
精神科の看護師が向いている人の7個の特徴や必要なスキル・適性とは?
精神科の病院と言うと、皆さんはどのようなイメージをお持ちですか?
看護師の皆さんなら、必ず一度は実習で行っていると思います。
その実習で、精神科看護は「好き」と「嫌い」がはっきり分かれる分野ではないでしょうか。
私は実習での経験から「怖い」「大嫌い」というイメージを強くしたため、新卒で選んだ病院は精神科ではなく急性期の総合病院でした。
私と同じように、精神科は「怖い」「独特」などのイメージを持っている人も多いと思います。
そんな私が、小さなきっかけから精神科単科の病院に転職した経験を基に、精神科の転職について述べてみたいと思います。
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精神科以外の病院からの転職の場合、実際の現場では理想論が通用しないことが多々あります。
つまりカルチャーショックが大きいということです。
急性期の病院から転職した私も、最初の3ヶ月はこれに悩まされました。
職員の人数や患者さんへの対応の仕方、看護の一つ一つにおいて、今までの経験が通用しない場合が多々あります。
具体例をいくつか見てみましょう。
私の経験した病院の場合、急性期の総合病院の場合、7:1や10:1などを取得していることも多く、看護師の人数は多数確保されています。
しかし、精神科病院における看護基準は急性期でも10:1です。
精神一般で15:1、精神療養病棟だと30:1になり、更に高齢化社会に伴い、主に認知症の患者さんを専門的に受け入れる病棟も増えており、認知症治療病棟は20:1となったりもします(日勤帯の場合)。
更にその中で正看護師の比率は40%を満たせば良いとなることもあり、病棟の中に正看護師が師長と残り数人だけということもあります。
残りの職員は准看護師と看護補助者です。
もちろん、その何人かしかいない正看護師が毎日全員日勤をしているわけではありません。
つまり、日祝日や年末年始などは正看護師1人という日も普通にあります。
夜勤帯になると、看護師もしくは准看護師1名に看護補助者1名という人数で60人の患者さんを診ています。
どちらかが仮眠中は1人で病棟の中を看ることになります。
もちろん、仮眠中、つまり看護補助者のみの時間帯に何かあれば、起こされることもあります。
このため、なかなか新卒組は夜勤を任せられない、挑戦できないという現状もあります。
更に、一般病棟に比べて男性看護師が多いというのも特徴としてあります。
後に詳しく述べていきますが、暴力行為のあることも多い現場です。
相手が男性だった場合、年配の方であっても男性は男性です。
女性職員ではどうしようもない場合もあります。
そのため、極端な話ですが「そこに立っているだけで良いのでいてほしい」という程、男性職員は重宝されることもあります。
精神科看護の一番の仕事と言えば、患者さんへの対応、話を聞く、つまり「傾聴」です。
病院によっては、作業療法を充実させているところもあるかもしれません。
作業療法中も患者さんと接し、コミュニケーションをとることが必要となります。
妄想や幻視・幻聴のある患者さんも多くいらっしゃいます。
また、まとまりのない内容でこちらが了解しづらい場合も多々あります。
そして、暴力や暴言のある患者さんも当然いらっしゃいます。
暴力と言っても、引っ掻かれるといった一見目立ちにくいものから、ファイティングポーズをとっての殴り合い、というものも日常茶飯事です。
殴り合う相手は職員だったり、患者さん同士だったり様々です。
暴力は男性の患者さんだけだと思われるかもしれませんが、女性の患者さんもさすがに殴り合いを頻繁にされないものの引っ掻いたりといった暴力はやはり日常茶飯事です。
もしかしたら暴力行為が点滴をするより多い病棟もあるかもしれません。
そういう患者さんへの対応方法は、一般の患者さんの対応とは大きく変わるものだと思います。
こういう場面でも、カルチャーショックが大きいと思います。
上記でも述べたように、精神科での一番の看護と言えば傾聴です。
急性期病院では、当然中央配管が付いていて、SpO2の低下した患者様には中央配管から酸素を投与する…ということを普通に考えれば良いかもしれませんが、精神科の療養病棟には中央配管がない病棟もあるのではないでしょうか?
