女性の社会進出が進むと共に、晩婚化、晩妊化が進み、少子化に拍車がかかっている現代。

同時にハイリスク妊娠も増加しています。

世の中に情報があふれたことで、妊娠や出産、育児も多様化しています。

助産師はどんなお産な家族であっても、赤ちゃんとお母さん、その家族が幸せになることを願っています。

ここでは様々なお母さんと赤ちゃん、家族の貴重な瞬間である妊娠・出産・育児を支え、サポートする助産師だからこそ、感じることのできるやりがいや嬉しかったこと、助産師の仕事内容や向き不向きを、現役助産師が紹介します。

「助産師」の仕事が自分に向いているか診断したい人はこちら →

助産師の仕事はどんな仕事?

助産師とは「助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うこと」と保健師助産師看護師法で定められています。

じょく婦とは、産後のお母さんのことです。

難しいことを言いましたが、つまりは

  • 妊婦にお産の徴候が現れてから、分娩が終了するまでの間、産婦の身近で世話をすること
  • 分娩に付属する処置を行うこと
  • 妊婦や産後のお母さん、赤ちゃんの健康を管理すること
  • 妊婦や産後のお母さんに、必要な指導とカウンセリングを行うこと

が挙げられます。

助産師は女性のプロフェッショナルとして、女性の一生に専門的な知識を持ちます。

子どもを妊娠出産する期間だけでなく、その前後の思春期や更年期というホルモン状態が不安定な時期があります。

また女性にはライフイベントを通して、性と生殖に関わる特有の健康問題や社会的問題があります。

様々な問題に取り組み、女性の健康を保持・増進させる役割を持つのが助産師です。

助産師仕の仕事の具体的な内容とは?

母子業務

産後のお母さんと赤ちゃんの健康管理

産後のお母さんの体調は変化しやすい時期にあります。

分娩による出血が増えてはいないか、子宮の戻りは順調か、傷の治りはよいか、疲れは溜まっていないか、排泄は順調か、ご飯は食べられているか、など順調に妊娠前の体に戻っているかを、毎日確認します。

赤ちゃんの体の変化は更に大きい。

それが故にいつ異常が起こってもおかしくありません。

お母さんのお腹のなかでは、全てをお母さんにまかなってもらっていた生活でした。

しかし産まれた瞬間から、自分で呼吸をし、栄養をとり、排泄をしていかなければなりません。

赤ちゃんの体は色々な機能が未熟です。

赤ちゃんが健康で元気かどうかを毎日確認します。

具体的には、お母さんと赤ちゃんの全身観察を毎日します。

授乳支援

妊娠前後の生活で大きく変わるのは、赤ちゃんの授乳の時間ができることです。

ご存じない方も多いと思いますが、産まれたばかりの赤ちゃんは、1日に8~10回もおっぱいを飲みます。

授乳の方法も赤ちゃんとお母さんによって様々です。

授乳は

  • お母さんのお胸の形
  • どのくらいおっぱいが分泌するか
  • 赤ちゃんのやる気
  • 赤ちゃんがうまく飲めるか、ちょっぴりへたっぴか
  • 赤ちゃんの体重

などなど、様々なことに影響を受けます。

一言に授乳と言っても、お母さんや家族の希望、生活スタイルも様々です。

「できるだけ母乳で育てたい。可能なら母乳だけで、育てたいな。」という人と「そんなにこだわらない。母乳は出る分だけあげて、あとはミルクでもいいかな。」という人と「母乳とミルクの混合で行きたい。なるべく早く仕事に復帰したいから、哺乳瓶にも慣れてくれないと困るな。」という人では、授乳の方法は全く異なります。

その人、その家族にあった方法を一緒に探します。

退院までにはある程度お母さんが自分で判断して授乳できるように、退院後も困らないように、授乳のお手伝いをする仕事です。

育児技術獲得支援

特に初産の人にとって、育児の全てが初めて。

どうやったらいいのか分からない、うまくできないのは当然です。

近年は核家族化が進み、自分の近くに赤ちゃんや小さい子がいて、お世話をするという機会は減っています。

医療や保育の仕事に就いているという人を除けば、ほとんどが初心者。

おむつ交換、抱っこ、沐浴(赤ちゃんのお風呂)の方法、げっぷのさせ方、あやし方など、赤ちゃんを育てる上で必要な育児技術をお伝えし、できるようになるまでサポートします。

