていただけるように、医療的な観点から生活者と関わっていくということがやりがいを感じるポイントです。
面白いポイント
訪問看護師の面白いポイントは、病院とは全く環境が違うことです。
主治医の指示内容は同じですが、実践場所はそれぞれのご自宅になります。
病院には普通にあるような医療物品がなく、色々な物を代用していく必要があります。
例えば、点滴をするとなると、病院では支柱台や天井からぶら下がっている支柱を使用しますよね。
在宅では支柱台はありません。
そこで、ご自宅のハンガーに点滴パックを下げてカーテンレールや衣装掛けに吊したりします。
これはほんの一例に過ぎません。
そのご自宅、利用者や家族の生活スタイルに合わせて、より安全で快適な方法を模索しながら実践していきます。
その場その場に合った看護を日々実践していくことは、マニュアル通りにはいきません。
難しく聞こえるかも知れませんが、常に利用者の生活全体を考えて看護を実践していると自然に行動できるでしょう。
訪問看護の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと
訪問看護の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと1:介護保険法について
まずは、地域ケアがどのように行われているか介護保険の内容を把握する必要があります。
そして、訪問看護師の役割とは何かを明確にすることが大切です。
病院では医療中心であり治療が第一優先です。
在宅では、どんな重度の疾患を患っている方も、生活することが前提にあります。
訪問看護では、生活という1本の線上のほんの一部の関わりでしかありません。
ひとりの生活者を支援するしくみを理解しておく必要があります。
訪問看護の仕事をするにあたって覚えなければいけないこと2:他職種の役割、チームの一員であるということ
介護保険について理解したら、今度はひとりの生活者のケアに関わるチームを把握する必要があります。
それぞれの関係者がどのように関わっているのか、週に何回のサービスを利用しているのかなどを把握し、その方の生活全体をイメージしていきます。
そして、その中で自分の役割を明確化し、情報共有していきます。
看護を実践する時はひとりですが、チームで支援していることを忘れずに連携をとっていくことが大切です。
訪問看護の仕事はどんな人に向いている?
「訪問看護には興味があるけど、果たして自分に務まるのかな」などと不安に思っている方もいると思います。
仕事には向き不向きは必ずしもあるもの。
まずはどんな人に向いているかを紹介したいと思います。
ある程度一人で的確な判断ができ、それを表現できる人
訪問看護はご自宅に実際に出向いて行うサービスであるため、ほとんどの場合は病院勤務と違い、近くに同僚の看護師や医師などおらず、利用者とのやり取り、アセスメント、ケアの決定・実行、急変時の対処をすべて1人で行わなければなりません。
そのため、適切な判断力や看護ケアを提供できるだけの知識・技術とともに、自分だけでは判断しかねる場合でも、利用者の状態を的確に観察して、医師や同僚看護師、ケアマネージャー、他サービス提供者へ説明・相談できるだけの判断力・表現力が必要となります。
病院ではチームで看護している場合が多く、独断では判断ができないまたは表現できないことが多くありますので、自分で判断して、もっと責任を持って仕事がしてみたいと思う方には向いていると思います。
コミュニケーション能力の高い人
在宅の生活においては、訪問看護の支援だけで成り立っているものではありません。
もちろん、病院生活においても、看護師や医師以外にも多くの専門職が支えていますが、在宅の生活においてはそのような多職種の支援にかかわる専門職がその人に合った、その人らしいサービスを提供しなければなりません。
訪問看護師には、多職種との関わりが必要となり、コミュニケーション能力も求められる訳です。
医師との関係も同様です。
病棟の看護師であれば、顔がわかっている医師に細やかに報告すれば、そのたびに円滑に指示を受けることが可能ですが、訪問看護の場合には、医師が同席していることはほぼ皆無であり、顔も知らない医師とコミュニケーションをとらなければなりません。
加えて、在宅で過ごすことができる程度に病状も安定されている利用者が多いため、与えられている医師の指示は、具体的な細かい指示ではなく、おおまかな指示も多いため、自分自身で指示に沿った具体的な対処を自分なりに考えなければなりません。