実際に私の勤務した病棟でも、中央配管の設置は1年前でした。
しかも6箇所のみです。
更に、救急カートは病院に一つしかありません。
他の病棟は未だに中央配管がないところもあります。
このように医療器具はもちろんですが、採血や点滴などの医療行為も随分と少なくなります。
医師によるところも非常に大きいとは思いますが、採血なんて1週間に1人いれば良い方という病棟もあるのではないでしょうか。
点滴は、1ヶ月間誰にもしてないということも多々あります。
では、精神科では何をしているのでしょうか。
先に述べた傾聴の他、セルフケア不足に対する援助、確実な与薬、特に排便の管理が重要な看護となります。
更には、精神面はもちろんですが、身体面での異常の早期発見も重要な看護の一つです。
「他の診療科での看護観と、精神科ならではの看護観は相当違っている」ということを念頭に置くことが一番かと思います。
上記で述べたように、最初は今までの診療科での経験とは違うものが多くカルチャーショックを受けます。
しかしそれを乗り越えることができると、精神科看護の奥の深さが見えてくると思います。
一人一人の看護観がとても重要になってくると思われます。
看護観を再認識するために必要な情報を、いくつか挙げておきます。
職員の人数が少ないので、協力して今日の仕事を終わらせよう、という意識が自然と湧いてくるものです。
職員の人数が少ないと、噂がすぐに広まるなどのデメリットもありますが、この辺は人それぞれ好みの問題の範疇かと思います。
先にも述べたように、精神科の患者さんへの対応は一般の患者さんへの対応とは大きく異なります。
実習などで先入観を持っている方がいると、どうしても余計に力が入る部分もあると思います。
妄想や幻覚の内容を訴える方も沢山いらっしゃいます。
そのような方には肯定も否定もしない、暴力をする患者さんの真正面に位置してはいけない、など精神科特有の接し方が多々あります。
やはり、殴り合いをするのを初めて見た時は、足が震えました。
何せ殴り合いは小学校で男子同士が殴り合ったのを見たのが最後のような状態でした。
それでも、看護師として何かしないといけないのかな、などとも思いました。
このようなジレンマもあり、慣れるまでは時間がかかったと思います。
慣れることができるかどうかが転職を成功させることができる一つのポイントではないかと思います。
慣れとは恐ろしいもので、慣れてくると男性同士の殴り合いでも引き離しに行くことができるようになります。
もっと言うと「この人、手が出そうだな」というポイントが徐々に分かってくるようになるので、暴力行為が起こる前に介入することができるようになります。
精神科での実際の看護について、コミュニケーションも大切です。
更に、セルフケアに対する援助も大切な看護と言えます。
摂食や清潔面、排泄面など全ての項目で必須となってきます。
摂食においては、ただ食欲がないだけではなく、食事を拒否する、ということもあります。
統合失調症で陰性症状が強い場合には、経管栄養の援助も必要になってきます。
また、排泄面で排泄の介助はもちろんですが、異所排泄も大きな問題となってきます。
排便管理については、どうしても精神疾患患者さんは便秘になりやすく、更にはイレウスになりやすいのも特徴です。
患者さん一人一人「今日で何日排便がない」ということをしっかりと把握し、便秘傾向であればそれぞれ指示に従って処置を行わなければなりません。
脳外科や神経内科では別ですが、内科病棟などに比べると痙攣に出くわす場面も多いかもしれません。
てんかん発作です。
痙攣時の看護も必要です。
それでも大切なことは、精神的な部分でもそうですが、特に身体的な部分での異常の早期発見だと私は思います。
最近では高齢化社会ということもあって、認知症の専門病棟を設置しているところも多いです。
高齢者ですから、元々の基礎疾患をお持ちの患者さんが多数いらっしゃいます。
それらについても、新たな疾患についても早期発見が必要です。
精神科の患者さんも同様ですが、自覚症状が出にくい、自覚症状を上手く表現することができないなどのため、
「あれ?いつもはこの時間、テレビを見ているのに、最近寝てることが多いかな?」
「最近、食事を残すことが多い」
「最近、少しふらついていることがある?」
「最近、おしっこの出が悪い?」
など、些細なことでも見逃さず、職員全員で情報共有しながらアセスメントし、必要時は医師に報告することが必要となってきます。
こういう面において、アセスメント能力は元々の経験が重要になってきますね。
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患者さんの対応について、暴力や暴言などがあっても「病気がこうさせている」と聞き流せるタフさが必要になってくると思います。