退院後の生活についてのお話

入院している間は、いつでもスタッフがいて、分からないことがあれば訊くことができますが、退院後はそうはいきません。

近くに子育て経験のある人がいれば心強いですが、育児はその家庭で様々なもの。

また医療者が常にいる訳ではありません。

なにか異常が起こったときに、それを異常だと察知し、対策を取るか、病院に電話をしてもらわなければいけません。

退院後もお母さんが困らないように、退院後の生活についてのお話しをします。

  • 産後のお母さんと赤ちゃんの体の変化について
  • 体の異常と、その時の対処法について
  • こんなときは必ず病院に電話してほしいタイミング
  • 退院後のサポートについて相談にのる
  • お家の環境は整っているか相談にのる

などが具体的な内容です。

メンタル面の支援

妊娠中もメンタルは崩れやすいですが、産後は更に崩れやすくなります。

妊娠をしていない女性でも、生理の前にイライラしたり暴飲暴食になったり眠くなったりとしんどい。

これらは全てホルモンのせいですが、産後のお母さんのホルモンは、さらに変動が激しいものです。

それに加えて慣れない育児、睡眠不足の日々、言うことも聞かないし何を求めているかも分からない赤ちゃんを抱えての生活。

メンタルが下がるのは当たり前です。

初めての育児だからこそ、うまくできない自分を責めてしまったり、手伝ってくれない夫にイライラしたり。

そんな時期だからこそ、助産師が相談にのり、一緒に解決策を考えます。

よくマタニティブルーというのを聞くと思います。

これは産後に誰もが起こりうる、精神的な変化ですが、これが悪化すると「産後うつ」になります。

産後うつは病気ですので、治療が必要になります。

産後うつにならないためにも、産後うつになりそうなとき、なったときに、お母さん自身がSOSを出せるように、お母さんに寄り添い、相談にのり、お母さんの味方になる仕事です。

分娩の介助

助産師は文字通り「お産 を 助ける」人ですから、助産師の仕事の中でも一番専門的なのが、分娩の介助です。

助産師は分娩において、医師と同じように裁量を持ち、診断を下し、自身の判断でお産が安全安楽に終了するよう、処置やケアをします。

分娩の介助と言っても、赤ちゃんが産まれる瞬間だけ介助するのではありません。

お産が始まって、赤ちゃんが産まれ、お母さんと赤ちゃんの状態が安定するまでの間、助産師は責任を持ちます。

陣痛が始まって、痛みに耐えている間。

破水をしてから、陣痛が始まるまでの間。

食事や環境を整え、安全安楽なお産の妨げになるものを排除し、時にはお母さんを導きお母さんと赤ちゃん、その家族らしいお産になるように、お手伝いをする仕事です。

お母さんと赤ちゃんに寄り添うケア

助産師は赤ちゃんが生まれる瞬間だけでなく、陣痛に耐えている時間も助産師は産婦さんに寄り添いケアを行います。

  • 辛い陣痛の間、休息を取れるよう睡眠や環境を整える
  • 食事や水分を調整する
  • 家族が全員で分娩を乗り越えられるために、家族の力を引き出す
  • お産の進行について予測し説明する
  • 呼吸法やマッサージなどを伝え、陣痛の痛みを軽減するケアをする

産婦さんの傍にいることができる助産師だからこそ、できることです。

診断と処置

産師は安全に分娩を終了できるように、診断を下し、進行を予測します。

そのために

  • 内診や産婦の様子から分娩の進行を図る
  • 赤ちゃんの心音と陣痛を測るモニターを装着する
  • 安全に出産を迎えられるように部屋や物品を準備する
  • 赤ちゃんが生まれる瞬間に安全であるように介助する
  • 赤ちゃんが生まれた後、へその緒を切り、胎盤を出す
  • 胎盤が出た後、赤ちゃんと産婦さんの状態が安定するように処置をする