その対処をその場にいない医師に電話などで状態を説明・表現する力も必要になります。
そのためには、その医師にあったコミュニケーション方法や指示の内容を的確に対応する能力も必要となってきます。
エビデンス重視の看護が嫌いな人
学生時代からそう学んでいるためしかたがないことだと思いますが、看護師は問題を抽出して、その問題に向かって解決する能力は高い人が多いですが、エビデンスとは別に患者の気持ちに沿って行う看護は苦手というかできない看護師が多いと思います。
在宅では、利用者が主体ですので、根拠がそうだとしても利用者の思いに沿って、生活の質を上げられる看護を考えていかなければなりません。
「自分たちはこう思ってるけど、医師の指示だから」と自分のやりたい看護が提供できなかった方には訪問看護はやりがいのある仕事になるかもしれません。
看護師としてのブランクがある人
結婚や出産、子育てを機に看護師を辞めた方で、家庭が落ち着いたので、再び看護師として働きたいという方は向いているというか、看護師として働きだす第一歩としておすすめしたいです。
施設やディサービスなどでは看護師として勤務したとしても、介護の要素が高く、看護師としては物足りなく感じますし、いきなり病院となると、若いスタッフや新しい医療器具、電子カルテの導入などとまどうことが多く、体力的にもきついかと思います。
決して訪問看護が楽という訳ではありませんが、職場によっては同年代だったり、同じようにブランクを経て訪問看護を始めたという人が多く勤めており、なにかと頼りになることもあると思います。
逆に訪問看護の仕事に向いていない人の特徴は?
次にこういう人はもしかしたら訪問看護に向いていないんじゃないかなと思うところを少し紹介したいと思います。
あくまで自分の意見なので必ずしもこうでなくてはいけないとは思わないでくださいということと、どれもやろうという意識さえあれば、しっかりと身につくことばかりだと思います。
経験が浅い若手の人
訪問看護師は10年以上の看護師経験がある方が多く働いています。
理由としては、訪問看護は基本1人で行わなければならず、新人だからと言って慣れるまではずっと2人で訪問するといったことは人件費や効率を考えても難しいと思いますし、病棟の新人のように研修のプログラムも組まれていない所も多いと思います。
やはり病院など3年くらい働き続けて、基礎的な疾患や看護技術を習得してから訪問看護に転職したほうが無難だと思います。
大規模なステーションや病院付属の訪問看護ステーションなどは、新人看護師からでも訪問看護師を育てるプログラムを組まれているところもあるそうなので、看護師経験が少ない方はそういう職場を探してみるといいかもしれません。
誰かに指示されないと動けない人
もちろん医師からの指示書はありますが、「血圧〇〇〇以上で薬剤投与」など病院でもらえる指示とは違って、「体調管理」などの包括的な指示が多いため、訪問した際に緊急性があるのか、様子観察でいいのかを判断するのは看護師の判断に委ねられることが多くなります。
もちろん判断した結果間違いであれば、自己責任ということになります。
処置はもちろんですが、利用者や家族から相談されたことは自分の判断で対応しなければなりません。
訪問が多いため、先輩や上司に会ったり、相談する機会も限られてしまうため、誰かに相談したい、人に言われないと動けないという方は難しいかと思います。
最先端の医療に携わりスキルを磨きたいと思っている人
大きな病院では医師が新しい治療方法に挑戦したり、医療機器メーカーや薬剤メーカーが新たな薬や技術の勉強会を開いたりと、最先端の医療に携わる機会が豊富にあります。
訪問看護は、一つ一つの規模が小さかったりすると時間の余裕が作れなったり、研修費用などが会社で捻出できなかったり、医療機器メーカーや薬剤メーカーが来ることも期待できないためにスキルアップを行うことが困難であります。
研修や実習、教育の充実を図っているステーションならば、この問題は解決できるかと思います。
看護師なんだから看護師の仕事しかしたくないと思っている人
訪問看護ステーションは事務員がいなかったり、1人など少人数でやっている所がほとんどです。
そのため、事務系の仕事も看護業務の間に取り組まなければなりません。
カルテ等の整理、介護報酬や診療報酬等の計算、ガーゼや包帯の管理・準備、報告書等の郵送手配など病院では事務員がやってくれていたこともある程度知っとかなければなりません。
「自分は看護師だからそんなことまでやってられない」と思う方は、病院で働いていた方が無難かと思います。
