「転職に成功する人・失敗する人は、転職活動を始める前から決まっている。」

このように言うと身も蓋もない感じですが、ほぼ事実です。

社会人になってキャリアを重ね、公私にわたって知己が増えるに従い、同世代や下の世代の人から転職の相談を受ける機会も増えてきます。

個人的な食事や飲み会の席で相談されることが多いのですが、お酒が入る状況が多いこともあり、皆さんかなり本音で思いを語ってくれます。

相談の結果、転職活動を始めて成功する人・失敗する人、今すぐの転職活動を見合わせる人など様々です。

それでも、転職に成功する人・失敗する人には、それぞれ共通点が見られるのです。

そもそも転職における成功とは何だろう?

そもそもの話、転職での「成功」とは何でしょうか。

今よりも年収を上げることでしょうか。

肩書きを上げることでしょうか。

それとも、今よりも社会的な知名度が高い会社、社格が上の会社に移れば成功ですか。

もしくは、やりたかった仕事ができ、演じたい役回りができれば、転職に成功したと言って良いのでしょうか。

1. 自分にとって転職の成功とは何かを意識する

転職に成功する人・失敗する人の特徴や、その理由を説明するに先立ち、転職における成功とは何なのか、まずここをシッカリ押さえておきましょう。

この部分があやふやであれば、転職の成功・失敗は、一過性の外面的な判断基準でしか見られなくなってしまいます。

転職は自分にも家族にも、良くも悪くも人生の転機となり得るものです。

それであればこそ、地に足を着けた戦略・判断が転職活動には必要になります。

誰にも言えることですが、転職することは、これまで積み重ねた社内の信用や評価を一度リセットすることを意味します。

その上、転職した会社での人間関係は、今までよりも悪くなる可能もありますし、上長になる人と、どうしてもソリが合わないこともあり得るでしょう。

つまり、転職先でそれなりに業績を上げられると仮定してさえ、今の会社より社内での評価が低くなるリスク、年収が下がるリスクを否定できないのです。

中途入社の人間には風当たりが強い社風の企業だって、日本企業ならまだ確実に存在しています。

結論を言えば、転職における「成功」とは、「自分の人生における最適化を進められたこと」です。

今よりも、「自分や家族がトータルの意味で生きやすい、納得感がある環境を手に入れること」、と言い換えても良いでしょう。

転職の結果、仮に年収は下がり、社内の人間関係が悪くなったとしても、納得できるものを掴むことです。

これは、転職した直後には、成功したか否かを判断できないことを意味します。

また、転職の成功とは人それぞれであり、他人と比較することは全く無意味であることも分かります。

成功した転職だったか否かは、少なくとも転職してから2~3年が経ってみて、初めて結論が下せるものです。

言わずもがな、成否をジャッジできるのも自分だけです。

2. この転職は失敗だったのか?

例えば、ある大手総合商社に、障害を持つ子供さんを持ち、家族と一緒に過ごす時間を大切にしたい、という価値観・人生観を持つ人がいたとしましょうか。

彼は中堅食品メーカーに転職して数百万円年収が下がり、ネームバリューでは勝負できない会社の社員になりましたが、後悔はしていません。

転職してからは、出張や接待などに費やす時間・エネルギーは大幅に減りましたから、家族と思い切り話せる時間をシッカリ確保できるようになり、子供さんのケアも十分できるようになりました。

家族の結束も明らかに強まったそうです。

転職先はノンビリした社風で、本来の彼の性格とも相性が良いようです。

人間関係も良好で、社内評価も転職後の方が良さそうです。

親族や元同僚は、「こんな良い会社ないのに、何て勿体ないことをするヤツだ!」と転職当初は眉をひそめたものです。

何年か過ぎた後、本人が今の会社に移って良かった、あの時の決断は正解だった、と心から感じられるならば、その転職は間違いなく成功なのです。

3. 転職の成否は自分にしかジャッジできない?