外来業務

妊婦健診

産科の外来で一番大きな仕事が妊婦健診です。

通常の妊婦健診は医師が主体で行います。

主な業務は

  • 妊婦のお腹回りや子宮の大きさを測る
  • 医師の診察の手伝い
  • 出産が近くなった妊婦に、陣痛と赤ちゃんの心音を見るモニターをつける

などですが、更に重要な仕事が

  • 妊婦の身体精神的な不安や苦痛がないか話を聞く
  • 妊娠生活や分娩、入院に関しての説明

の2つです。

妊婦のライフスタイルに合わせてアドバイスをしたり、お産が始まった時にどう動いてほしいかなどを説明します。

最近では医師ではなく助産師が妊婦健診を行う「助産師外来」もできています。

2週間健診や1ヵ月健診

赤ちゃんが生まれ、お母さんと赤ちゃんが退院してから、2週間や1か月で順調な経過を辿っているかの健診を行います。

そのときにもアンケートを行い、身体だけでなく精神的にも順調であるか、困っていることや心配なことはないか、を確認します。

分娩の始まりも外来から

普段地域で過ごしているお母さんが、陣痛や破水を感じたとき、まずすることは病院に連絡し、受診をすることです。

連絡先や入院の経路は施設や時間帯によって異なりますが、外来がやっている時間帯(平日の日中)は、まず外来を受診し、入院が必要と判断されれば病棟に行くというのが一般的です。

陣痛かもしれない、破水かもしれないという電話を妊婦さんから受け、受診すべきかを判断し外来の診察により入院を支援することも役割です。

不妊治療

現代は6組に1組が不妊治療で子供を授かるというほど、不妊治療の技術は進み、身近なものになっています。

しかし、実際に不妊治療をするのは、精神的にも身体的にも経済的にも負担が大きいのです。

不妊治療を始めるまでに、まず検査をし、不妊であることを認めて、治療に立ち向かわなければなりません。

治療が始まっても、また妊娠しないかもしれない、妊娠しても流産するかもしれないという不安や恐怖と闘わなければなりません。

周りの目や心ないこと場に傷つくこともあります。

一度始めたら、どこまでやるか、終わりを決めるのも難しい問題です。

加えてこんなに不妊治療が進んでいるのに、不妊治療に対する市区町村の助成金には地域差が大きいのが現実です。

大きな負担があるからこそ、助産師はコーディネーターや医師との仲介役となり、夫婦を支えます。

両親学級や母親学級

妊娠をし、これから約10ヶ月の妊娠生活や出産、育児を迎えるお母さんやお父さん、家族を対象に行われる教室です。

初めての妊娠、出産、育児だからこそ、事前に学び、必要な準備を進められるように、助産師の視点から話をします。

最近は父親学級やおばあちゃんおじいちゃん学級といった、家族内の役割に応じた学級も行われています。

このように助産師には様々な業務があり、妊娠出産育児のプロフェッショナルである必要があります。

妊娠経過について

妊娠生活についての不安や疑問についてお伝えします。

  • 妊娠生活の経過
  • 児の成長
  • 妊娠期に起こりやすい体の不調やトラブル
  • 妊娠期に起こりやすい精神的な変化

などをお伝えします。

施設によってはマタニティヨガやティラピスを教える教室もあります。

お産の経過について

お産はどのようにして進むのかについて説明します。

  • お産の始まりとは
  • お産はどのように進むのか
  • 陣痛が来たあと、赤ちゃんにはどのような変化があるのか
  • 入院の準備について
  • お産が始まったかな?
  • と思ったなど電話をしてほしいタイミング
  • 入院してから出産するまでの流れ

