
養護教諭を辞めたい…と感じる人の5個の理由と乗り越え方とは?
保健室の先生のことを、正式には養護教諭と呼びます。
学生時代にはよく保健室にお世話になっていたという方もいれば、保健室の先生なんていたっけ?というくらい縁遠い方もいるでしょう。
養護教諭は、最近子どもたちの色々な問題がクローズアップされるなかで、重要性を増しているお仕事です。
養護教諭のやりがいについてまとめました。
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私は今まで、公立の高等学校、中学校、小学校で養護教諭として勤めた経験があります。
一番勤務年数が長いのは小学校です。
養護教諭経験者として、お仕事のやりがいや子どもとの関わりについて解説したいと思います。
ただ、養護教諭の仕事は、子どもたちや保護者の内情に深く関わる事になり、とても秘匿性の高いものです。
事実をそのまま述べてしまうとプライバシーの侵害に当たってしまうため、イニシャルやエピソードに改変を加えていることを申し添えたいと思います。
養護教諭は大変な分、とてもやりがいのあるお仕事です。
具体的には以下のような理由があります。
養護教諭は、ほとんどの場合一つの学校に一人が配属されて勤務します。
例外的に、850人以上の小学校や800人以上の中学校、高等学校には養護教諭が二人配置されていたり、肢体不自由の特別支援学校には保健室に看護師も配置されていたりします。
しかし、ほとんどの養護教諭はたった一人で保健室を切り盛りしています。
これは、とても大変なことでもありますが、同時に大きなやりがいを感じさせることでもあります。
どんなに若手でも、その学校の養護教諭としての振る舞いや発言、仕事ぶりを求められますし、尊重されるのですから。
民間企業に勤めた方などは、「新人だから研修ばかりで仕事をさせてもらえない・・・」「雑用ばかりだから責任ある仕事をしたい・・・」と悩む時期がありますが、養護教諭はそのような悩みとは無縁なのです。
学校生活を送ることで、子どもたちは「社会性」や「学力」を身に着けます。
授業を担当する先生方は、主に「学力向上」という視点を重視して、子どもたちに関わります。
一方養護教諭は、「健康」という視点を重視しています。
ここでいう「健康」とは、心身両面の健康を指します。
子どもたちが学習に集中できるように、楽しい学校生活を送れるように、さらに社会に出たときに活躍できるようにと願い、養護教諭は子どもたちの心身の健康のために注力します。
子どもたちの健康に関わる仕事として代表的なのは、医師や看護師などの医療職です。
医療職には、病院という設備が整った環境で子どもを治療することができます。
養護教諭のような教育職には、医療行為は許されていませんし、学校には医療設備もありません。
しかし、養護教諭には養護教諭の強みがあります。
それは、子どもが毎日登校してくる学校という場で、子どもたちに関わることができるという点です。(病院であれば、傷病が治った子どもに関わり続けることはできませんよね)
学校では、傷病が治った後のフォロー、当人を取り巻く環境の改善、傷病が繰り返されないような予防措置といった、多角的なアプローチが可能になります。
予防からアフターフォロー、集団への指導までできるということに、養護教諭の仕事の面白さがあるように思います。
多くの場合、養護教諭のデスクは、職員室と保健室に一台ずつ設置されます。
保健室は、当然ながら体調を崩したりケガをしたりした子どもたちのための場です。
そこは間違えてはいけません。
しかし、実際のところ養護教諭にとっては「自分の城」といえるような、心休まる場になっていることも事実です。
子どもが来室していない時間帯(放課後や長期休業中)は、保健室で一人で執務を進めることができます。
民間企業であれば、個人の執務室が持てるなんて役員待遇ですよね。
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養護教諭をやっていてよかったときは何ですか?
と聞かれると、いつも子どもたちとの関わりが思い出されます。
多くの子どもたちにとっては、身体測定とケガをしたときに関わるくらいの些細な存在である保健室ですが、一部の子どもたちとはとても深い関わりを持つことになるのです。
Aさんという男子児童は、小学校5年生の時から不登校になりました。
理由は、母親が精神的な疾患を抱えてしまい、衣服や学用用意することや、朝食を食べさせて学校に送り出すことができなくなってしまったためです。
学校が家庭の状況を福祉事務所に相談したところ、母親の家事を手伝うヘルパーを週に何回か派遣してもらえることになりました。
家庭生活が整うにしたがって、Aさんの登校したいという意欲も高まってきました。
しかし、1年以上も不登校をしてしまったため、始業時間までに登校することや、授業についていくことに不安がありました。
そこで、まずはいつでもいいから保健室に登校することから始め、保健室や特別教室で学習する習慣を取り戻すことから始めました。
保健室では、担任の先生からもらったプリントに取り組んだり、時々保健室の仕事を手伝ってもらったりしました。
卒業までに教室で学習することはできませんでしたが、中学校に申し送りをし、中学校の適応指導教室に通うことができるようになりました。
家庭の状況が悪かった時期は、やせてしまい衣服も不潔なままでしたが、次第に子どもらしい明るさを取り戻し、毎日嬉しそうに保健室に登校してきた姿を思い出します。
卒業式に参加できたときは本当にうれしく、この仕事をしていて良かったなと感じました。
Bさんは小学校1年生の下校途中に、交通事故にあいました。
車から逃げようとした拍子に転倒し頭を打ってしまい、救急車で病院に運ばれ10針程度縫合しました。
後遺症もなく、ケガの治りは早かったのですが、交通事故の影響か対人恐怖を訴えるようになり、登校できなくなってしまいました。
