「手に職」という言葉があるように、身につけた技術は一生モノです。

会社員だと大抵、定年がありますが、手に職がある技術職は、自分の身体が可能な限り仕事を続けることが出来ます。

そして、年齢を重ねても長く続けられる仕事の中に、着付けの仕事があります。

今回は着物のスペシャリスト、着付けの仕事について解説します。

着付けの仕事はどんなことをするの?

着付けの仕事をする人のことを「着付け師」と呼びます。

着付け師の仕事は、着物を人に着せたり、着付け方を人に教えたりすることです。

昔は、親から子へ着付けを教える文化でしたが、現在では、着物に馴染みのない人のほうが多いでしょう。

しかし着物は、冠婚葬祭の時に欠かせない衣装です。

七五三、成人式、結婚式など、誰もが一度は着たことがあるのではないでしょうか。

着付け師の仕事は、着物を着せてただ終わり、ではありません。

神社へのお参りや写真撮影のときに着物の乱れがないかチェックすることもあります。

着物を着ている人のことを気遣うことも、着付け師の大切な仕事なのです。

着付けの仕事に就くには?資格はいるの?

着付け師には必ずしも資格が必要というわけではありません。

写真スタジオなどに就職をして、実際の仕事の現場で着付けを覚える人もいます。

しかしそれでは、着物の知識を独学で学ばなければいけない場面も多いです。

資格は、自分の技術を客観的に示すものなので、説得力があります。

また、着付けにも流派がありますが、どの流派でも仕事をする際には問題ありません。

着付け教室に通って技術と知識を身につけることが、着付けの仕事に就く一番の近道であると言えます。

着付け教室に通って少し技術が身につくと、先生のアシスタントとして現場に入るチャンスもあります。

実際に先生の着付けやお客様との関わり方を見ることができ、現場での立ち居振る舞いを学ぶことができます。

着付けの仕事はどんな人に向いている?

では、着付け師はどんな人に向いているのでしょうか。

ここでは4点、向いている人の特徴を解説します。

気遣いが出来る人

着物を着たことがある人は、感じたことがあると思いますが、着物は長時間着ていると苦しくなります。

どんなにベテランの着付け師が着付けをしたとしても、特に着物に慣れていない人には、帯や紐の圧迫感は辛いものです。

そして着物を着る場面は、冠婚葬祭の場が主です。

苦しくても「苦しい」と言えない人も多く、具合が悪くなっても我慢してしまう人もいます。

着物を着ている人が助けを求めてこなかったとしても、表情や呼吸の仕方、ため息の多さなどで苦しさを読み取ることが大切です。

周りの人に気付かれないように「大丈夫ですか?」と声をかけることで、着物を着ている人は安心することができます。

七五三など子供の着付けをする場面もありますが、子供が相手であれば、尚更注意が必要です。

細かいところに注意出来る人

着物は洋服よりも細かい決まりがあります。

例えば、着物の下に着る長襦袢の襟の出方です。

この襟は左右対称で、1.5cm〜2cmほどの幅が出ていると綺麗と言われています。

その他にも年齢に応じて帯の高さや、襟の抜き方(首の見え方が変わります)を変えるなど、注意すべき点が多くあります。

着付けをしながらももちろんですが、最後まで気を抜かず、最終チェックを念入りするような、細かいところまで注意出来る人が向いています。

また、着物を着ている人も動くので、その動作で襟がずれてきてしまったり、帯が下がってきてしまうことがあります。

そのようなときにすぐに気付き、直す俊敏さも必要です。

人と話すことが苦ではない人

着付け師の仕事は、ずっと話している仕事ではありません。

また、一人のお客様に対して着付けしている時間は、大体15分〜25分ほどです。

着物を着る人は、普段着慣れないものを着ることや、これからのイベントで緊張していることが多いです。

そのようなときに、ただ無言で着付けされたらどうでしょうか。

余計に緊張しませんか?