などをお伝えします。

施設によっては実際に分娩を行う施設見学したり、施設の緊急連絡先や手続きについて説明することもあります。

育児について

育児物品や育児の技術などについて説明し、体験してもらいます。

  • 赤ちゃんとの生活
  • 産後のお母さんの身体の変化
  • 産後のお母さんの心の変化
  • 赤ちゃんの身体の変化
  • 育児物品について
  • 育児・家事分担について
  • サポートについて

などを伝えます。

また体験プログラムとして

  • 沐浴
  • 抱っこ
  • おむつ交換
  • ボトル授乳の体験
  • 入院施設の見学

を行う場合もあります。

家族の支援について

パートナー(夫)や主なサポート者となるおじいちゃん・おばあちゃんの視点から、妊娠・出産・育児についてのお話をします。

  • お母さんや赤ちゃんのこと、育児のことを理解してもらう
  • サポート者の視点で出産や育児の準備を進めてもらう

ことが目的になります。

助産師の仕事でやりがいを感じる4個の瞬間

助産師の仕事は、正直大変なことも多いですが、幸せなことがたくさんあります。

他の科とは違い、病気や怪我を治しに来る場所ではなく、命の成長、誕生に立ち会える病棟です。

お産を取り上げたとき

赤ちゃんが産まれる瞬間。

1人の人生が始まり、人生に数回しかない、家族にとって幸せでかけがえのない瞬間に立ち会えるというのは、本当に素敵で幸せなことです。

産婦さんと一緒に辛い陣痛を乗り越え、赤ちゃんが産まれて泣き声が聞こえる。

なんて貴重な瞬間なんでしょう。

毎回、産婦さんと赤ちゃん、ご家族に感謝の気持ちでいっぱいになります。

「助産師さん、ありがとう」「助産師さんがいてくれて良かった」と言われたとき

お産の主役は産婦さんと赤ちゃんとその家族であり、助産師はあくまで黒子に徹しなければなりません。

ですから、「家族で乗り越えられた、いいお産だった」と思ってもらえることがベストです。

しかし、助産師も人間。

ありがとうと言われると嬉しいものです。

頑張って良かったと思います。

本当に頑張ったのはお母さんと赤ちゃんと家族。

私たちは少しのお手伝いしかできません。

こちらこそ、立ち会わせていただきありがとうございます!という気持ちです。

妊娠中や産後に関わったお母さんと赤ちゃんが笑顔で退院していく時

病院で赤ちゃんとお母さんのお世話ができるのは、数日間の短い間です。

毎日同じスタッフが担当できるとは限りません。

ですが、赤ちゃんがかわいいベビー服やベビードレスを着て、笑顔で退院していく姿を見ると、助産師をしていてよかったと思います。

特に自分がお産に関わらせて頂いたお母さんであれば、感動はひとしおです。

以前関わらせて頂いたお母さんが病棟に遊びに来てくれた時、次の妊娠をしてきてくれた時

病院はケガや病気の治療をする場所です。

基本的にはできれば二度と戻って来てもらわない方がいいものです。

しかし産科は違います。

上の子の時に関わらせて頂いたお母さんが、2人目、3人目を妊娠し、また同じ病院を選んでくれ、またお願いしますと顔を見せてくれた時、大きくなった上の子を連れて、病棟に元気な姿を見せてくれた時、とても嬉しく、助産師を続けていてよかったと思う瞬間です。

中には出産後、赤ちゃんが新生児科や小児科に入院し、お母さんだけが先に退院することもあります。

赤ちゃんが退院できる時、小児科だけでなく、産科にも挨拶しに来てくれた時にも、同じように嬉しく感じます。

自分が退院しても赤ちゃんの面会に毎日通い、時間のかかる搾乳をしてきたお母さんに対し、本当にお疲れ様でした、そしておめでとうございますと声をかけます。

幸せな瞬間をたくさん分けてもらうことができるというのが、産科の特権であり、産科で助産師を続けるやりがいの一つだと思います。

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助産師の仕事はどんな人に向いている?

