対象者の方の健康を守る事が仕事の保健師ですが、実は就業している保健師のほとんどが女性である事はご存知でしたでしょうか?

徐々に男性の保健師も増えてはいますが、まだまだ人数が少ない現状です。

これから保健師を目指したいと考えている男性の方で、保健師の仕事は男性でもできるのかと不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

今回は保健師は男性でも出来るのかどうか、男性保健師ならではの利点や大変だった事についてまとめていきたいと思います。

保健師の仕事についておさらいしておこう

保健師の仕事は、人の体と心を健康に保てるよう支援する事です。

既に病気を患っている方の「治療」を行う医師や看護師とは異なり、病気や介護が必要にならないように「予防」する事を目的としています。

保健師の多くは「行政保健師」として市町村の保健センター等に勤務しており、その地域の住民の健康を保てるよう支援しています。

乳幼児の保健指導から始まり、高齢者の介護予防まで様々な年代の地域住民の健康指導を担います。

また、健康を害する要素となる生活困窮の支援や、近年問題になっている虐待等の支援についても携わる事があります。

その他の活躍場所としては、学校に通う児童やその保護者、教員の健康を保てるよう活動する「学校保健師」、企業で働く人の体や心の健康を保てるよう産業医等と連携しながら活動する「産業保健師」などが挙げられます。

保健師の男女比ってどれくらい?

厚生労働省が発表した「平成28年度衛生行政報告例」によると、平成28年末現在での就業保健師は男性が1137名、女性は50143名となっています。

就業保健師全体で女性の割合がおよそ98%を占めており、保健師は女性の割合が高い職業と言えるでしょう。

また、就業保健師に占める男性保健師の割合は、10年前と比較すると3倍以上に増加しています。

昨今、日本における社会問題は複雑化、多様化しており、その解決のために保健師に期待される役割も増加している現状です。

男性特有の悩みも増えており、男性保健師のニーズは今後も増加すると考えられます。

保健師は女性が多いのはなぜ?

先に述べた通り、保健師は女性の割合が約98%と圧倒的に多くなっています。

それはなぜでしょうか?

ここでは保健師に女性が多い理由を挙げていきたいと思います。

男性保健師の歴史が浅い

まず初めにあげられる理由としては、男性保健師の歴史が浅い事が挙げられると考えられます。

保健師の仕事自体はそれより以前から存在していましたが、資格として誕生したのは1941年、当初は保健婦という資格で呼ばれていました。

資格が出来た当初、保健婦は資格取得条件の中に「18歳以上の女子」という文言があったため、男性が就業する事が出来ませんでした。

1993年の法改正を受け、男性も保健師業務に従事する事が認められ、名称も「保健婦」から「保健師」に変化しました。

このように男性保健師の歴史自体がまだ浅いため、それ以前から存在していた女性保健師の方が人数が多くなってしまっていると考えられます。

女性のイメージが強い

平成28年度衛生行政報告例によれば、就業している保健師の9割以上が女性となっています。

そのため、そもそも男性が就ける職業としての認識が薄く、目指す人が少ない事が、男性保健師が増えない一つの要因となっていると言えるでしょう。

保健師と同様、看護師も以前は男性の人数が非常に少なく、女性の仕事という認識を持たれがちでしたが、近年は就業看護師のうち1割程度が男性となっています。

保健師として就業している男性がいるという認識が徐々に広がっていけば、それを目指す男性も増えていくと考えられます。

男性でも保健師ができる理由

現代日本では保健師のニーズが増えており、活躍する場面も増加しています。

現在は女性保健師が大多数を占めているため、せっかく資格を取得しても、保健師の仕事に従事できるか不安に感じる男性は多いと思います。

ここでは男性でも保健師の仕事が出来る理由について、現代における保健師の状況を交えながら解説していきたいと思います。

保健師を配置する企業が増えている

まず初めに、保健師を配置する企業が増えているため、就業先が増えている事が挙げられます。

労働安全衛生法によれば、「健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者に対し、医師または保健師による保健指導を行うよう努めなければならない」と定められています。

法律上、この条項は努力義務とされていますが、昨今注目されている長時間労働問題や過労死問題、鬱病等のメンタルヘルス問題に取り組む企業が増加してきている現状があります。

そのため就業先は増加、特に工場などの男性が中心の企業では、男性の気持ちが汲み取りやすい男性保健師が重宝されると言えます。

社会問題の増加に伴う保健師ニーズの増加

次に社会問題の増加に伴う保健師ニーズの増加が要因として挙げられます。

保健師は、対象者の健康の維持、病気の予防等が大きな役割と言えます。

その中には健康を害しやすい要因として挙げられる課題の解決も含まれるため、保健師は様々な問題に立ち向かっていく事が求められます。

現代日本の価値観は多様化しており、それに伴う問題も複雑化しています。

身体的な要因のみならず、精神的な要因による病気はもちろん、経済問題の解決やDV問題など家庭内の問題にも深く関わっていく事が求められます。

昨今大きく話題となっている児童虐待問題についても、新生児訪問等で自然と自宅に伺う機会を持てる保健師は、児童相談所などの専門機関や専門職と繋がりを持ち、問題解決を図っていく事を求められるようになりました。

今後も社会問題は増えると予想されており、保健師が活動する分野もどんどん増えると考えられます。

今ではまだ数少ない男性保健師も徐々に認知され、活躍していく事でしょう。

保健師で男性ができること

保健師が活動する職場で、今現在多く活躍しているのは女性保健師です。

女性の就業者が多い資格である保健師ですが、昨今需要が増加しており、数少ない男性保健師は女性保健師よりも得意と考えられる事も多くあるため、求められていく人材になると予想されます。

