「調理師」という仕事について、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?

美味しい料理を作る楽しい仕事だと思う反面、どこか「キツそう」「大変そう」というイメージもあるのではないでしょうか。

調理師になる人たちは間違いなく料理好きが高じてその道へ進むのですが、現実の厳しさや生活のために道半ばで諦めてしまう場合も少なくないのです。

確かな技術とやる気を持っているにも関わらず、待遇や労働条件の悪さのために他の道へ進んでしまうことはとても残念なことです。

今回は、飲食業界の実態や「ブラック」と揶揄される原因に迫っていきたいと思います。

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経験者のも実感する調理師の仕事のブラックなイメージ

筆者はパティシエとして10年、調理師として7年間勤務した後に他業種へと転職しました。

初対面の方に「調理師として働いています」と言うと必ず「大変でしょう?」「女性なのに偉いわね」というような言葉が返ってきたものです。

その度に「やはり調理師業界は大変だというイメージが付いてしまっているのだな」と感じていました。

飲食業界で働いていた17年を振り返ってみても、やりがいや楽しい出来事はもちろんありましたが、それ以上に辛く大変なことが沢山ありました。

就活に挑む大学生の就きたくない仕事ランキングでも「飲食業界」は常に上位にあり、時には1位となることもあります。

若い時から調理師の仕事を志し調理の専門学校を出たとしても、一生この職種で食べていくという人はとても少ないのが現状なのです。

これから飲食業界に進もうとしている方には少し厳しいお話になってしまうかもしれませんが、現実を知っておくのは大切なことです。

調理師の仕事がブラックだと言われる8個の原因

 

元々料理が好きで努力を続けて学んできたにも関わらず調理師が飲食業界を去ってしまうには理由があります。

もちろん、今からお話することが飲食業界の全てではありません。

お店によっても実態は異なりますし、人手不足の現状を打破するために調理師の待遇を改善しようとする動きも出てきています。

しかし、日本の調理師の労働環境は欧米に比べると遥かに劣っているのも事実です。

飲食業界の現実についてお話していきます。

労働時間が長い

飲食に限らず日本中の業界において「労働時間が長い」という点は問題視されていますよね。

最近では「働き方改革」と銘打って残業を減らそうとする運きが盛んになっていますが、飲食業界にはまだまだその波は訪れていません。

人件費に対して利益が少ない飲食業界では1人の調理師に与えられる仕事量がとても多く、長時間労働になりがちです。

もちろん充分な人数の調理師を雇い1人あたりの仕事を分散させているレストランや就業場所もありますが、個人店の場合はそれが難しく、1日の労働時間が短くて12時間、繁忙期となれば14時間~15時間に及ぶことも珍しくありません。

1日に14時間も拘束されてしまうと仕事を終えた時には疲労困憊で、家と仕事を往復するだけの日々になってしまいます。

給与が安い

調理師の世界は経験が重視される世界のため、駆け出しの頃の給与はとても安いのが現実です。

お店の力となる技術を身につけるまでは「お金を稼ぐ」というより「少しのお金を頂きながら経験を積ませてもらっている」と考えて自身を納得させるしかありません。

生活をするのにギリギリのお給料である場合も多く、時給で計算してみると悲しくなってしまうこともあるでしょう。

残業代がつかない

長時間働いているのにどうしてお給料が少ないのでしょうか。

飲食以外の他業種では基本給が低くても残業代で稼いでいるという人も多いですが、飲食業ではそうはいきません。

もちろん飲食業でも残業代をきちんと支給する会社はありますが、小さなお店では残業代はほとんど付きません。

どれだけ働いてもお給料が変わらないことが多いのです。

これが飲食業界がブラックと言われる大きな原因の一つです。

賞与がない

これも会社によりますが、賞与が一切ない場合もあります。

日々の仕事の評価が目に見える形で労働者に還元されるのが賞与であり、仕事へのモチベーションを上げてくれるものでもあります。

 

それほど大切な賞与ですが、飲食業では貰えない所が多いのです。

社会保険などがない

社会人として当然あるべき「社会保険」への加入がない会社もあります。

加入条件を満たしているにも関わらず、また社員を何人も抱えているにも関わらず社会保険に加入していない会社が未だにあるのです。

少ないお給料の中から健康保険や国民年金などを支払うと手元には僅かなお金しか残らず、気持ちが落ち込むこともあるでしょう。

休みが少ない

店舗では1週間に1度の月4回~5回休みという所が多いようです。

基本的にはお店の定休日のみが休日ということです。

それが当たり前になっている調理師は、他業種に転職するとまず休みの多さに驚きます。

週に2回も休みを貰える状況に罪悪感を持ってしまう程、多くの調理師が週1回かそれ以下の休みしか貰えていないのです。

上下関係が厳しい

調理師は職人の世界なので、昔ながらの厳しい上下関係が残っている所もあります。

料理長の言うことは絶対ですし、先輩調理師の指導には何があっても従わなければならないという体育会系の世界です。

 