特に、教室の騒がしさが辛いとのことだったので、家庭と学校で協議をした結果、保健室登校をすることになりました。
まずは保健室で一緒に給食を食べることから始め、次第に絵をかいたり、工作をしたり、音楽の鑑賞CDを聞いたりして、学校で過ごす時間を長くしていきました。
養護教諭として、他人と関わる事への不安感を取り除けるように、楽しく穏やかに接することを心掛けました。
そのうちに、休み時間であれば友達を遊ぶことができるようになりました。
今でもまだ通学路に恐怖感を覚えてしまうため、自動車で登下校をしていますが、本来の活発さが戻ってきたことを大変うれしく感じています。
Cさんはもともとは普通体型の児童でした。
しかし、小学3年生になったときから体重増加が著しくなり、半年ほどで中等度肥満の判定になってしまいました。
栄養士と協力し、保護者との面談を行うと、母親もかなりの肥満体型でした。
生活上の困り感などを伺うと、今までは子どもは太らせたくないと思って気を付けていたけれど、最近仕事を始めなかなか食事に手がかけられず、冷凍食品やコンビニ弁当を買い与えてしまっていたとのことが明らかになりました。
また、ジュースやお菓子が常にストックされており、母親が帰宅する前に勝手に食べているということも分かりました。
保護者と本人の希望があったため、保健室で減量のサポートをすることになりました。
体重や運動の記録をつけさせ、交換日記のようにやり取りを続けました。
結果、体重をキープすることができ身長が伸びたため2年ほどで適正体重に戻すことができました。
肥満は、健康を害するだけでなく、自分に自信が持てなく内向的になってしまうなど、精神的にも悪影響を及ぼします。
適正体重になったことで、子どもが自分に自信を持つことができたのが何よりの成果だと思いました。
養護教諭の仕事の基本は救急処置です。
心肺蘇生法、包帯法やフィジカルアセスメント、病気の問診や聴診器の扱いなど、基本的なスキルが身につきます。
というよりも、このスキルがなくては養護教諭の仕事を自信をもってこなすことは難しいでしょう。
本で勉強したり、休日に消防署や日本赤十字社の研修を受けに行ったりして、腕が鈍らないように気を付けています。
子どもたちの悩みを聞くことも、大切な執務の一つです。
養護教諭が行う相談を、特別に「健康相談活動」と呼びます。
これは、心身の健康に関する相談を受け、適切な指導・助言を行ったり、保護者や医療機関と連携して解決を目指すものです。
特に精神的な悩みを聞く場合には、カウンセリングスキルが必要です。
こういった対人のスキルは、座学の知識だけでは不十分で、経験によってさらに磨かれていくものです。
養護教諭として子どもたちの健康相談活動を繰り返し行うことで、カウンセリングのスキルが身につくでしょう。
養護教諭の仕事では、よくExcelなどの表計算ソフトを使います。
例えば、健康診断の結果、平均値を大きく下回っている項目は強調表示をする、一年間の推移をグラフにまとめる、関数を使用して該当者を抽出するといった作業を行います。
Excelは大学の授業で少し触ったことがあるくらい・・・というレベルだった私も、仕事上必要に駆られて、一冊本を買って勉強し、大分慣れてきました。
マクロが組めます!
程のレベルでなくてもいいですから、基本的な関数くらいは扱えるといいですね。
他にも、Wordなどの文書作成ソフトもよく使用します。
保健だよりを発行したり、教職員向けの会議資料を作成するためです。
最初は苦手意識があっても、毎日使用していくうちにスキルアップできるでしょう。
休みを利用して、パソコンの技能向上研修を受ける人もいます。
やりがいが大きいけれど、責任も重大な養護教諭のお仕事。
どのような人に向いているのでしょうか。
人に指示されて動くというよりも、自分自身で考え、行動に移せる人が向いています。
というのは、養護教諭が扱う「学校保健」という分野について精通している人が、校内にはいないからです。
校長や教頭といった管理職は、養護教諭の経験はなく、学級経営や学習指導については詳しくても、学校保健についてはあまり知らない方が多いのです。
そのため養護教諭は、何かわからないことがあったら、自分自身で法規を調べたり教育委員会に確認したりしながら、仕事を進めることが多いのです。
よく「子どもが好きだから先生になったんですか?」と聞かれることがあります。
もちろん、子どもが好きに越したことはないですが、「好き」だけでは務まらないというのも正直なところです。
それは、どんな職業にも言えることだと思います。
私は、子どもの心身の健康に対して、熱意を持っている人が養護教諭になってほしいと思っています。
もっと良くなってほしい、どうしたらこの子は元気になるのだろうと、常に疑問と向上心を持って行動できる人であれば、その学校の子どもたちの健康を導いていくことができると思います。
前述の通り、養護教諭の仕事の基本は救急処置です。
子どもたちの命を預かっているという自覚のもと、正しい判断ができなければなりません。
学校で行う救急処置は治療ではないので、正しい診断名を付ける必要はありません。
例えば、ボールで指をついて大きく腫れてしまった場合、レントゲンを撮らなければ、骨が折れているかどうかは分かりません。
骨折かどうかを判断するよりも大切なことは、子どもの負担を少しでも軽減し、ケガに対して正しい処置を施し、医療機関につなぐことなのです。
血を見るのがどうしても無理!という人も養護教諭の仕事は難しいかもしれません。
いかがでしたでしょうか?
やりがいの大きい養護教諭のお仕事。
正規採用になるのは狭き門ですが、情熱のある方にはぜひ目指していただきたい職業です。
興味を持った方はぜひ、チャレンジしてみてもらえたら、うれしいです。
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