「私の仕事は学芸員です」というと、「美術館とかでよく座っている人ですか?」と聞いてくる人がいますが、その度、学芸員の仕事は意外に知られていないのだなぁと残念に思います。

多くの方は、美術館などを訪れた際にそこで働いている人に出くわす場面というと、受付や展示室の監視、ショップの人たちになりますので、仕方ないと思わざるを得ないことではあります。

学芸員=美術館で働いている人ということはわかっていても、では、実際にどんなことをしているのかというと、具体的に「こういう仕事をしている人」とはっきりとイメージが湧く人はあまりいないのかもしれません。

そこで、ここでは学芸員の仕事についての解説やどんな人が学芸員に向いているかなどをお伝えいたします。

「学芸員」が自分に向いているか診断するにはこちら →

学芸員はどんな仕事?

動物園、水族館、郷土資料館、科学館、美術館等これらの施設で企画等を担当する人は、ほとんどの人が学芸員の資格を持っています。

動物を扱う人も絵画を扱う人も同じ資格なのか、と驚かれるかもしれませんが、扱うものは様々であっても基本は一緒です。

博物館の役割については博物館法で定義されており、学芸員はその館の役割を果たすことを主な仕事とする人となります。

具体的に学芸員の仕事とはどんな仕事なのか、博物館法に書かれている内容をわかりやすく説明すると次のようになります。

博物館の役割とは、

  • ①館のコレクションとなる資料を購入や寄贈などにより収集し、後世まで引き継ぐため最適な状態で保管する
  • ②それらの資料の価値や意義を一般の人にもわかりやすく展示したり、ワークショップやセミナーなどを行うことで理解を深めてもらう
  • ③それらを行うにあたり必要な資料に関する調査、研究などを行う

ことであり、学芸員は博物館がその役割を果たすために、中心となって仕事をする人といえるでしょう。

調査、研究、展示といった仕事が主な仕事になりますが、これらに付随する細かな雑務も多くは学芸員の仕事となります。

「学芸員」が自分に向いているか診断するにはこちら →

学芸員の大まかな仕事内容

扱うものは様々ですが、どのようなものをその施設のコレクションとして収集したいかを精査し、コレクションに加えたいものの情報を収集し、予算との兼ね合いを考えながら、購入や寄贈などの方法で施設のコレクションを増やしていくことが仕事の一つとなります。

そして、コレクションの中から館で展示するものについて、展示の企画を立てて展示をすることが、一番のメインとなる仕事です。

学芸員の企画力によって入場者数は大きく違ってくるため、大事な仕事となります。

また、収蔵品に関する調査、研究も大事な仕事の一つです。

学芸員の仕事は研究職になりますが、実際にはこまごまとした雑務も多く、何でもマルチにこなしていく必要があります。

仕事上の役割とは?

美術館、博物館に人が集まるかどうかは、学芸員の企画次第と言っても過言ではありません。

ただ、専門分野に詳しければよい企画ができるかと言うとそうではなく、一般の人にもわかりやすく興味を引くような展示を組み立てる必要があります。

さらに、思わず行ってみたくなるような展覧会タイトルや、キャッチコピーをつけられるか、目を引く広告を作成できるかなど、専門分野以外にも文章能力やデザインのセンスも問われますし、全体をまとめ上げる役割も担っています。

また、館の収蔵品を後世に引き継ぐという役割もあります。

保存状態が悪ければ、収蔵品によってはカビが生えたり、色が褪せていったり、形が崩れてしまったりと、後世に残していくことができなくなってしまいます。

そのため、資料の保管、管理も学芸員の重要な仕事の一つです。

「学芸員」が自分に向いているか診断するにはこちら →

学芸員になるには?

学芸員は文部科学省が所管する国家資格です。

そのため、学芸員になるにはまず、学芸員の資格を持っている必要があります。

そして、学芸員の資格の取り方には以下の4つの方法があります。

  • ①博物館学などの必要な単位を取得できる大学を卒業する
  • ②大学に2年以上在籍し、かつ学芸員補としての実務経験を積む
  • ③資格認定試験を受けて合格する
  • ④資格認定審査を受けて合格する

先に挙げた①と②は受験なしで資格がもらえますが、③と④は受験が必要となります。

もう少し詳しく説明しましょう。

博物館学などの必要な単位を取得できる大学を卒業する

実際の取得方法として一番多いのがこの方法です。

学校で講義を受け、美術館、博物館などでの実習を行い、各科目の単位が取れれば、大学卒業と同時に学芸員の資格は取得できます。

しかし、それらのほかに、自分の専門となる分野の勉強も必要です。

大学に2年以上在籍し、かつ学芸員補としての実務経験を積む

大学に2年以上在学し、博物館に関する科目の単位を含め、大学在学中に62単位以上を修得し、その後、学芸員補として3年以上博物館勤務をしている人は、試験を受けることなく学芸員の資格が取得できます。

資格認定試験を受けて合格する

上記に当てはまらない場合は受験することになります。

資格認定試験の受験資格は?