このような行為が予め予測されているため、精神科には「危険手当」がついている病院も多々あります。
様々な背景の看護師がいる中でも、精神科看護が初めての看護師は皆新人です。
今までの経験がものを言いません。
日々勉強、日々精進のつもりで看護を行っていく心構えが必要です。
精神科の病院の場合、資格を取るために学校に通いながら働いている、という人も多くいます。
資格を取ることで年収が上がるからです。
専門看護師では精神看護、認定看護師では皮膚・排泄ケア、感染管理、摂食・嚥下障害看護、認知症看護などは精神科では有益であると思います。
こちらは看護補助者の年収を上げるためですが、一定の期間就労経験があると受験資格が与えられますので、そこで国家試験を受験し合格すれば翌年度からは介護福祉士としての勤務となり基本給が上がります。
こちらの場合も多々見受けられます。
それぞれの病院で雇用形態などは違ってくるとは思いますが、専門学校に通いながら資格取得を目指している場合、学校に通っている間、特に実習期間中は働ける日数が限られるため一時的に月収は減りますが、合格すれば基本給が上がります。
勤務している病院の奨学金制度などを活用しながら、上手にやりくりしている人も沢山います。
また、専門学校に通わず、通信教育などを上手に活用して学習し、正看護師の国家試験に合格するパターンもあります。
こちらは基本的には学校に通わないので、年収はあまり変わりません。
夜勤も月に4回程こなしながら勉強されている方もいらっしゃいます。
基本的には自宅学習のため傾向などをつかみにくく大変な道だとは思いますが、こちらも合格すれば基本給が上がります。
正看護師になることによって管理職への道も広がりますので、更なる年収アップに繋がる可能性もあります。
精神科の病院の場合、そもそも時間外労働が少ないことが多いです。
「時間外労働が、平均して年に30分間しかない!」ということを売りにしている病院もあります。
時間外労働が少ないということは、ライフワークバランスがとりやすいということです。
早く帰って子育てをしたい、という主婦には最適の現場だと思います。
実際、子供がいる主婦が働いていることも多いです。
逆に精神科の病院で時間外が多い場合は、何らかの理由で人手不足が深刻だということなので、避ける方が良いかもしれません。
精神科の病院には、そこを選ぶだけあってコミュニケーションに長けている人が沢山います。
そのため人間関係が良好なところが多いのですが、やはり働く上では大事なポイントかと思います。
また精神科は、一般の患者さんとは違い独特のコミュニケーションを必要とします。
このように、コミュニケーションの取り方は看護師としての経験というよりは人生経験の豊かさの方が大切だな、と日々感じています。
一人一人のコミュニケーションの取り方はとても勉強になります。
働いている職員に現在進行形で子育てをしている人、子育てを経験した人が多数いると、例えば子供の急な発熱などで早退、もしくは休まないといけない場合「良いよ、行っておいで」という雰囲気があります。
お互いに助け合おうという雰囲気がある職場は、やはり働きやすいですよね。
そう言える雰囲気はやはり、上記で述べた「時間外が少ない」こととも関連するとは思います。
常に残業しなければならない職場では、誰かの早退や欠勤は他の人の負担が更に増えることに繋がるので、「行っておいで」と気軽に言える程心にゆとりがないのです。
精神科に限らず、現在では様々な働き方があります。
正職員やパートなどがあります。
また雇用形態は同じ正職員でも、平日日勤のみ、夜勤専従など働き方も様々です。
総合病院の中の精神科から精神科単科の病院、その中でも急性期と慢性期に分けられます。
他にはクリニックや精神訪問看護ステーションもあります。
精神科単科の病院では、危険手当などの特殊な手当も見られます。
給与を確認する際、手当ての確認も必要になります。
精神科単科の病院で特に長い歴史がある場合、僻地に建てられている場合もあります。
通勤可能なエリアかどうかの確認も必要です。
このように、精神科というのは一般の病院とは少し特殊な部分があります。
転職を成功させるには、一人一人の看護観の再認識がとても大切だと実感しています。
もし、実習の時に「もう二度と嫌だ」と感じた方がいれば、一度その偏見を横に置いておいて、再度考えてみてください。
合う、合わないが大きく分かれることもあるとは思いますが、候補に挙げてみると意外とご自分に合うかもしれませんよ!
皆さんの転職が上手くいくことを願っています。
~自分にはどの看護師の仕事が向いているか?~
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