人手不足が社会問題化している介護業界の中でも、訪問介護の仕事はとにかく求人を出してもなかなか応募が無く、困っている事業所は多くあります。

仕事内容が大変というイメージがあるこの訪問介護、初任者研修(ヘルパー2級)以上の資格がいる事もあり、敬遠されるようです。

ただ、このヘルパーの仕事は、何十年と長く続けている方が多いのも事実。

私も経験しましたが、訪問介護でしか味わえない醍醐味というのは確かに存在します。

その訪問介護の仕事内容を詳しく解説していきましょう。

訪問介護の仕事は大きく3個の役割に分けられる

訪問介護の仕事の役割1:身体介護

文字通り体に触る介護です。

体が不自由な方のできない所を介助します。

在宅は施設と違い、寝たきりの人や重度の介助が必要という方はそう多くはありません。

今私が働いているケアマネージャーの利用者は50人ほどいらっしゃいますが、その中で完全に寝たきりの方は二人しかいません。

ただ、それ以外にも要所要所で身体介護が必要な方というのはおられます。

その業務内容については後ほどご説明致します。

訪問介護の仕事の役割2:生活援助

家事全般の事を指します。

掃除、調理、買い物、洗濯など一般的な家事の他、お薬を薬局に取りに行くなど様々な仕事があります。

簡単そうで意外と制約が多いこの役割も、後ほど詳しくお伝え致します。

訪問介護の仕事の役割3:サービス提供責任者

上記は仕事内容、こちらは役職になりますので少し趣旨が違いますが、訪問介護の仕事をする上でこのポジションについては、必ず理解しておく必要があります。

こちらも後に詳しくお話します。

身体介護の5個の業務

身体介護業務1:排泄介助

一言に排泄介助と言っても、様々な介助の方法があります。

利用者に合わせた介助はもちろん、訪問介護で大切なのは、そのお宅の状況ややり方に合わせる事。

施設であれば、おむつ交換のしやすい様にベッドの位置を変える事も可能ですし、トイレも完全にバリアフリーでしっかり手すりがあり、広い環境で行えますが、在宅の場合はそうもいきません。

交換したオムツ類の捨て方まできちんと把握しておく必要があります。

自分でトイレ動作は出来るけれども誘導しなくてはならない方、誘導しなくてもトイレにも行けるけれども、失禁があり汚染パッドや紙パンツを交換しなくてはならない方も、身体介護での排泄介助になります。

ベッド上おむつ交換も含め、排泄に関する事は全てこの排泄介助に含まれます。

身体介護業務2:食事介助

食事を提供し、自分で食べる事が出来ない方に行う介助です。

こちらも介助方法は様々。

自分で食べる事は出来るけれども、かき込んでしまって喉を詰める危険のある方を横で見守ったり、「ゆっくりと食べて下さい」と声かけを行う、逆に手が止まってしまう方にその都度促しを行う、こちらも立派な食事介助です。

利用者の状況によっては、食事介助は誤嚥など事故に繋がりやすいので、利用者の飲み込み具合や咀嚼がどの程度できるかをきちんと把握して行わなくてはいけません。

身体介護業務3:身体保清

体を清潔にする介助です。

入浴や手浴・足浴、清拭の他、陰部洗浄も身体介護にあたります。

入浴の場合は、施設やデイサービスの様に整った環境で行えるとは限らず、物品が乏しかったり手すりが少ない状況で介助を行う事もありますので、転倒などの事故には十分注意しましょう。

もちろん、ヒートショック等も一般家庭の方が危険性は高いです。

入浴に至るまでの環境整備も注意して行わなくてはいけません。

訪問介護での入浴は限界もありますので、椅子等の物品や手すりの不足、これ以上は家庭では無理なのでデイサービス等を利用してはどうかなど、気が付いた事があればきちんと上司に報告し、ケアマネに相談してもらいましょう。

身体介護業務4:移動介助

車椅子を押す、手を引いたり体を支えたりする介助の他、転倒しない様に見守る事も身体介護の移動介助に含まれます。

高齢者が転倒すればその後の生活に大きな影響を与える事もありますし、家の中では皆さん油断して歩きがちですので、普段しっかりされている利用者の場合でも、歩いている時は注意して見ておきましょう。

