いきなりですが皆さんは医師の数は多いと感じますか?

今では、街中を少し車で走ってみるだけで病院やクリニックはどこにでも目にすると思います。

私が住んでいるこの日本は「医療機関の数が世界一」とされています。

しかしながら、対人口比率でみると日本は医師不足と言われています。

これは単に人口比率で計算しての結果になりますので、もしかしたらこれを読んでいる医療機関で働く人の中には、「私のとこは医師不足は感じない」という方もいらっしゃると思います。

しかしながら、これから超高齢化社会を迎えるにあたり確実に医師不足はどんどんと問題になってきます。

すでに、都道府県によっては医師不足が問題となっており、様々な方法を利用し医師確保を行うような取り組みをしていたり、少し前には国が歯科医師を医科の方にという案などがニュースになっていたのを皆さんは知っていますか。

充足している医療機関では何も問題はありませんが、医師が確実に不足している医療機関では当然他の医師へ負担がいきます。

そうなると医師はどんどん疲弊していき、結果として辞めていく形になるという、悪循環に陥ります。

勤務医の実態調査では、7割以上の医師が「ストレスを感じている」と回答しています。

医師も普通の人間で、当然のように喜怒哀楽もあります。

1番怖いのは、皆さんは医療機関を受診した際に目の前にいる医師が普通の医師と思ってはいませんか?

先ほどもあったように、7割以上の医師がストレスを感じており、もしかしたら目の前にいる医師は正常な心理状態ではないかもしれないということです。

今回は、そんな医師のストレスの原因や、その域を超えて「なぜ辞めたいと思うのか?」。

このテーマを、私がこれまで大学病院、国公立病院、民間病院等で働いてきた中で見てきたものをもとにお話ししていきたいと思います。

医師が辞めたいと感じる5個の理由と対策

理由1.当直・呼び出しが多すぎる(忙しすぎる)

医師なら誰しもが「忙しい」と感じたことがあるのではないでしょうか。

忙しい原因がまさにこの当直、オンコール体制に問題がある医療機関が多くあるのではないでしょうか。

ギリギリの医師の数で運営いている医療機関であれば、昼間は外来患者の診療もしつつ病棟の患者さんも診て、夜は当直と・・・。

看護師などは当直の次の日は「明け」と言って朝方から仕事の都合では昼ぐらいまでには帰宅します。

当然、その日はお休みで、翌日も基本的には休みという「夜勤・明け・休み」が1セットといった感じですが、医師の場合はそうはいきません。

当直の次の日だからと言って休みなどはありません。(当直の翌日が日曜などで病院自体が休診の場合は除く)

平日であれば当直の次の日でも外来診療は通常通りあります。

外科系の先生の場合、当直の翌日がもしかすると手術日という可能性も大いにあります。

そして、この当直が医療機関により様々で、まったく夕方から翌朝まで何もない医療機関もあれば、急患はバンバン来る、病棟の患者は急変するなど医療機関によって差が激しいのも実情です。

呼び出し=医療用語ではオンコールと呼びますが、これは例え休みの日であれ携帯に連絡が入れば基本的にはすぐに病院へ駆けつけなければなりません。

私が大きな病院で働いていた当時を思い出すと、まともにオンコールがないのは「夏休み」、「お正月」ぐらいでした。

夏休みや正月などの長期の連休を取る際は、必ず代わりの先生に引き継ぎを行い、また当直の先生にも大まかな状態が分かるようカルテに引き継ぎ事項を記載して、やっと何とか長期連休が取得出来ていたような状態でした。

対策

この問題は難しい問題で、医療機関によっては課題の一つであるところもあるでしょう。

基本的に当直は、その医療機関内で実際に働いている医師で順番にしていくものです。(複数の医師が勤務している場合)