ここでは男性保健師が女性保健師よりも得意であると考えられる事についてまとめていきたいと思います。

男性の相談に対応しやすい

まず初めに挙げられる事は、男性の相談に対応しやすいという事です。

特に男性特有の性の悩みや前立腺肥大等の女性が患う事のない病気の事については女性に相談する事が恥ずかしかったり、ためらわれる男性が多く存在します。

また、現代日本では離婚率が増加しており、それに伴って父子家庭となるケースも徐々に増加しています。

そんな方達の相談に対して、同性である男性であれば、相談する事に対する抵抗感が和らぎ、相談しやすいと言う相談者は少なくないため、男性の相談対応については女性保健師より男性保健師の方が得意であると言えるでしょう。

男性宅への訪問業務

次に挙げられる事は、男性宅への訪問業務です。

行政保健師はその地域に住む住民の健康を保つための支援をさせて頂く事が仕事となります。

健康を害する要因を持つ人に対してのアプローチを行いますが、その際には相手の自宅にお伺いする事になります。

訪問をさせて頂く対象者の方の中には、一人暮らしの男性も少なくないため、保健師であったとしても女性が一人で訪問する事に抵抗や恐怖を感じる人もいます。

また、男性による身体的暴力等に対する相談対応など危険が発生する可能性があるケースでは、複数名で自宅訪問を計画したとしても女性だけでは不安を感じるという人もいます。

そんな時男性保健師が一緒に自宅へ訪問する事ができれば、女性保健師の安心感にも繋がっていくと考えられるでしょう。

子どもから人気を得やすい

行政保健師の業務の中には「3歳児健診」という物が存在します。

自治体に勤務する保健師が医師と協力し、対象の子どもの身体機能や発達状況を確認するためのものです。

対象の子どもは自分の番が来るまで順番待ちをしなければなりませんが、落ち着いて待っている子どもばかりではありません。

基本的に保護者が付き添ってきますが、保護者だけでは対応しきれない時もあります。

その際に保健師も手伝いをしたり、遊び相手になったりしますが、女性保健師が多いため子どもにとってはその男性の保健師が珍しく感じられる事も少なくありません。

特に男の子は男性保健師がいると「お兄さん先生」に親しみを感じ、女性保健師より積極的にコミュニケーションを図る事が出来る事が多いです。

この傾向は養護教諭を取得して学校に勤務する学校保健師にも同様の事が言えます。

高学年になるにつれその傾向はなくなっていきますが、低学年のうちは親しみやすい「お兄さん先生」は特に男の子からの人気を得やすいという利点があります。

男性保健師だから大変だったこと

先の項目では男性保健師が出来る事、男性保健師ならではの利点について述べました。

しかし、それとは逆に、女性が多い保健師の仕事ならではの大変さも存在します。

ここでは逆に男性保健師だったからこそ大変だと感じた事についてまとめていきたいと思います。

母子保健相談の対応

まず初めに挙げられる事としては、母子相談の対応です。

どれだけ努力をしても、現代技術で男性に妊娠・出産をする事はできません。

それゆえ、妊娠・出産を体験した女性保健師であれば自分の体験から分かる事であっても男性は実体験が無く、どうしても想像や書物等からの知識に頼る事になってしまいます。

相談者によっては「男性」というだけで母子保健に対して理解が無いと考える母親が少ないながらも存在します。

相談を受ける際には、相談者に相談しやすいと感じて頂ける事が大切になります。

自分ではどうしようもない性別の問題でネガティブな感情を持たれてしまうと、信頼関係を築きにくくなってしまうため、大変であると言えるでしょう。

学生に対する性教育

次に挙げられる仕事としては、学生に対する性教育が挙げられます。

学校に雇用されている学校保健師の中には養護教諭の資格も取得し、保健室の先生として働く人もいます。

対象の生徒が小学校高学年~中学生くらいの場合は、保健体育の授業で性教育を行う場合もあります。

その際、男性保健師が養護教諭として勤務していた場合に思春期の女子学生が羞恥心を感じてしまったり、抵抗を感じてしまう事は多々あります。

保健体育の授業をどのように展開していくかを考え、実施していく事は大変であると言えるでしょう。

女性が相談する事に抵抗を感じやすい

先に男性保健師は男性のの相談に対応する事が得意という事を上げましたが、女性はむしろその作用が逆に働きやすくなります。

特に女性の性にまつわる相談や思春期の女子学生の相談など、男性に対して抵抗を感じる人は多いと言えます。

また、DV相談などでは男性に対して恐怖感を抱えている女性も多いため、相談対応が困難です。

しかし、保健師として対応する相談は女性からのものが多く、抵抗感を感じている方からも時には悩み事を聞かせて頂かなければならないため、大変であると言えるでしょう。

同性の先輩が少ない

同性の先輩が少ない事はやはり大変な事と言えるでしょう。

仕事内容については女性保健師からも教えてもらう事は可能ですが、女性のイメージが強い保健師の仕事に従事する上で、男性ならではの悩みを抱える事は少なくありません。

同じ職場に男性保健師が就業していれば、経験に基づいた指導や助言を得やすいですが、就業保健師の約2%しか存在しない男性保健師が自分の職場にいる事はかなり珍しいケースといえます。

男性保健師であるが故の悩みを抱えてしまった時に、男性保健師の先輩に相談できる環境が無い場合が大きく、的確なアドバイスが得にくい事も多いため大変であると言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

保健師は女性の数が男性よりも多く、人によっては仕事をしにくいと感じる事もあると思います。

しかし、男性保健師だからこそ持てる視点もたくさんあります。

男性が保健師として就業するメリットを見つけ、より多くの男性が保健師として就業するきっかけに繋がっていけば幸いです。