身体介護業務5:見守り

上記の様な身体介護だけではなく、生活援助と思われる様な仕事内容でも「常時横に付き添い、いつでも手が出せる状況での見守り」というのは、身体介護にあたります。

例えば、認知症があるけれども、隣で逐一声掛けや見守りを行えば調理や掃除ができる方の場合、その見守りも立派な身体介護になります。

この時ヘルパーも調理や掃除をしながら時々声を掛けるとか様子を見るとかではなく、ヘルパーは見守りのみを行っている場合が算定できますので、そのあたりはご注意下さい。

認知症の方の場合、この見守りさえ行えば、家事が出来る人は沢山います。

残存能力を生かす自立支援の意味でも、出来る事はして頂きましょう。

生活援助の5個の業務

生活援助業務1:掃除

訪問介護の依頼で最も多いのが掃除です。

比較的身の回りの事は出来る方でも、肩や腰が悪くしゃがむ事が出来ないので、お風呂やトイレの掃除を頼みたいという方は非常に多いです。

生活援助の場合、同居家族がいる場合は色々と制約がありますが、特に掃除に関しては、利用者本人が使う所しか掃除が出来ないと定められていますので、頼まれたからといってケアプランに無い場所を掃除する事は認められていません。

生活援助業務2:洗濯

洗濯に関しても、利用者以外の物を行う事は認められていません。

こちらも、出来る事は利用者に行ってもらうというのが基本。

洗濯物を干す事は出来ないけれども回しておく事はできる、取り入れは出来ないけれども畳む事は出来る方も多いですので、出来ない所だけ介助を行います。

生活援助業務3:調理

利用者が食べやすい形態に配慮して調理を行います。

糖尿病や腎臓、心臓などが悪い方に関しては、予め制限が無いか必ず確認しておきましょう。

生活援助業務4:買い物

利用者が買って来て欲しい物をメモしておき、それを買いに行くパターンと、ヘルパーが必要なものを見繕って購入してくるパターン、色々ありますが、ここで気をつけないといけないのがお金の管理。

必ずレシートをもらって、預かったお金、使ったお金、お釣りを利用者に確認してもらいましょう。

それが難しい方に関しては、買い物ノートなどを作成し、きちんと収支をつけておきます。

訪問介護ではお金に関するトラブルが非常に多いので、自分の身を守る為に、全ての記録を残しておく必要があります。

生活援助業務5:ゴミ出し

意外と需要は多いのですが、ゴミを出すには朝にヘルパーが入らなくてはならない事も多いですし、分別によっては週に何度もゴミを出さなくてはいけない事もあります。

訪問介護でフォローしきれない場合は、地域のインフォーマルサービスで家までゴミを取りに来てくれる事もありますので、難しければケアマネに相談してみましょう。

サービス提供責任者の5個の業務

サービス提供責任者の業務1:ヘルパーの指導

登録ヘルパー等、他のヘルパーの指導を行う事が、サービス提供責任者の最も重要で大変な業務です。

このヘルパーは掃除が得意、調理が得意、身体介護はやりたくない、逆に身体メインで入りたい等様々な特性がありますので、きちんと考えて指導しなくてはいけません。

サービス提供責任者の業務2:シフト管理

管理者が行う事もありますが、シフト管理はサービス提供責任者が行う事業所も多いです。

シフトが出来ればそれを各ヘルパーに伝えないといけないですし、たくさんサービスがあれば上手く人員を組み合わせてシフトを作らないといけませんので、こちらもなかなか大変な作業です。