助産師の免許の取得には様々な方法がありますが、共通しているのが、看護師の免許を所持、もしくは取得見込みの状態で1年間の助産学履行が必要となります。

看護師の免許を持っている以上、看護師として働く選択肢もあります。

どんな人が助産師に向いているのでしょうか。

以下はあくまで私の個人的な意見です。

私が助産師として働いた経験で感じたことを書かせて頂きます。

助産師として誇りを持ち、お母さんと赤ちゃん、その家族の味方になれる人

どの領域の看護師でも、患者中心の看護をできることは大前提だと思います。

産科領域でも同じです。

家族にはさまざまな形があります。

自分が信じられないような考えや行動をする人もいます。

どんな家族でも、退院後に赤ちゃんとお母さんが地域に戻った時、家族が困らないようにはどうすればよいか、を最優先に考えることができる人である必要があります。

助産師として、患者の生涯で数回しかない貴重な時間に立ち会えることを、喜び、感謝できる人でなければ、助産師は務まりません。

精神的な強さを持つ人

産科は幸せなことばかりではありません。

流産や早産、中絶や赤ちゃんの死など、悲しいことや辛いことに立ち会う場面も多くあります。

患者さんの思いをくみ取り、一緒に悲しみ、寄り添うことはとても大事ですが、一緒に落ち込んでいたら、患者さんにとって良いケアをすることはできません。

精神的な強さを持ち、患者さんの傍にそっと寄り添えることが向いています。

誰とでもいい関係性を築ける人

現在の日本では、助産師は女性しかいません。

看護師には男性看護師もいますが、産科の看護スタッフは女性看護師と助産師に限られる施設がほとんどです。

産科医には男性もいますが、他の科に比べて女医が多いのも事実です。

女性の世界ですから、意見がぶつかり合うことも多い。

助産師は、自身が裁量を持って分娩の介助ができる免許を与えられています。

一般的に気が強いと言われる女性も多い。

しかし助産師1人では何もできません。

お母さんと赤ちゃんの安全を守るためには看護師、医師、その他の多くの職種と協調協同することが重要です。

誰にでも好かれ愛される性格の人が向いています。

逆に助産師の仕事に向いていない人の特徴は?

上記の通り、女性の世界である助産師。

向いていない人の特徴とは何でしょうか。

患者のメンタル状況に影響されない

産科と言えば、幸せなイメージが強いですが、幸せなことばかりではありません。

流産、早産、子宮内胎児死亡(お腹の中で赤ちゃんの心拍が止まってしまうこと)、時には中絶に立ち会うこともあります。

中絶というと、世間のイメージでは望まない妊娠をしたり、妊娠に対する知識が乏しい人が妊娠した場合に行われる印象をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、それだけではありません。

望まれ、計画的な妊娠であったにも関わらず、児になんらかの疾患や先天的異常がある場合や、母自身が妊娠・分娩に耐えられない場合、中絶を選択せざるを得ない方もいます。

そのような分娩にも立ち会うことになるのが助産師です。

どんな分娩でも、最善の看護を行おうとしますが、どうしてもメンタルが落ちてしまうこともあります。

患者と共に悲しむことは重要ですが、患者のメンタルに影響され、自身のメンタルが落ちてしまう方や、メンタルが落ちた状態から自力で復帰できない方は向いていないと思います。

忙しくなると、患者に敬意をもって接することができなくなる

分娩中、陣痛に耐えながら、長い時間を過ごさなければいけません。

痛みの中でもお母さんや家族は私たち助産師の言葉や態度に敏感です。

分娩の時には、痛みで叫んでしまい、なかなかこちらの言葉が届かなかったような方でも、分娩の後に話を聞くと、助産師や医師が発した言葉を鮮明に覚えていることは稀ではありません。

患者に寄り添い、信頼し合う関係になることは重要ですが、適当な距離を保ち、丁寧な言葉遣いで接することが必要です。

助産師の仕事をするメリットとは?