それでは、こんな例はどうでしょうか。

ある中堅生命保険会社に、社内システム運用を長く手がける人がいるとします。

明らかに社内では亜流の部門であり、本流の部門にいる同期の栄転話などを耳にする度に、焦燥感が募ってゆきました。

そんな折、彼は外資系IT企業で役員をする親族のコネクションを使い、そのIT企業にSE職として転職します。

そのIT企業は多国籍企業で、世界中で知名度はピカ一、しかも本流の部門に配属です。

年収も上げることができました。

周りは、「良かったね!凄いね!」と喜んでくれます。

しかし、転職大成功と思ったのも束の間、彼はその後ずっと浮かない顔で毎日を過ごす羽目になります。

仕事を運ぶスピード感や、コスト意識の強烈さに付いて行けないのです。

結果的にパフォーマンスも上がらず評価は下がる一方、年収も下がる一方です。

誰もが彼は転職に失敗したな、と思うことでしょう。

それでも、もしも彼の人生観・価値観が、「世界的な知名度のある大手企業の社員でいることが一番だ」、といものだとすればどうでしょうか。

転職は成功だった、と彼は言える可能性があるのです。

やはり、転職の成功・失敗の判断は、究極的には本人にしかできない、ということです。

「この転職に自分は何を求めるのか?」「自分の人生観や価値観に照らして譲れないものは何か?」、転職に踏み出す前に、自分に正直に問い掛けてください。

ここは周りに相談してもどうにもなりません。

答えは、あなた自身の心にしかありません。

この自問自答をしておくと、次に述べる転職に成功する人・失敗する人の違いをよく理解できるようになるでしょう。

転職に成功する人に共通する5つの特徴・理由とは?

「年収アップが期待できる転職の誘いがあるのですが、受けるべきでしょうか?」「私の転職先としてA社をどう思いますか?」このような相談をしてくる元同僚や部下、後輩が時折います。

少し話をしてみると、彼・彼女が転職に成功したと思える結果になるか否か、予めおおよその見当が付きます。

成功組の特徴や、その理由を見てみましょう。

1. 自分がこの転職に何を求めているのかが明確

年収アップ、肩書きのアップ、会社の安定感、会社のブランドイメージ、やり甲斐のある仕事や役回り、将来起業するためのノウハウ蓄積、良好な人間関係、自分がコントロールできる時間を増やす、副業ができる環境作り、さらには親の面倒を見つつ実家から通勤できるロケーションなど、転職により得たいものは人により様々です。

別の表現をすれば、転職での目的を達成するため、何を捨てることができるのかが明確になっている、とも言えます。

ここが不明確だったり、欲を張り過ぎていたりすると、ターゲットにする企業やポジションのイメージがぼやけてしまい、結果的にアンマッチなところへ転職する羽目になります。

2. 転職で求めるものが自分の人生観・価値観にマッチしている

逆に、転職で求めるものが、自分の人生観・価値観に合わなかったとしたら、転職の喜びは一過性のもので、成功も外面的なもので終わります。

当然、モチベーションは長続きしませんので、パフォーマンスを維持するのも困難になります。

自ずと社内評価や人間関係も徐々に悪くなりますので、自分が転職した理由が見えなくなりやすいのです。

3. 転職に年収アップやブランドイメージだけを求めない

人材が不足する企業やポジションならば、現在の年収よりも高い金額をオファーしてくれる可能性は高いでしょう。

ところが今の時代、年功序列的な発想で給与査定をしてくれる企業は稀で、次年度以降に年収が下がるケースは珍しくありません。

中途採用をする企業側も、採用者が使える人材か否かは、ある程度一緒に働いてみないと分からない、と考えるのが普通です。

さらに、転職先のブランドイメージ、世間体の良さに惹かれて転職するのもリスキーです。

一旦入社してしまえば何のことはなく、転職を果たして浮かれるのは一瞬です。

生え抜きが重用され、中途入社組が昇進や異動などで不利な扱いをされる可能性も否定できません。

目先の年収アップや、転職先の世間体の良さだけが目的の転職であれば、遅からずモチベーションを喪失する可能性は高いのです。

4. 転職後の立ち位置や業務内容を具体的に理解し納得している

これを十分に確認・理解できていないと、自分の期待していた業務内容、立ち位置と現実のギャップに落胆し、転職した意味を見出せなくなる可能性があります。

パフォーマンスが低下するのみならず、鬱状態になったり、転職を繰り返したりする結果になるケースも珍しくありません。

どのような位置付けの組織で、どのような指揮命令系統で、どのような役回りを期待されるのか、転職の面談時にシッカリ確認をしておく必要があります。

「お願いする具体的業務については、入社後にボチボチ相談しましょう!」などと面談相手が言ってきたら、その企業はスッパリ切った方が良いです。

自分たちが募集するポジションの具体的なイメージを明確に説明できない将来の上長は、あなたを効果的にマネジメントできない可能性が高いからです。

5. 転職先に気の合う後ろ盾・後見人的な位置付けの人がいる

転職先では中途採用となる訳です。

一般的に多いのは、配下を増員したい管理職が採否の実質的な決定権を持って、中途採用に責任を負うケースです。

あなたの採用を実質的に決定してくれた将来の上長は、新しい職場における後ろ盾・後見人的な位置付けになり得ます。

転職先では周りの注目を集める分、プレッシャーも大きいことが普通です。

組織や業務について、いつでも忌憚なく相談できる後見人的な存在がないと、アウェイの環境で孤独な立場となり、極めて大きなストレスがかかります。

また、運良く転職先に後見人的な存在があったとしても、あなたとその人との相性が良くない場合、日々の職場環境が相当厳しいものになるリスクが高いです。

面談相手が中途採用後の上長になるのかを必ず確認し、自分と相手は気が合いそうなのか、五感を研ぎ澄ませて感じてみることです。

明らかに違うなと感じたら、自ら身を引く勇気も必要になります。

転職に失敗する人に共通する4つの特徴・理由とは?

