数ある職種の中でも就職先に困らないと言われている「歯科衛生士」。

しかし、意外にも離職率が高い職種でもあります。

歯科医院に勤めている歯科衛生士は仕事内容に大きな差はないはずなのですが、どうして離職率が高いのでしょうか?

今回は歯科衛生士の転職理由について、詳しくお話していきます。

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歯科衛生士の離職率ってどれくらい?

公益社団法人 日本歯科衛生士会の調べによると、常勤・非常勤を含めた歯科衛生士を対象に、

  • 「今まで勤務先を変えたことはない」が24.3%。
  • 「1回ある」が24.3%。
  • 「2回以上ある」が51.4%。

となりました。

この結果を見ると、歯科衛生士の約7割以上が転職の経験があるということになります。

歯科衛生士の転職理由には何がある?

実際、転職理由は主に大きく分けると三つあります。

一つ目は、「職場での人間関係」です。

歯科医院の雇用規模は様々です。

診療チェア台数が少なくスタッフ人数が数名の医院もあれば、診療チェア台数が多くスタッフ人数が数十名の医院もあります。

どこの職場でも人間関係はつきものですが、歯科医院は基本的に全ての人間と関わらなければいけません。

院長との人間関係が悪い。

大半の医院の院長は、診療に携わっています。

そのため、院長とは毎日接しなければいけません。

院長は歯科医師としても経営者としても責任が重く、教育に厳しくなりがちです。

これは、医院をより良く向上していく為には仕方がありません。

その厳しさで自分自身が歯科衛生士として成長できるのであれば、感謝すべきことです。

しかし、中には理不尽な理由で叱咤されることもあります。

スタッフの中でも、同じことをしているのに自分だけが強く注意される、自分のミスでないことまで責任転嫁される、気分で八つ当たりされる、わざと無視される、歯科衛生士業務を自分だけさせてもらえない…など、自分の努力不足ではない、明らかなパワハラ・モラハラ行為がある場合は院長への信頼がなくなり、不満となっていきます。

女性スタッフとの人間関係が悪い。

歯科医院の大半のスタッフは、女性となります。

歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、クリーンスタッフなど、女性が活躍する職場です。

また年齢も幅広い場合が多く、スタッフ間でのコミュニケーションが上手くいかないと派閥やいじめなどが生まれやすい状況でもあります。

歯科医院はチームワークが大切ですので、スタッフ間でも様々な気遣いが必要となってきます。

自分勝手な行動や医院のマナーやルールを無視するような行動は、いじめの対象となります。

自分に非がある場合は、改善をする事ことが必要です。

しかし、自分に非がない場合もあります。

昔からいる所謂「お局様」と言われるスタッフに気に入られないと、理不尽な態度を受けることもあります。

そして、自分だけが院長に気に入られるといった場合も、それを良く思わないスタッフから嫌がらせや無視などの行為を受けるといったようなこともあります。

常にスタッフの顔色を見て気に入られるように気を遣わなければいけない環境は、仕事以前に精神的に疲れ、仕事への意欲も失われていきます。

二つ目は「仕事内容や診療システムへの不満」です。

歯科衛生士の業務内容は、法律によって定められています。

しかし実際はグレーな部分も多く、定められている内容をきちんと守っている医院もあれば杜撰な医院もあります。

また、診療システムは医院によって様々です。

入社してみないと分からない部分が多いのが、この不満です。

歯科衛生士の業務範囲外の内容をさせられることがある。

基本的に歯科衛生士の業務は決まっています。

しかし、歯科医師不足の医院によっては、歯科医師の業務範囲の内容を指示されることもあります。

歯を削ったり麻酔をしたりすることはありませんが、被せ物の噛み合わせの調整をする行為を指示されたり、削った部分にプラスチックの詰め物をする行為やレントゲン写真のスイッチを押す行為を指示されたりする、保険外の患者さんへの型どりやインプラント患者さんへのネジを外したり付けたりする行為などはあるようです。