フルタイムで働くことができなくても仕事がある

女性のライフイベントとして大きく影響するのが妊娠、出産、育児です。

産休のみを取得し、サポートを充実させることで、早期から仕事復帰する方もいますが、どうしても1か月半程度は法律で休まなければなりません。

そして育児となると、仕事との両立は大変なもので、中には長期間休みを取ったり、一度仕事を辞め家庭に入る方も少なくありません。

助産師は病院やクリニックで働くだけでなく、両親学級やおっぱいケア(授乳ケアや卒乳支援)、大手育児物品販売店舗での相談コーナーや出産準備教室の実施等、地域や民間でもたくさんの働き方があります。

病院やクリニックなどで、非常勤としても働くことが難しいという女性だとしても、このように働く方法がたくさんあるのはメリットだと思います。

経済的なメリット

少し下品な話になりますが、助産師として働くには、看護師に加えて助産師の国家資格が必要です。

また分娩を一人で介助することが許されているため、給料には、「技術料」というものが追加されます。

その金額は病院によって様々ですが、5000円~2万円/月程度でしょうか。

(給与体制は病院によって異なります。基本給が異なる場合や、基本給は同じでも技術料として上乗せされている場合等様々です。)

月の給与から見ると、ほんの少しの差かもしれませんが、うれしいメリットです。

一度関わったお母さんや赤ちゃん、その家族に何度も会うことができる

これはメリットというよりは、助産師のやりがいに繋がるかもしれません。

私が産科に勤めていて嬉しいと感じることのできる1つです。

他の科、いわゆる病気を治す科では、一度関わった患者さんには、二度と関わらないことが一番いい。

ですが産科は違います。

1ヵ月健診でお母さんと赤ちゃんが遊びに来てくれた時や、1人目で関わらせてもらったお母さんが、2人目、3人目の妊娠でまた同じ病院を選んでくれ、上のお子さんを連れて、「またお世話になります。」と来てくれた時、助産師として、とても嬉しく思います。

助産師の仕事で大変なこと

助産師の仕事は嬉しいことややりがいもたくさんありますが、楽なことばかりではありません。

体力勝負

看護師は体力が必要な仕事ですが、助産師も同じように体力勝負です。

辛い体勢で陣痛に耐える産婦を支援したり、赤ちゃんが生まれる瞬間の介助の時は、どうしても腰が曲がった体勢になります。

その状態で赤ちゃんが生まれるまで30分程度過ごすこともあります。

スタッフの人数が減る夜勤帯で分娩が重なれば休む暇どころか、座って息をつく時間もありません。

しかしお産は待ってくれません。

助産師だけでなく、看護師は体力勝負でしょう。

赤ちゃんが生まれてから数日しか関わることができない

入院期間は施設によって異なりますが、概ね経膣分娩(下からのお産)の場合4~5日、帝王切開術の場合は6~7日程度です。

出産した日を0日として計算しますが、この日数というのは0時で切り替わります。

ですから、0:01に出産した人には0日目が23時間59分ありますが、23:59に出産した人には0日目が1分しかありません。

出産当日はお母さんも分娩で疲れています。

母乳の分泌のためにも、体の回復のためにも、休息は大事です。

また退院の日は会計に部屋の片づけに着替えにと忙しい。

実際にゆっくり関われるのは数日です。

その短い時間に、退院してもお母さんと赤ちゃんが困らないよう、育児技術を伝え、家族に会った授乳方法を一緒に考え、育児環境やサポートの調整を支援しなければなりません。

産後のお母さんはとても忙しいですが、私たち助産師も一緒に忙しくなります。

限られた時間の中でお母さんとの信頼関係を気づき、支援するのは、大変なことです。

助産師の仕事をするために活かせる、今までの経験は?