面倒見の良い上司に巡り会えれば仕事も楽しくなりますが、労働条件の良くないお店の料理長で指導が上手な人はなかなかいません。

逆に労働環境の良いお店では後輩の育成も重要視していることが多く、理不尽な叱責や罵声を浴びせられることは少ないと言えるでしょう。

閉鎖的な世界である

先程「叱責」「罵声」という言葉を出しました。

調理師の世界での「叱責」「罵声」はお店によっては日常茶飯事です。

自分が対象になることもあれば、他人が大声で叱られているのを目撃することも多々あります。

もっと昔には調理器具が飛んでくることや手を出されることも珍しくありませんでした。

現在ではパワハラとして大問題になりますが、古い考えを持つオーナーやシェフであればある程度のハラスメントは避けられません。

今では大分改善されてきていますが、厨房は外からは見えにくい世界なのでそのようなことも起こりがちなのです。

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それでも調理師の仕事は楽しいと思う4個の理由

このようにブラックな部分の多い調理師の仕事ですが、それでも楽しい時間があることも間違いありません。

良い職場や良い上司に出会うことができ、且つ自分の目標を失わなければ飲食業ほどやりがいのある仕事は他にはないと思います。

続いて、調理師の仕事の楽しい部分にフォーカスしていきましょう。

技術・知識が身につく

調理師の仕事を続けていれば、料理に関する技術や知識は確実に身につきます。

やはり本などで勉強するよりも現場で経験することが一番ですし、料理が好きな調理師にとって美味しい料理を作ることはこの上ない喜びです。

作ったものを食べてもらえる

知識や技術が身につくと、自分が作ったものをお客様に食べてもらうことができます。

調理師にとって最もやりがいを得られる場面であり、辛い環境でも「やっていて良かった」と思う瞬間です。

美味しい料理が食べた人の幸せに繋がることは間違いありません。

調理師は料理で人を幸せにできる職業なのです。

頑張り次第でどんどんスキルアップしていく

辛い環境の中でも努力を重ね目標を失わずに続けていければ、確実にスキルアップができます。

調理師は自分の腕一本でどこまでものし上がることのできる世界です。

厳しい修行期間を終え調理師として一人前になったと実感し始めてからが、この仕事の面白いところなのです。

自分でお店を開いても良いですし、有名店で働くことも海外に出て行くこともできます。

自分で考えたものが形になる

クリエイティブな一面を持つ調理師の仕事では、自分の考えた料理が形になりメニューになるという感動を味わうことができます。

材料、調理法、盛り付けや使うお皿など全てを自分でデザインしメニューに載せてもらえた時の喜び、また実際にオーダーが入ってきた時の嬉しさは何ものにも代えがたい経験です。

苦労の多い調理師の仕事ですが、その分他では味わえない充実感があると言えます。

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経験者が本音で語ります

最後に飲食業界で働いていた者として、飲食業界全体に望む改善点や良い職場に出会うための見極めポイントなどをご紹介していきましょう。

飲食業界では良い職場や良い先輩に出会うことが何よりも大切です。

調理師の仕事を一生涯続けて行けるかどうかは良い職場に出会えるかどうかにかかっていると言っても過言ではなく、職場選びは非常に重要です。

この仕事で最も改善が望まれる点は?

飲食業界で最も改善が望まれるのは、後輩の指導・育成方法です。

先程もお話しましたが、飲食業界は職人の世界であるため「見て覚える」「言われなくてもやる」「先輩の言うことは絶対」など昔ながらの慣習が沢山あります。

このような厳しい世界であるために、調理師の多くが見習い期間を終えることなく飲食業界を去ってしまうのです。

統計によると外食産業において新卒で採用された場合の3年後の離職率は5割にも上ります。

3年と言えばまだまだ駆け出しの時期ですよね。

若い調理師が、これかいよいよ仕事が楽しくなるという時に離職を選んでしまうのはとても残念なことです。

またお店にとっても飲食業界全体にとっても大きな損失です。

後輩の指導・育成は骨の折れる仕事ですが、もう少し改善することで飲食業の人手不足は解消されるのではないかと考えられます。

調理師にとって働きやすい職場の見極めポイント

続いて重要な職場選びについて見ていきましょう。

新卒で入社する場合に必ず調べてほしいのが、歳のちかい先輩調理師がどれ程いるかです。

面接の時に先輩は何人程いるのか、自分と同じ調理師見習いはいるのかなどを訊いてみてください。

歳のちかい先輩調理師が辞めずに頑張っているということは、そのお店には理不尽なパワハラや過酷な労働環境がある可能性は低いと言えるでしょう。

また歳の近い先輩がいることで相談する相手もでき、一緒に修行期間を乗り越えていく仲間になってくれるかもしれません。

こんな職場なら要注意!応募前にチェックしたいポイント

筆者の経験からお話すると、お店の規模によらず調理師がオーナーともう1人だけであるお店はおすすめできません。

以前働いていたレストランで、調理師がオーナーシェフと筆者だけというお店がありました。

お店の規模の割に調理師が少ないなとは思ったのですが、筆者はそのお店の味が好きだったので入社を決めました。

いざ働き始めてみると指導をしてくれたのは最初の1ヶ月のみ。

その後は仕込みのほとんどを自分1人で行う、オーナーはオープン後にお店に来る、毎日14時間労働、アルバイトを必要以上に叱責するなど、やはり調理師が居着かない環境だったのです。

せっかく入ったお店ですし、筆者は負けず嫌いの性格ですぐに辞めるという選択ができませんでした。

しかし筆者より後に入社した調理師が次々と辞めていくのを見てとうとう転職を決意しました。

次は調理師が数人いるお店を選ぼうと思ったものです。

調理師が少ないお店ではこのような実態の所もあり得るということを覚えておいてください。

職場選びは慎重になりすぎるくらいでちょうど良いと言えます。

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まとめ

今回は調理師の仕事の現実についてお話しました。

今から調理師を目指そうと思っている人にとっては少し厳しいお話もあったかもしれません。

調理師はとてもやりがいのある仕事ですが、職場選びを間違えてしまうと辛い目に遭ってしまうこともあるのが現実です。

皆さんにはある程度の覚悟を持って飲食業界に足を踏み入れてほしいと思います。

良い職場を探し、そして良い先輩に出会ってください。

そうすることで調理師の仕事を一生の仕事として捉えることができ、充実した毎日を送ることができるでしょう。

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