  • 4年制大学を卒業することで得られる学士の学位を取得した人
  • 大学に2年以上在学し、博物館に関する科目の単位を含め、大学在学中に62単位以上を修得し、その後、学芸員補として2年以上博物館勤務をしている人
  • 教職員の普通免許を持ち、2年以上教職員として勤務していた人
  • 4年以上学芸員補として勤務していた人
  • その他文部科学大臣が上記に挙げた人と同等以上の資格を持っていると認めた人

試験内容は?

以下の必須科目と選択科目から2科目を受験します。

  • 必須科目:博物館学概論、博物館経営論、博物館資料論、博物館資料保存論、博物館展示論、博物館教育論、博物館情報・メディア論といった博物館学と生涯学習論
  • 選択科目:文化史・美術史・考古学・民俗学・自然科学史・物理・化学・生物学・地学

資格認定審査を受けて合格する

こちらは審査を受けるのですが、受けるにはやはり条件があります。

資格認定審査の受験資格は?

  • 大学院等で修士または博士の学位等を取得していて、2年以上学芸員補として勤務していた人
  • 大学で、博物館に関する科目(生涯学習論を除く)について2年以上教える立場にあり、2年以上学芸員補として勤務していた人
  • 次のいずれかに該当し、都道府県の教育委員会の推薦がある人

 ア:学士の学位を持ち、4年以上学芸員補として勤務していた人

 イ:大学に2年以上在学し、博物館に関する科目の単位を含め、大学在学中に62単位以上を修得し、その後、学芸員補として6年以上博物館勤務をしている人

 ウ:学校教育法の定めにより大学に入学できる人で、8年以上学芸員補として勤務していた人

 エ:その他、11年以上学芸員補として勤務していた人

  • その他文部科学大臣が上記に挙げた人と同等以上の資格を持っていると認めた人

審査内容は?

書類審査と面接の2つになります。

「学芸員」が自分に向いているか診断するにはこちら →

学芸員の仕事はどんな人に向いている?

次に、学芸員の仕事に向いている人の特徴について書いてみます。

オタクな人

専門分野について誰よりも詳しくなくてはいけないので、一つのことに徹底的にのめりこめる、ある意味オタクな人であることが必須です。

様々なことにアンテナを張ることができる人

展示物とその知識を紐づけて、人に興味を持ってもらえるような企画として表現する必要があるため、自分の専門分野だけでなく、流行や時事ネタも含め、様々なことにアンテナが張り巡らされている人が向いています。

発想が自由な人

専門分野について深く調査、研究ができる、こだわりのある人が向いているのですが、同時に自由で豊かな発想ができる人が、能力のある学芸員とみられる一つのポイントとなるでしょう。

例えば、対象となる資料について固定概念にとらわれず、様々な視点から観察、調査、研究ができると、収蔵品を多く所有していない館で繰り返し同じものを展示しなければならないとしても、様々な切り口で展示を行うことができ、来館者を飽きさせない展示をすることができるといった具合です。

好奇心旺盛で勉強好きな人

展示物について誰よりも深く知っていることが必要となりますので、興味を持ったものに対し深く掘り下げて徹底的に知りたいという、好奇心旺盛な勉強好きな人が向いています。

何にでも興味を持ち、ちょっと気になったことなどもすぐに調べて自分の知識として取り込めると、展示企画や教育普及のイベントなどを考える際に役立つことが多々あります。

センスの良い人

実際の展示には学芸員のセンスの良し悪しが非常に表れます。

せっかく展示の内容がとても良いものであっても、展示方法や宣伝の仕方などが良くないと評価もイマイチとなり、多くの人に見てもらうこともできません。

空間デザインや色彩のセンス、文章表現力などあらゆる面でセンスを問われるため、良い企画ができる学芸員となるにはセンスの良さも必要と言えるでしょう。

マルチタスクが得意な人

大きな施設の場合にはそこそこの人員が配置されているかもしれませんが、多くの施設は学芸業務以外にも館を維持するための様々な雑務もこなさなければならないほど少人数で運営をしています。