医師は、日中の勤務だけでなく夜は勉強会等で病院を抜けたり、また学会等で全国各地に行くこともしばしばあります。

そんな中で、内部の医療機関内でのローテーションが一部の医師に偏ってしまったり、どうしても誰も入れない日があることも多くあります。

そんな時、今では当直専門の先生をバイトで雇う医療機関もあります。

当直専門として働いている医師もいて、人材紹介会社を経由して入れない日はバイト医師を雇うというやり方をとっています。

簡単に考えれば毎日バイト医師を雇用し、常勤の医師は休む形にすれば確かに少しは楽な状態になるでしょう。

しかし、このバイト医師を雇うにもお金がかかります。

私の県では、金額にして8万~10万かかることもあります。(夕方5時~翌朝8時半まで)

それを1か月間も連続して雇うような余裕のある医療機関はおそらくないでしょう。

ですので、経営を預かる事務からすると極力院内の先生方で当直は回してほしいというのが本音ですし、経営的に厳しい医療機関では一切外部医師は雇わないなどというところもあります。

オンコールについては、患者さんに何かあった際には極力当直の医師でまずは診療にあたり、どうしてもの際に担当医に連絡をするというルール化をしている医療機関が多いのではないでしょうか。

しかしながら、大きな救急病院などで難しい手術等を行う医療機関では、当直の先生の診療科が違えばどうしても専門外であり、責任問題にも発展する可能性もあるため担当医に連絡がいくケースが多いのが現状でしょう。

大きな医療機関でも人員的に余裕がある場合などは、外科系、内科系と2人当直の体制をとるなど、その医療機関ごとに医師の負担を減らす努力を行っています。

理由2.大学病院という大きな存在

医師が辞めたい理由の中で特に若手の医師が思っていることの一つとしてあるのが大学病院の「医局」の存在です。

昔はほぼすべての医師が医局に所属していましたが、そこでの「人間関係=派閥抗争」、「田舎の病院への転勤」、「給与の低さ」と、いろいろな理由がありました。

医局に所属することは悪いことばかりではありません。

自身のスキルアップ(いろいろな疾患の診療に携われる)にも繋がりますし、今後のキャリアプランのためにも医局の存在は有力です。

対策

大学病院の医局の存在は現在でも大きなものです。

新臨床研修医制度の導入によって、医師は自分の意思で研修先の医療機関を選択することが可能となりました。

この制度が始まる前は、大学の医局に属し、医局の指示により研修先が決まっていました。

一見するとこの制度は自由に選択出来てよい感じを受けますが、この制度の導入により都市部への研修希望者が増加し、逆に地方への派遣数が著しく減少しました。

しかし、この制度により都市部と地方とで医師数の格差は出来たものの、医師は大学の医局特有の人間関係(ピラミッド)からは外れたため、自由に医療機関を選択し、そこで患者さんを診療し、先輩医師と手術を行うなど活躍の場は広がります。

しかしながら、大学の医局を外れると学位の取得が出来なくなります。

一般病院などで医師の紹介部分に「~専門医」などといった記載があるのを見たことがある方もいらっしゃると思います。

学位の取得をしている医師は、相応の地位や給与で転職することが出来ます。

大学病院の医局で臨床医として勤務する医師は、大きく2つ「専門医資格の取得」と「学位の取得に大学内でのキャリアを築くこと」を目的としていることが主だと言えます。

そして、医局に属することにより様々な医療機関に派遣され、大変ではありますが、医師としていろいろな臨床経験を積むと考えた場合は、新しい制度で自分の選択で医療機関を選択するより、ある程度は我慢して医局にてスキルアップする医師も多くいます。