そして、転職に失敗する人に多く共通する特徴・理由も紹介しておきます。

失敗のパターンを学習しておくことが、転職で成功せずとも、最低限失敗はしないためには有用だからです。

1. 転職したい理由が不明確で主導権を持っていない

「転職エージェントから、今より年収アップできる仕事があると声を掛けられたから。」

「友人がいる会社のポジションに欠員が出て、誘われたから。」

この手の話は意外と多く耳にします。

何ら主体性はなく、流されて転職するだけです。

転職エージェントは手数料を稼いで実績になる人たちですし、友人も上長から早く誰か見付けろ!と尻を叩かれている可能性が高いのです。

あなたの人生に、転職エージェントも友人も責任は持てません。

仮に、目先の年収が上がるにしても、転職後の一時の喜びに終わるでしょう。

当事者が意思を持たず、主導権を握っていない転職ですから、成功する可能性は皆無です。

2. 現状の不満から逃れるために転職する

年収に納得が行かない、異動や昇進に不満がある、上長とソリが合わなくてやり難い、同僚との人間関係が悪い、やりたい仕事ができない、業務内容に納得が行かない、社風に馴染めないなど、現状の不満を解消するのが目的で転職をしようとする人は、相当な確率で転職に失敗します。

現状抱く不満は、転職先でも抱く可能性は十分にあります。

転職活動中は高揚感や、今の環境から一刻も早く離れたい欲求から、ターゲット企業やポジションの全てを美化して眺めることが多いものです。

転職直後は不満が解消できたように感じても、時が経るに従い新たな不満が沸き起こることが普通です。

転職という手段を使う前に、現状で打てる手は本当にないのでしょうか。

今ある環境・持てる条件で全ての手を打つ思考・行動様式を身に付けておかないと、延々と転職を繰り返す負のスパイラルに陥るリスクが高いです。

隣の芝生は青く見えるものです。

3. 時間的な猶予がない転職活動をする

転職先が決まる前に退職してしまっている場合や、既に退職願が受理されている場合、もしくは結婚やマイホーム購入前に世間体が良い企業に移って年収を上げたいと考える場合など、転職活動に十分な時間をかける猶予に乏しくなります。

経済的な逼迫や、家族や結婚する相手に対する面目など、大きなプレッシャーがかかります。

このような場合も、必要以上にターゲット企業やポジションを贔屓目に見がちになります。

大慌てで転職先を決めて入社した後、こんなのイメージと違う!と感じて再び転職したいと考えてしまう羽目になります。

計画性を持って動くのが苦手な人や、土壇場でドタバタと慌てて物事を処理する傾向がある人は、特に転職には注意すべきでしょう。

4. 転職先の後ろ盾・後見人的な位置付けの人の立場が不安定

転職先であなたの後ろ盾になってくれる立場の人は、実質的に中途採用を決めてくれた上長である可能性が高いことでしょう。

中小企業やベンチャー企業ならば、転職先の企業トップや役員が後ろ盾になってくれるケースも少なくありません。

ところが、この後ろ盾になってくれる人が社内で力を失ったり、最悪は退職するような状況になると、たちまちあなたの居場所がなくなるリスクがあります。

転職して間もない頃は、あなたの評価も定まっておらず、社内には十分な人脈も築けていないためです。

転職先が大手企業ならば、異動して再び活躍できる可能性もありますが、中小企業やベンチャー企業の場合は、異動先もなく実質的に退職に追い込まれるような状況になることもあり得ます。

これは運の要素も大きいですが、採用面談を通して、ある程度は相手の社内での立場を探る努力も必要です。

まとめ

転職の相談を受けた際に、この人は成功する・失敗すると感じた理由を述べてみました。

自分の人生設計や価値観が確立していないと、転職に失敗する確率が高まることが理解できるでしょう。

換言すれば、自分の人生観・価値観を認識できない内は、成功する転職活動はできないことになるのです。

日本社会は、とかく周りからの評価を気にしがちで、世間の多数派の物差しで物事を判断する傾向が強いものです。

つまり、転職に失敗しやすい環境が備わっているのです。

それだからこそ、転職が成功したか否かは、自分にしかジャッジできないことを強く肝に銘じる必要があります。


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