サービス提供責任者の業務3:ケアマネージャー、他職種との連携

サービス担当者会議に出席し、ケアマネや他事業所に利用者の情報を伝えたり、要望やサービスの種別を決定します。

会議以外でも、何かある度にケアマネや他の事業所に情報提供を行う、逆に情報をもらうなど、常に事業所の代表として連携を図ります。

サービス提供責任者の業務4:書類作成

訪問介護計画書やサービス手順書等、訪問介護の仕事に必要な書類はたくさんあります。

それを作成するのもサービス提供責任者の業務です。

多くの書類は、利用者にサインと印鑑をもらい、利用者、ケアマネに交付しなくてはなりませんので、作成だけではなくその後の交付や管理も大切な仕事です。

サービス提供責任者の業務5:役所とのやり取り

訪問介護の仕事は、介護職の中でも特にサービス内容に制約が多く、慎重に行わなくてはなりません。

もちろんサービス内容はケアマネがきちんと決めるのですが、それでも事業所としても役所に問い合わせをする機会は多くあります。

介護保険以外の障害のサービスの場合は、事業所が直接役所とやり取りする事も多く、これもサービス提供責任者が行います。

障害福祉サービスとの仕事内容の違い

上記で述べたほとんどの業務は、介護保険での内容になります。

障害福祉サービスですと、介護保険と同じ様な居宅介護の他、移動支援や同行援護など、必要な資格も書類も変わってくるサービスがあります。

介護保険と障害福祉サービスの両方を行っている訪問介護事業所は多くありますので、もしそういった所で働くとなれば、障害の方での仕事もあるかもしれません。

その辺りを少し頭に入れておくと良いかと思います。

訪問介護の仕事の良いところ

やりがいを感じるポイント

訪問介護という制度があるからこそ、在宅で生活出来る高齢者は沢山いらっしゃいます。

ただただ大変というイメージがあるこの仕事のやりがいを、経験した者の意見としていくつか挙げさせて頂きます。

家事能力が生かせる

訪問介護で需要が多いのは、身体介護よりも生活援助です。

家に来て掃除や洗濯、買い物をしてくれる人さえいれば、元気で在宅生活を送る事が出来る人は非常に多く、国が思っている以上に生活援助の必要性は高いです。

ここで活躍するのがやはり主婦経験者の皆さん。

家で行ってきた家事能力が生かせる仕事は、他にそうはありません。

専業主婦が長くて資格だけ持っているという方こそ、その能力を生かして働く事の出来る仕事です。

一対一でサービスができる

基本的に一人で訪問する訪問介護の仕事は、その利用者一人の為に時間を取り、しっかりと向き合ってサービスを行います。

他の介護職ではそうはいきませんので、利用者の状態の変化にヘルパーが気付き、家族やケアマネが報告を受けるという事は沢山あります。

私達ケアマネにとっても、ヘルパーは情報をくれる人として非常に大切な存在です。

効率よく働けば稼ぐ事ができる

訪問介護で登録ヘルパーという働き方を選択し、いくつかの事業所に登録すれば、かなり効率良く稼ぐ事ができます。

時給が高くなる身体介護を主に仕事を希望し、加算の付く早朝、夜間に働けばさらに時給が上がります。

本気で稼ぐ為に事業所を3つ4つ登録しているヘルパーは少なくなく、空き時間を埋めるようにサービスを組めば、一日でかなりの額になります。

登録ヘルパーは働いた分がきちんと収入に反映されるので、非常にやりがいのある勤務体系といえます。

面白いポイント

私が訪問介護の仕事を経験したり、今ケアマネの立場から訪問介護に携わる様になり、こういうところがこの仕事の面白い所だなあと思うポイントがいくつかあります。

各家庭のルールを知る事ができる

これは本当に「郷に入れば郷に従え」ではないですが、全ての家庭にそれなりのやり方というのが存在し、それを見る事が出来るのは本当に面白いです。

掃除や洗濯等、自分ではこうと思っていた事と全く違うやり方を指導される事は多々あります。

それが勉強になる事も。

特に調理の場合、依頼を受けて行う事も多いのですが、「これとこれを組み合わせるのか」「こんな調味料があるのか」等、目から鱗な出来事は沢山あります。

長い人生を積み重ねてきた中で培われたルール、一概に否定せず、出来る所まで今まで通りに行う、そういったこちらの歩み寄りは大切だと思います。

ゆっくりと話ができる

やりがいの部分でも書きましたが、一人に対してしっかりとサービスを行えますので、ゆっくり話をする事も可能です。

サービスに関する事以外、例えば生活歴や考え方、家族の事等、ヘルパーには心を許して沢山話をしてくれる利用者は多いもの。

私達ケアマネよりもヘルパーの方が利用者の事を沢山知っていて、羨ましい時もあるほどです。

いつまでも働く事ができる

訪問介護のヘルパーは何十年と続けている人も多く、60代70代がとても元気にサービスに出ています。

定年が無く、体が動く限り働く事が出来ますし、年を重ねているからこそ気付く部分も多いので、いくつになっても皆さん生き生きとヘルパーをされています。

まとめ

訪問介護の仕事内容や業務について、簡単ではありますがまとめさせて頂きました。

募集を掛けてもなかなか応募がないと事業所が嘆くほどの人手不足の業界ですが、とても良い仕事です。

ぜひ参考にして頂き、働いてみてほしいなと思います。