必要以上に話す必要もありませんが、着付けしている時間は、なるべく相手をリラックスさせることを考える必要があります。

体力がある人

着付け師は体力が必要な仕事です。

着物は緩めに着付けるとすぐに着崩れてしまいます。

そのため、紐をしめるときや帯をしめるとき、手先だけではなく身体全体を使ってきつくしめなくてはいけません。

普段しない体勢をすることも多いため、足腰、そして腕に筋力が必要です。

着付けの仕事をするために活かせる、今までの経験は?

着付け師になりたい!と思ったら、今までにしてきた経験で何が活かせるか考えてみましょう。

着付けの技術は必要ですが、それ以外にもマインドの部分で必要なこともたくさんあります。

接客業の経験

着付け師は技術職ではありますが、人を相手に仕事をする接客業でもあります。

飲食店などの経験も活かすことは出来ますが、ひとりひとりに長く向き合う接客の経験があればベストです。

例えば美容師、ジムのパーソナルトレーナーなどの経験があれば、着付けしている間も問題なく会話することが出来るでしょう。

会話が弾めば、着付けされている側もリラックスすることが出来ます。

着物を扱う場所にいた経験

着付け師は着物を上手に着せる技術はもちろん、着物そのものに対する知識も必要です。

勉強をしなければなかなか知識は頭に入りませんが、着物が身近にあった人の場合はすんなりと知識が入ってくるでしょう。

例えば、着物を着て接客する飲食店で仕事をした経験や、浴衣の販売員の経験も活かせます。

着付けを仕事にするメリットとは?

長く働くことが出来る

着付け師は自分の体力次第で、長く続けることが出来ます。

経験がものを言う世界でもあるので、長く続けて多くの人を着付ければ着付けるほど、自分の技量は上がっていきます。

ある程度何でも着付けられるようになると、フリーランスという働き方が出来ます。

フリーランスは自分で自分の仕事を管理するため、都合の良い時間に働くことが出来ます。

例え家庭を持つことがあっても、時間に融通がきくため、家庭と仕事を両立しやすい仕事といえるでしょう。

年齢を重ねても働ける仕事なので、ある程度子育てが終わってから着付けを始める人も多いです。

日本の文化を伝えることが出来る

近年、日本にも外国人観光客が増えています。

訪日外国人の数は2011年から右肩上がりに増加し、2017年には2011年の約4.6倍になりました。

古くから日本にある、日本ならではの文化は外国人に人気があり、中でも着物は人気が高いです。

浅草や鎌倉などには、観光客向けの着物レンタルショップも多くあります。

着付けの技術があり、着物の知識があれば、世界各国の人に日本文化を伝える、特別感のある仕事をすることが出来ます。

その後のキャリアについて

この仕事に就いたキャリアアップの道は?

着付け師の仕事は経験が最も重要です。

最初は会社に所属し、多くの人を着付け、経験を積みましょう。

着付け師によってもやり方が違うので、多くの先輩のやり方を見て、自分に合う方法を見つけることが大切です。

花嫁の着付けまで出来るようになれば、フリーランスとしても十分やっていくことが出来るでしょう。

他の仕事にもこの経験を活かせる?