そして、ここ最近は「ゆとり世代」が本当に強いと感じます。

私自身も部下を含め看護師やいろいろな職種の若手と話していると本当にそれを強く感じます。

昔は「見て覚えろ」、「何かあるなら自分から聞いてこい」といった教育が普通に行われており、現在の医師の世界でもまだそういった教育が一般的に行われています。

しかしながら、ちょっとした事で考え込んだり、傷ついたりと若手の扱いが難しくなっています。

そういった厳しい教育や医局内の人間関係などで、精神的な疾患に陥り辞めていく医師も少なくありません。

国も新制度の導入などを行うなど努力をしていますが、なかなかうまくいっていないのが現状ではないでしょうか。

しかし、辞める数をゼロにするのは難しいですが、極力ゼロに近い形に持っていく意味では新制度の導入は成功ではないでしょうか。

新制度の導入により新たな問題点も見つかり、今後どのような政策で早期に解消していくかが重要な部分であると思います。

理由3.自身が描いていた理想と現実の差

「誰かを助けたい!」、「人の役に立ちたい」という思いで猛勉強の末、医学部に合格し計6年間の勉強生活。

その後、国家資格に合格しても2年間は研修医として働かなければなりません。

人それぞれ思い描いてたものは様々で「医師になれば給与がたくさんもらえる」、「人を救える」、「自慢できる仕事に就けた」などの思いを持っています。

しかしながら、研修医期間の給与は安く、一つの医療機関だけでは生計を立てるのが困難なため、夜間は別の医療機関で当直のバイト生活。

休む暇もなく一生懸命に働き、例えいくら体調が悪かろうが仕事を休むことは出来ず、先輩医師からは怒鳴られる日々。

ましてや看護師にまで怒鳴られることも・・・。

また、この頃から実際に患者さんを診ていき、教科書通りには行かず悩む日々が続くことも。

中には人の死に向き合えないドクターも少なくありません。

それにより、いろいろと考え込んでいき、はけ口を上手く見つけられない人は自分自身で抱え込み「自分が無力」だと感じはじめるようになるドクターもいます。

対策

この問題は本当に難しいものです。

医師の理想と現実の差によりやる気がなくなる。

これは医師に限ったことだけでなく、医療従事者ではよく見かけられます。

1番は身近に相談出来たり、うまく発散できる方は何とか気持ちを継続していくことが可能な場合が多いのですが、「相談相手がいない」、「はけ口(発散)がない」という医師の場合、こういった気持ちが落ちている時に、ちょっとした失敗をして少し怒られたとします。

どうなるでしょう?

一気に気持ちは低下していき、「何のために働いているか分からない」、「働く意味さえ分からない」などといった気持ちになります。

この部分において私が行っていることは、同じ職種(医師)でなくても良いので、相談出来る相手をあえて作るように仕向ける。

ようは、同世代のリハスタッフや看護師、時には自分自身が積極的にまずはドクターと話すことからはじめていき、だんだんと親しくなり、ご飯に行ったり、飲みに行ったりしてはけ口をこちらから作るようにしています。