そのため、専門分野に特化した人材であることは必須ですが、プラスして雑務なども器用にこなすマルチタスクが得意な人が向いていると言えます。

トレンドを追える人

必須の条件ではないかもしれませんが、企画を立て人を集めるには、その時あるいは数年後に旬となる話題やイベントなどを、常にアンテナを張り巡らせキャッチする人であることが大きなプラス要因となります。

例えば、3年後がある国との記念の年であることがわかっているとしたら、そこに合わせてその国出身の作家さんの展示を企画するなど、トレンドに乗った企画ができることで集客は大きく変わってくるため、将来を見越してトレンドを追える人は能力のある学芸員となる可能性が大きいと言えるでしょう。

体力がある

学芸員は研究職のイメージが強いかもしれませんが、意外と体力が必要です。

例えば、研究対象が遺跡などの場合、発掘調査は屋外になりますので、夏の暑い日差し、冬の凍えるような寒さの中もこつこつと発掘を進めなければなりません。

動物や植物の場合には、やはり日々身体を動かす仕事となります。

対象が絵画などの場合、体力は要らないのではないかと思われるかもしれませんが、展示替えの期間は、学芸員が先頭に立って会場内を動き回らなくてはなりません。

壁面の修復であったり、作品の配置を考えたり、実際に展示架け替え作業を行うことも多いのです。

「学芸員」が自分に向いているか診断するにはこちら →

学芸員の仕事をするために活かせる、今までの経験は?

学芸員の仕事は多岐にわたります。

デスクワークだけではなく、身体を動かす作業も多く発生します。

研究や展示の企画ではデスクワークがメインとなりますが、実際の展示作業や資料の整理などは一日中身体を動かす仕事になりますし、また、分野によっては調査はフィールドワークがメインになるものもあります。

以下に学芸員の仕事をするために活かせる、今までの経験で身につけたものなどについていくつか挙げてみます。

英語使用経験

収蔵品について海外からのお問い合わせがあったり、逆に海外にお問い合わせをする場面もあります。

来館者に外国人が来ることを想定し、キャプションや解説に英語を入れることも珍しくありません。

また、調査、研究にあたっては英語の文献を読むことも多くあるなど、英語が得意であることは学芸員の仕事に役立ちます。

どんな業界でも今や英語は必須になりつつありますが、学芸員の仕事においても様々な場面で英語が必要となってきます。

イラストレーター、フォトショップの使用経験

チラシやキャプション、館内のちょっとした案内などの作成に、イラストレーターやフォトショップが使えると大変便利です。

企画展のチラシなどはもちろんデザイナーさんに頼むことがほとんどですが、1日だけのワークショップやお知らせなど、デザインをあれこれ凝る必要のないものなどは、学芸員が作成するものも多いです。

ワードやパワーポイントなどで作成してもよいのですが、一般の会社の資料とは違いますから、イラストレーターやフォトショップを使ってこだわりのあるものを作成できるとイメージアップにもつながるため、これらが使えると便利です。

「学芸員」が自分に向いているか診断するにはこちら →

学芸員を目指す際に知っておきたいこと

学芸員は、自分の好きなことがそのまま仕事に活かせる大変魅力的な仕事ではありますが、大変狭き門であるのが現実です。

大学で必要な単位を取得すれば自動的に学芸員の資格が取得できるため、比較的簡単に取得できますが、学芸員の資格を取得しただけでは学芸員になることは難しく、多くの人が資格は持っているけれど、学芸員を目指しているわけではないというのが現状でしょう。

学芸員の資格を取得するというのは、学芸員になるための前提条件のようなものです。

そこから先、自分の専門分野の研究を進め、論文を発表したりすることが必要となってきます。

学芸員のポストは限られていますので、運よく美術館、博物館にはいることができても、初めから大きな企画を任されるようなことは少なく、学芸員補からのスタートという場合もあります。

「学芸員」が自分に向いているか診断するにはこちら →

まとめ

美術館等で必ず見かけるけれど、その仕事についてはよく知らないことが多い学芸員について、少し詳しく書いてみましたが、いかがでしたか?

狭き門ではありますが、学芸員という仕事に興味を持った方にとってこの記事が参考になればうれしいです。

「学芸員」が自分に向いているか診断するにはこちら →