助産師の仕事をするために活かせる経験はたくさんあります。

私は看護課程を終了し、そのまま助産課程へと進みました。

そのため、助産師としての経験しかありません。

私が産科で働く中で、こんな経験があったらいいなと思うような経験を書かせて頂きます。

看護師の経験

産科は特有の部署なのでしょう。

たとえ産科としては何の問題もない患者でも、妊娠しているということが理由で産科に入院することがあります。

また病院のベッドには限りがあります。

婦人科病棟のベッドが満床であれば、産科に婦人科の患者が入院することもあります。

助産師は産科のプロですが、私のように他の科の経験がない助産師も多い。

他の科の患者が来た時には、どんな看護や治療をすれば良いのか分からないことも多くあります。

そんな時ありがたいのが、他の科の経験がある看護師さんです。

産科しか経験のない助産師だけでは思いもつかないような治療法やケアの方法を教えてくださったりします。

使ったことのない治療機器の使い方を教えてくださったりもします。

看護師として、助産師としての他の科での経験は、産科でも必ず活かすことができます。

妊娠、出産、育児の経験

私にはまだ妊娠、出産、育児の経験はありません。

ですが、妊娠中や産後のお母さんたちを支援する上で重要なのが、その人の家庭や生活をイメージし、困らないように、困ったときに適切な場所に適切なタイミングで助けを求められるように、環境や人を調整することです。

私の働く産科にもママ助産師やママ看護師が多くいますが、彼女たちがお母さんと話すと、家庭の環境や生活の中での問題点が明確になり、スムーズに支援につなげることができていたり、一度の短い時間での話だけで、多くの情報が収集されています。

例えば、上の子の育児は?

旦那の仕事は?

サポートしてくれる人はどの程度いるの?

1人目の時には何とかなったことも、2人目以降では、上の子を抱えた状態での育児になるけれど、無理はないか、など。

また実際に経験をしているので、何にどのくらいお金がかかるのかも知っています。

分娩費用や保育園・幼稚園の情報、どんな場所で買い物をしているのか、区や市にはどんなサービスがあり、どんな制限があるのか。

民間のサービスにはどんなものがあり、どのくらいのお金がかかるのか。

経験がなくても調べることはできますが、経験者にはかないません。

ママ看護師やママ助産師は産科の大きな財産であり人材です。

その後のキャリアについて

この仕事についた後のキャリアアップの道は?

母性専門看護師

詳細についてここでは書ききれませんので、興味のある方は調べてみてください。

母性専門看護師とは、助産師を経験した後に、大学院で所定の課程を修了すると得られる資格です。

役割は周産期母子援助、女性の健康への援助が挙げられます。

仕事内容については、所属する病院によって様々ですが、ハイリスク妊娠と言われる人の妊娠、出産、育児、退院した後の援助を行っています。

ハイリスク妊娠とは、例えば若年妊娠(未成年での妊娠)、高齢妊娠(40歳以上での妊娠・特に初産)、合併妊娠(妊娠や出産に影響を及ぼす疾患を合併しての妊娠、精神疾患も含む)、外国人、サポートレス、経済的に不安定、虐待歴やその可能性がある、胎児になんらかの異常が指摘されている、妊婦自身に障害があるなどです。

このような妊婦は大学病院に紹介され、設備や人員の整った状態で支援を受けます。

支援の窓口でありコーディネーターとなるのが、母性専門看護師です。

助産院の開院

助産師には医師と同じように開業権があります。

看護師でも訪問看護ステーション等、株式会社などを開業することはできますが、助産師には助産院として医療機関を開院する権利が認められています。

助産師の経験を積んだのち、地域で助産院を開き、地域に密着し、地域のニーズを満たした助産ケアを行うことができます。

訪問助産

助産院と似たようなものではありますが、助産院での活動だけではありません。

患者の自宅に訪問し、分娩介助をしたり、授乳支援をしたりすることもできます。

他の仕事にもこの経験を活かせる?