呉服店や写真スタジオで活かすことが出来ます。

資格を取得していれば、着付け教室の講師という道もあります。

師範までの資格を持っていれば、看板を出して個人で着付け教室を開業することも出来ます。

自分にあった着付けの求人の選び方や注意点

着付け師の働き方は様々です。

技術職ということもあり、雇用形態も多くあるので、自分に合った働き方を見つけましょう。

【選び方①】雇用形態から探す

正社員、アルバイト、登録スタッフ、フリーランスという形態があります。

正社員の場合、大抵は着付け以外の業務も多いので、着付けだけをやりたいという人は覚悟が必要です。

その代わり、着付けする人数が多くても少なくても、給与が安定しています。

その他の働き方の場合は、着付けする人数によって給与が変わることが多いので、収入に波があります。

活躍する場は冠婚葬祭のときが多いので、一年を通して仕事があります。

繁忙期と言われる時期は七五三のある秋や、成人式のある1月、卒業式のある3月です。

着付け師の繁忙期はイベントとともにやってきます。

浴衣の需要のある夏の時期も仕事はありますが、浴衣は比較的に簡単に着ることが出来ます。

SNSで浴衣の着付け方の動画を見て、自分で着付ける人も増えているため、成人式などの大きなイベントに比べると、夏の仕事は少なくなっています。

【選び方②】会社の業態から考える

着付け師の勤務先の種類は幅広くあります。

ここでは5つご紹介します。

①写真スタジオ

子供写真スタジオから始まり、振袖専門、ブライダル専門スタジオがあります。

七五三、成人式、結婚式に臨む人たちの前撮り、後撮りのときの着付けが主です。

これらの場合、多くは着付けだけではなく、撮影中の付き添いも行います。

後片付けや写真選びなど、事務的な仕事も多くあります。

子供写真スタジオであれば、写真撮影に集中することが難しい子供をあやすことも仕事のひとつです。

②ブライダルサロン

結婚式当日の着付けや、前撮りのときの着付けを行います。

その他にも、新郎新婦が結婚式当日に着る衣装の試着も担当することが多いです。

結婚式の場合、着物の柄の意味や色の組み合わせなどを気にする新郎新婦も多いので、広く深い知識が必要です。

当日は新郎新婦の着付けだけではなく、親族の留袖や振袖を着付けることもあります。

親族を含め、結婚式という現場は幸せな現場でもありますが、同時にナイーブな現場でもあるので、細かいところに気を配れる配慮が必要です。

極度の緊張で新婦の具合が悪くなってしまったりと、不測の事態も起こり得る現場なので、落ち着いて対処出来る冷静さも持っておきましょう。

③着物レンタルショップ

近年増えている着物レンタルショップは、日本の観光地に多く出店しています。

着物のレンタルと着付けを行っている店がほとんどで、ターゲットは主に外国人観光客です。

着物を着て日本の町並みを歩けるということで人気があります。

着付け師は着物を選ぶところから立ちあい、着付けまでを行います。

日本の文化の魅力を外国人に直接伝えられる機会が多くあります。

④呉服店

呉服店では、主に販売員として活躍することが多いです。

着物を使う場面や用途に応じて着物を勧めたり、実際に試着の手伝いをして着物を販売する仕事です。

ブライダルサロンと同様、着物に関しての深い知識が必要です。

成人式や卒業式の当日には、出席する人に着付けをすることもあります。

⑤和装スタイリスト

フリーランスで働く人がほとんどですが、テレビや雑誌で着物をスタイリングする仕事です。

着物のスタイリングを通して着物の魅力を広く伝えていく立場の仕事です。

知識はもちろん、センスも問われる職種といえます。

【選び方③】給与や雇用条件から考える

着付け師の給与は決して高いものではありません。

時給でいうと1,000円ほどのところがほとんどです。

また雇用条件は、着付けが出来ることが基準となるので、アルバイトでも採用時にテストがあるところがあります。

資格を取得していなくても働くことは出来ますが、資格を持っていた方が説得力もありますし、圧倒的に有利です。

しかし、着付け師になりたては、学ぶのにかかった額と収入は比例しないと考えたほうがいいでしょう。

独立してフリーランスになれば自分で着付け代を決めて、それがそのまま自分の給与になるので、着付ければ着付けるほど給与は高くなります。

【選び方④】エリアから考える

着付け師として働く現場は多くあるので、エリアで仕事を絞る必要はほぼありません。

自分がどのような現場で働きたいかによって変わります。

都会のほうが、働く現場としての数は多いです。

しかし、冠婚葬祭のイベントはどの地域でも存在するので、写真スタジオやブライダルサロンは探しやすいです。

外国人に日本の文化を伝えたいということであれば着物レンタルショップですが、それらは京都、鎌倉、浅草など外国人観光客が多い場所に集中しています。

まとめ

現代では自分で着物を着ることが出来る人はごく僅かです。

特に成人式、結婚式などの自分のハレの日には、着付け師に着付けを頼む人がほとんどです。

そのため、日本の冠婚葬祭がなくならない限りは需要のある仕事です。

また、着付けを習得することは大変です。

プロと呼ばれるようになるまでには多くの歳月がかかります。

しかし、特別な日に特別な衣装を着せられる、そして人から「ありがとう」と感謝されることの多い仕事、それが着付け師の仕事です。