これは、少し遠くから来た医師で、自らコミュニケーションを取るのが苦手そうな医師ほどこういった傾向にあります。

これは、人の気持ちの部分の問題ですので、そこを引き出すまでが難しい部分ではありますが、黙って見ていても何も始まりません。

少しでも解消の可能性がある限りやってみる価値はあると思います。

理由4.女性のドクターは結婚・出産を機に退職

いくら独身時代にバリバリ診療していた女医さんでも、結婚や出産を機に辞めていくケースも多々あります。

やはり、まだまだ男性の世界であるという部分が強く、子どもが小さいうちは復帰する事は難しいのが現状です。

すべての女医さんに当てはまる訳ではありませんが、私が見てきた大半の女医さんが子育てが落ち着くまでは現場を離れることが多くありました。

対策

この問題もまだまだ男性社会といった感覚があるせいか難しい部分です。

しかし、出産後の医師であれ雇用の仕方を検討することにより上手く使える存在になります。

私がこれまで行ってきた経験が、まだ子供さんが小さく午前中の勤務で、かつ出来れば2日に1回の勤務を希望しておりました。

非常勤医師として隔日で外来勤務にしようかとも考えましたが、そのドクターは産業医の資格があったため健診センターへの勤務としました。

理由は、仮に子どもさんが体調を悪くし出勤できない場合、外来勤務だと当日来られた患者さんに迷惑をかけますよね。

外来勤務にすると確実にそのドクターを目当てに病院へ来ますので、その患者さんに対しての説明が大変になります。

一方で健診センター勤務であれば、来院される患者さんは健康診断目的の方ばかりですので、ドクターの氏名はありません。

ですので、私は子どもさんが落ち着くまでは健診センター勤務とし、その後のことはまた先生の希望を聞きながら考えるとの事で採用しました。

といったように私の場合は、たまたま健診センターあったから採用までに至りましたが、通常は少し厳しいのが現実でしょう。

ですが、少しでも働けるのであれば考え方一つで何とかなる可能性もあります。

最初から、こういったドクターしか採用しないと決めつけるのではなく、柔軟に採用を考えて頂ければもっと多くの女医さんが活躍出来るのではないでしょうか。

現在、復職を希望している女医さんも諦めずに転職サイトなどを利用し、諦めずに探してみてください。

必ず理解ある医療機関はあるはずです。

理由5.失敗が許されない仕事であり、いつも張り詰めた緊張感(プレッシャー)

すべての医師が自信を持って診療に携わっているかというと、そうではないと思います。

やはり「不安」だと感じながら診療をしている医師も多くいるのも事実です。

それは、「常に生命に直結するから」です。

一瞬でも油断していると思わない失敗を起こし医療事故に繋がります。

医療事故=訴訟のリスクを常に抱えていることになり、いつも極度の緊張感の中で診療している医師もいます。

それは、医師も人間であることから張り詰めた「糸」がプツンと切れることもあるでしょう。

対策

医療行為をする医師は常に「人の生死」に関わる仕事です。

極端に言い過ぎかもしれませんが、本当に今では何かあるたびに「失敗したら訴えられる」といった気持ちが心のどこかにあり、いつも緊張感を持って仕事をし、息が抜けないものだと思います。

当たり前だとおっしゃる方もいるかもしれません。

しかし、やはりそれに耐えきれず辞めていくケースも多くあります。

解消方法があるとすれば、やはり学生時代にきちんと自分自身を見極め、自分がどんな診療科に向いているのかを探すことが重要だと思います。

ある程度経験も積んできて、これから更に飛躍する時期に自分の心の糸が切れるドクターも少なからずいますが、そのような場合にはケースにより対応を考えなければならないですね。

例えば外科系のドクターがもう手術は出来ないとなった場合、その医療機関がどのような形態かにもよって変わってきますが、「外来診療のみ」、「入院・外来ともに診療のみ」、「他へ転職」など様々なことを含めて考えなければなりません。

私も実際に過去にこういったドクターを何人か見てきました。

助けることが出来ず辞めていったドクターもいます。

しかし、そのドクターの気持ちの中で最も負担となっている部分を取り除いた形で活躍出来る場を提供し、辞めずに残ったドクターもいます。

いずれにしても、やはり早い段階で自分自身というものを理解してもらいたいというのが本音です。

どんな仕事にしろプロ意識を持って働かなければなりませんが、医師の仕事は「ある程度の失敗なら許される」という仕事ではありません。

もし仮にこれを読んでいるドクターで今まさにそういった心境にある方がいましたら、まずは自分で抱え込まずに身近な人に相談する。

直属の上司でも同僚でも構いません。

まずは人に話すことにより、その問題を共有することにより気持ちの変化も出てくるかもしれません。

そこから次の段階へと進んでいってほしいと思います。

まとめ

ここまで5つの項目に対して「理由と対策」といった形でお話をしてきましたが、「辞める」、「辞めたい」という理由は多岐に渡ります。

理由が分かるなら解決策を考えればという簡単なものではありません。

人にはそれぞれ仕事に対して悩みがあるのも普通のことかもしれませんが、医師という仕事が「人の病気を診る・治す」といった特殊なものだけに、患者さんとしても雇用している医療機関としても不安定な状態で診療に当たってほしくないものです。

しかし疲弊している医師は多く、自分を精一杯制御しながら日々の診療に従事しているのが実情ではないでしょうか。

そういった意味でも医師不足を解消するだけでも、多くのドクターが救われることにもつながります。

個人や周囲で解決出来るものもありますが、やはり国として何か政策を講じなければますます医師は不足していく、辞めていくドクターは増え続けると思います。

医師個人・医療機関・国とそれぞれが出来ることを行い、少しでも辞めていく医師が減っていくこと願っています。