病院での患者ー看護師関係が抜けきらない人
病院の中と在宅では看護師の立場が異なります。
病院では患者=お客さんに近いですが、在宅では利用者=主役です。
病院では職員のほうが立場が上となり、病院のルールに沿って行動しなければなりませんが、在宅ではその立場が逆転して、訪問してくる看護師がお客さんに近い立ち位置になってしまいます。
そのため、「訪問させてもらっている」という心構えを持っていないと大きなクレームの対象となってしまいます。
訪問看護のクレームで多いのが、治療や看護ケアに対してのクレームではなくて、時間を守らない、使ったものを元に戻さない、断りもなく寝床に入ってくるなど、ごく一般的なマナーでのクレームが圧倒的に多いです。
クレームが発生すればケアマネジャーなどの耳に入り、「あそこのステーションは二度と使わない」となってしまい、経営に大きなダメージを与えてしまいます。
とはいえ、入職したときに知っていなければならないということではありません。
訪問に必要なマナーを身に着けようという気持ちがあれば身につくものです。
それが身につかない、マナーの大切さに気付かない人、または事業所は看護師として、ステーションとして向いていないといえます。
訪問看護の仕事で活かせる経験
続いて、訪問看護の仕事で活かせる経験について説明したいと思います。
もちろん看護師としての経験も大切ですが、訪問看護は医療の分野だけではなく、介護の分野も関わることになります。
また、訪問看護ステーションは経営としてかかわる業務も存在します。
そのために看護、介護以外の分野の知識や経験なども生かせることもあるので、ここで紹介したいと思います。
病院での看護師経験
訪問看護として働いている人の大部分が病院での看護師を経験しています。
基本的な知識や技術は病院での看護と訪問看護とでまったく変わりません。
しかしながら、病院では「循環器内科」とか「消火器内科」など疾患によって仕事内容も違いますし、求められる知識や技術もそのフィールドにあったものだけ持ち合わせていればなんとかなりますが、訪問看護はそうはいきません。
年齢層も0歳から100歳、110歳とどこまでもが対象者ですし、抱えている疾患も様々です。
そのため、「深く、狭く」というよりは「浅く、広く」といった様々な科や対象者を経験している方のほうが訪問看護は活躍できる場合もあります。
のちのちは訪問看護へと考えている方の中には、ICUで全身の観察・アセスメントの知識・技術を勉強したいと考えている方も多いと聞きます。
ケアマネージャー、介護福祉士、ホームヘルパーなどの福祉職
繰り返しになりますが、訪問看護は医療の分野だけではなく、介護の分野も関わることになります。
実際現場で働いている方の中でも多くの方がケアマネジャーの資格を持っています。
持っていないとできない訳ではありませんが、保険制度のことや介護の専門知識、サービスの種類などの知識を持っていることはとても便利となります。
介護福祉士やヘルパーは、訪問看護として働いているうちに連携を多くとる職種の1つとなります。
看護師が訪問しない日にはヘルパーに薬の管理をお願いしたり、状態を観察してもらったり、情報を頂いたりとお世話になることが多いです。
介護の分野で働いていたことがある人ですと、その人が、元来持っている強さ・力に注目して、それを引き出し、活用していくケース・マネジメント理論である「ストレングス・モデル」を理解している方が多いため、訪問看護に転職してもとまどいはないかと思います。
一般企業の営業職や事務職
意外だと思われるかもしれません。
特に中小の訪問看護ステーションに言えることですが、ケアマネジャーや病院のソーシャルワーカー、包括支援センターなど訪問看護のサービスまでつないでくれる職種の方に自分が所属しているステーションの存在を知ってもらうためにあいさつ回りやプロモーション活動を看護師自身が行わなければなりません。
どのようにアプローチするのかということも営業をこなしていた方ならきっと中心になって活動できるはずです。
また、事務員がいない訪問看護ステーションも多々あると思います。
その際には自分たちでエクセルなどで報酬計算をしたり、ワードを使って手紙を作ったりということもやらなきゃいけないのです。
実際に看護師でパソコンがうまく使えないって方は結構います。
私が働いている所も、パソコンに詳しくない方が多いため、パンフレット作りや報告書のひな型作り、勉強会の資料作りなどもしています。
訪問看護のやりがいはコレ!