歯科衛生士も経験年数が長いと業務範囲外の内容もできてしまうようになってきます。

しかし、これらの業務範囲外の行為をした後、患者さんの歯にトラブル(痛みや違和感や治療中の誤飲)が起こった場合には責任が取れません。

歯科医師からの指示だからという理由は通用しません。

とても危険な行為であると言えます。

診療システム(衛生管理など)に不満がある。

歯科医院で使用するものは患者さんのお口の中に直接入れるものが多いので、基本的に清潔でなければいけません。

しかし、全ての物を一人一人に使い捨てにするとかなりのコストがかかります。

滅菌できるものは滅菌をして、使い捨てにできるものは使い捨てにするという工夫が必要です。

しかし、その使い捨てにすべきものも、物によってはコストがかかります。

そのためコストがかかるからという理由で、医院によっては充分な衛生を保たないまま診療をしている所もあります。

「患者さんに使うグローブ(手袋)を洗って使いまわしている」「歯を削る機械はアルコールガーゼで拭くのみ(滅菌していない)」「歯を削るバーや根の治療で使用するファイルは、消毒液の中で洗浄するのみ(滅菌していない)」「感染性の高い疾患患者の消毒の方法がアルコール消毒や一般患者と同じ消毒方法である」「歯茎を切る時に使用するメスの刃を滅菌して使いまわしている」など、自分自身の感染の危険・患者間での感染の危険を重要視していない医院は大変危険です。

現在では歯科医院の衛生管理はニュースでも取り上げられています。

自分が通院すると想定した時に、職場での衛生面で安心ができるでしょうか?

ここを基準とするのが一番良いでしょう。

三つ目は「給料や待遇、就業時間に不満がある」

面接の時点で、給料や待遇内容、就業時間については説明があります。

しかし実際入社してみると、合意した内容と大きく差がある場合もあります。

また書面で契約をしていない場合は言った言っていないの水掛け論になり、雇われる側が不満を持ちながら勤務する場合が大半です。

給料が仕事内容に見合っていない。

給料の金額に関しては、求人内容通りであるかもしれません。

しかし、業務内容がスタッフにより差があるのに全て同額だとどうでしょうか?

給料明細は、スタッフ同士で見せ合うことはほぼありません。

しかし、何かの拍子に知ってしまうことがあります。

評価の仕方は院長の考えにより様々ですが、やはり目に見えての評価があればモチベーションも上がります。

普段の評価も特にされていない、給料も自分より業務内容が少ないスタッフと変わらない場合、院長がスタッフに対して関心がない恐れがあります。

有給休暇や保険の加入に関して不満がある。

正社員でもパートタイマーでも、有給休暇を取ることが義務化されました。

歯科医院では、有給休暇の制度がない医院の方が多いのかもしれません。

しかし、休暇が必要な時に取れない環境には問題があります。

院長に休暇を願い出たら嫌な顔をされた、自分の代行スタッフを用意してあるのか?と注意された、1日ではなく半日しか取らざるを得ない威圧感があったなど、他のスタッフには快く了承されてもそう思えない環境は、この先有給休暇が義務化されても変わりません。

またパートタイマーでも、ある一定の条件を満たしていれば健康保険(歯科医師国保)に加入することはできます。

しかし、正社員と区別するためにパートタイマーは加入していないなど、願い出ても保険の加入を認めてもらえない場合は理由を聞き、納得のできない内容であれば転職をしたほうが良いかもしれません。

就業時間(拘束時間)が長すぎる。サービス残業が多い。

歯科医院の診療時間は、全ての医院で決まっています。

しかし患者さん都合となる部分が多く、治療内容や急な痛みを訴える急患患者さんの対応などで診療時間を延長することは珍しいことではありません。

しかし、これが毎日となると話は別です。

診療時間を設けている以上、限度があります。

「診療時間内に患者さんの治療は終わっているが、後片付けに時間がかかりすぎる(人材不足)」「後片付けの際に医院で決められたルールのチェック項目が多すぎて時間がかかりすぎる」「診療以外の雑用業務(資料作りなど)がある」「治療時間が長すぎる(最後の患者なので時間を無制限に使っている)」「診療後の勉強会時間が長すぎる」など仕方のない理由もあれば、改善すべき理由もあります。