助産師として病院で関わることができる患者の多くは、妊娠の少し前から産後まで。

生まれてから妊娠適齢期になるまでや、適齢期になっても妊娠を考えていない女性、産後子どもが大きくなった女性と関わることは、なかなか難しいのが現実です。

しかし助産師は女性のライフステージ全てを支援できる女性のプロ。

私もいつかは、自分が今関わることのできない、妊娠前や産後のお母さんと家族を支援できる女性になりたいと思っています。

私の知り合いには助産師の資格を持ち、助産師としての経験を経て、エステティシャンとして働いている女性がいます。

彼女は働いていた病院で関わることのできなかった女性、特に若い女性の生活を整え、輝かせるお手伝いがしたいと言って、エステティシャンに転向したそうです。

そのエステでは肌のケアだけでなく、食生活や生活習慣、女性にとって避けては通れない、月経や避妊などの支援もしているそうです。

助産師としての経験は、女性やその家族のためになる仕事なら何でも、活きる経験だと思います。

例えば営業職だとしても。

女性が妊娠出産を迎えるにあたって役に立つサービスの営業であれば、助産師としての経験は活きるのですから。

まとめ

長い記事をここまで読んでいただき、ありがとうございます。

助産師は責任も重く、大変な仕事ですが、やりがいも嬉しいこともたくさんある素敵な職業です。

助産師はいつも、全てのお母さんと赤ちゃん、その家族、全ての女性をサポートすることができます。

この文章を読んでくださったあなたが、少しでも助産師という職業に興味を持ち、素敵な職業だなと思っていただけることを、心から祈っております、

助産師の仕事を探すときは、こちらの記事を参考に!

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助産師は看護師の資格を取得した後に取れる資格となります。看護師として最低でも2年ほど働いてからでないと資格を取得できません。大体の方は看護師として働きながら助産師の資格を取るようですね。看護師として働いた経験はあるものの、助産師として働いたことがないという方も中にはいます。結構この疑問持たれている方も多いようなので、今回は助産師は未経験でも出来るのかをお答えしていきましょう。助産師は未経験でもできるの?助産師は未経験でも可能です。求人でも未経験可の所が多いですよ。現在は助産師も常に人手不足ですからね。募集項目の欄をチェックしてみましょう。未経験でも可能未経験でも可能です。助産師自体人手不足のと

助産師の将来性とは?私が考えるこの仕事をずっとやっていたいと思う4つの理由

助産師の将来性に関してですが、今後間違いなく必要になってくる職業であると言われています。現在少子化と言われている時代ではあるものの、徐々に少子化が回復しています。助産師の人手不足は年々解消され、これからどんどん増えていくことでしょうね。今回はそんな助産師の業務内容についてご紹介していきましょう。助産師の仕事に将来就きたいという方はぜひ参考にしていただけたらと思います。助産師の仕事内容は?助産師の仕事内容に関してですが、助産師は出産時のアシスタント、妊婦や赤ちゃんのお世話、診療時のアシスタント、その他看護師業務を行います。その他妊婦に対して新生児のケアや沐浴などの指導をしていくのが助産師の仕事。

助産師の面接で聞かれる3個のことと受け答えのコツ、服装などの注意点とは!?

助産師の面接でよく聞かれることって何だと思いますか?どんな助産師になりたいかを面接で聞かれたなんて声もあれば、当たり前に助産師の志望動機を詳しく聞かれたり、様々な質問がありますよね?助産師の魅力を面接で自分の言葉で上手に伝えるのって難しいですよね。そこで今回は、助産師面接の質問を3つに絞ってその受け答えのコツについても解説していきたいと思います。助産師の仕事内容助産師の仕事内容に関しては、分娩室のアシスタント業務、診察室のアシスタント、入院患者の世話、点滴や注射などの処置、新生児や妊婦などのケアを行います。元々看護師という職業であるため、助産師の主な業務としては看護業務となります。助産師として

助産師を辞めたい…と感じた4個の理由と乗り越え方

助産師を辞めたいと思ってしまう原因とは何だと思いますか?どんな仕事でも辞めたいと思うことはあるのではないでしょうか。辛かったり、落ち込んだり嫌になったりすることもあります。助産師は幸せな瞬間に立ち会うことのでき、やりがいの持てる職業です。そんな助産師もきついと感じてしまい、辞めたくなってしまうこともあります。これは私や私の近しい人の体験談を基に、助産師の大変なことについてお話しさせていただきます。助産師の仕事内容助産師の仕事は、妊娠・出産・育児における女性と赤ちゃん、その家族を支えることです。また女性のプロフェッショナルとして、妊娠前や出産後、生まれから亡くなるまでの女性と家族を支えるのが仕事