上記で訪問看護のやりがいについて述べましたが、個人的には、特に在宅での終末期の看護にやりがいを感じています。
癌や不治の病におかされ、多くの人が、住み慣れた家で大切な家族に見守られながら最期を迎えたいと願っています。
しかし、自宅では治療ができなかったり、家族が自宅での介護に不安を感じ、入院生活を余儀なくされる方も多くいます。
訪問看護の導入があれば、在宅での症状コントロールや経口摂取が不十分な方への補液治療など、主治医に相談しながら安全・安楽に過ごしていただくことが可能となるケースが多くあります。
また、緊急時の対応ができる体制もありますので、病状によっては24時間体制で臨時訪問できます。
ご本人、家族、支援者がチームを組んで、自宅での療養生活がその人らしく過ごせるように支援します。
より安楽に過ごせるようチーム全体で支援し、生命を全うされた方の最期はあまり苦しい表情をされていません。
ご遺族も自宅で介護ができたという達成感を感じておられる方が多いです。
今後も自宅で終末期を過ごされる方は増加すると思います。
日々懸命に取り組んでいきたいと思っております。
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その後のキャリアについて
この仕事についた後のキャリアアップの道は?
特定の分野においての知識や能力を生かすという意味では、認定看護師・専門看護師の資格を取ることです。
訪問看護との関連分野として、認定看護師には「訪問看護」専門看護師には「在宅看護」がありますが、それ以外の分野もまったく関係ないということはありません。
資格を持っている看護師が在籍しているステーションだとわかれば、その分野の看護を必要としている利用者は安心できると思いますし、ステーションのアピール材料にもなります。
この資格の他に助産師や社会福祉士、ケアマネジャーなどの資格を取得することも自分が思い描いている看護をするうえでの手段のひとつだと思います。
管理者になる、自分で訪問看護ステーションを立ち上げて経営者になるということも選択肢のひとつだと思います。
管理者は訪問業務に加えて、関係各所の連絡調整や利用者の情報管理、ステーションスタッフの労務管理や統率、経営管理の役割もあります。
組織の中で働いている以上、自分の理想を掲げて、それを実現することは難しいですが、管理者もしくは経営者としてなら、そういった看護体制の提供やサービスの提供も可能かと思います。
他の仕事にもこの経験を活かせる?
訪問看護から病院へ就職した際には、退院ということを見据えて、疾患だけではなく、今後の生活という視点も見据えた看護ができると思いますし、ケアマネジャーの資格を取って働いた時には、介護と医療の両側面を見据えたケアプランの作成や難病を抱えている方に対しても、適切なケアプランを提案できたりします。
仕事ではないですけど、仮に自分の親が介護を必要とした際には、仕事で覚えた制度や知識などが役にたつかもしれません。
まとめ
以上、訪問看護について述べてきましたが、どのように感じられたでしょうか。
日頃の心構えとして、病気や障がいを抱えながら地域で生活する人々の支援をさせていただくという気持ちで、毎日訪問させていただいています。
医療従事者だけで看るのではなく、家族、ケアマネジャー、介護職員、福祉用具の業者様、地域の人々など、多くの人たちがひとりの生活者を支えています。
他職種と連携して、より安心して毎日を過ごしていただけることが何より大切です。
訪問看護は大変なこともありますが、その分やりがいも多い仕事です。