拘束時間が長いと体力・気力共に低下し、翌日の勤務に影響を与えかねません。

自分自身の身体を守るためにも、大事な項目です。

また医院によってはきちんと時間で区切り残業代を出している所もありますが、診療時間外の雑用業務に関しては残業代が出ない医院もあります。

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歯科衛生士の仕事でよく聞く不満

上記にお話した、転職理由が歯科衛生士の仕事の不満に繋がりますが、細かく分けると以下の内容となります。

日常で起こる不満を紹介していきます。

院長と代診歯科医との連携が取れておらず、間に挟まれる。

歯科医院によっては、院長の他に代診の歯科医師がいます。

患者さんの担当を代わる際には申し送りが重要となります。

しかし医院によってはその申し送りがきちんとされておらず、間に入った歯科衛生士が申し送りの伝達係となることがあります。

それによって患者さんや歯科医師から、理不尽な注意を受けることも度々あります。

院長や苦手なスタッフの機嫌でその日1日が決まる。

院長やスタッフももちろん人間ですので、自分も含め機嫌の良し悪しは日よって違うでしょう。

立場の弱い者はその機嫌の悪さを外に出すことはできません。

しかし、立場が強い者はその機嫌の良し悪しを出します。

それによって、立場の弱い者は理不尽な注意や行為を受けることもしばしばあります。

自分勝手な患者さんからの訴えの対応に困る

予約をしていても「今日は時間がないから早く終わらせて」と言う患者さんもあれば、予約外で来院された患者さんに待ち時間が長いと激怒されることもあります。

また、痛みが出てきた理由を「あなた(歯科衛生士)が触ったからだ」と言われ怒られるなど、患者さんの訴えの内容には無理があることも多々あります。

しかし、そんな時にも笑顔で対応するのが歯科衛生士です。

院内旅行や食事会への強制参加がある

医院の雰囲気が良く院長やスタッフ間のコミュニケーションもしっかりとれている医院には楽しい行事となりますが、院長とスタッフの仲が悪い、スタッフ同士の仲が悪いといった医院では、この行事は苦痛でしかありません。

キツい時もあるけど、でもやっぱりやりがいはありますよね!

歯科衛生士は、1日の中で沢山の人と接します。

気を遣わなければいけない場面が多々ありますが、その中でも人を通して嬉しいことや楽しいこと、癒されること、やりがいを感じることなど、沢山の体験を同時にできる素晴らしい職種でもあります。

自分以外の人のお口の健康管理のサポートができ改善させることができるということは、他の職種では味わえない達成感とやりがいがあるのです。

まとめ

歯科衛生士ライフが充実したものになるのかどうかは、就職する医院によって大きく左右されます。

就職する医院によって自分の歯科衛生士としての才能が開花するか否かと言っても決して過言ではありません。

それ程に医院選びは重要なのです。

沢山の試練や辛いことがあるかもしれませんが、それをサポートしてくれる院長やスタッフとの出会いで乗り越えられる壁が変わってきます。

理不尽な不満を抱えたまま長く勤務することは、自分の身体にとっても良くありません。

転職先には困らないのが歯科衛生士という職種ではありますが、やはり1ヶ所の医院で長く働いていると患者さんからの信頼度が違います。

歯科衛生士の本来の業務内容を考えると、患者さんとの信頼関係は必須となります。

転職ばかり繰り返すと患者さんとのコミュニケーションがとりづらくなるのも欠点です。

転職をする際は、充分なリサーチと自分が求めている職場をしっかりと確率させ、医院見学を事前にして医院の雰囲気をしっかり見定めることが重要となります。

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