これから超高齢化社会を迎えるにあたり、医療機関自体も方向性を定め経営をしていかなければ淘汰される時代へと変化してきています。

それに伴い、働く医師も同じように自分自身の方向性をしっかりと定めていかなければなりません。

大学の医局に属して何となく学び、過ごしていく時代はすでに終わったと言えます。

また、「患者を診てあげている」といった、いわゆる上から目線の時代もすでに終わっています。

では、そんな医師のキャリア形成にはどういった道筋があるのか?

それを私、医療機関で管理職として採用にも携わった経験や、医療専門の転職エージェントとしての経験の両方の視点からみたお話をさせて頂きます。

医師にはどういったキャリアプランがあるのか?

まず、そもそも医師にはどんなキャリアプランがあるのかを説明していきます。

  • 大学の医局に属し大学病院や関連病院で働きながら臨床経験を積み大学内での地位を確立していく。
  • 大学の医局には属さずに中核病院等で働きながら「自分のやりたい医療」を模索すると同時に進む道や地位を探していく。
  • 臨床医師以外の道に進む(研究等)
  • 個人開業医となる。

大まかに説明すると上記のように分けられます。

まだまだ詳細にしていくと、本来は後期研修時にどうしたいのかがポイント(博士号を取得する等)となったりもしますが、結果として辿り着く先は上記にあげたいずれかになると思います。

次はそれぞれのイメージを解説していきたいと思います。

勤務年数によるキャリアのイメージ

卒後、3年〜5年

いわゆる後期研修時代にあたります。

この時期に上記にあげたような道のどこに進むのかを選択する医師が多くいます。

当たり前だと思う方もいらっしゃると思いますが、「どの道に」と言うのは方向転換して違う道に進む方が増えているのも事実です。

今までは「医局制度」があったために、あまり表に出てくることがありませんでしたが、「自分には合わない」、「想像していたものと違った」などの理由でキャリアチェンジをする医師も少なくありません。

卒後、6年〜14年

この時期ともなれば何種類かの認定医や専門医を取得し、ある程度の経験も積んでおり、また仕事は忙しいものの、その忙しさを上手く対処していき体力的にも少し余裕があり、更にもう一歩上の経験を積みたい時期。

また、平均的な給与で獲得出来るため、医療機関としては1番欲しい人材の時期と言えます。

40歳〜

医師として円熟した時期になります。

この時期から診療科の責任者や管理職などの役職に就く方も多くいます。

しかし一方で、同じ医療機関で勤めるのではなく個人で開業する先生も多くいるのも確かです。

この年齢からが開業する割合が1番多い時期です。(開業の平均年齢は40歳前後と言われています。)

理由としては、特に手術の症例数が多い診療科の先生ほど、年齢的にも今までのように手術が出来るのか、また勤務している医療機関の忙しさや体力的な面を考慮して開業することが考えられます。

50歳代後半〜

この時期からは二手に分かれます。

1つ目が「すでに医療機関のトップ(院長、副院長、診療科部長等)にいる」、2つ目が「40歳代で就いている役職(医局長、病棟医長、外来医長等)をしている方」です。

しかし、どちらの場合もこれからどうするか。

ようは生涯現役で別の医療機関で院長などの役職し就くのか、あるいは現在の医療機関で定年退職をするのか。

どちらにしても、ここでも選択を迫られることになります。

向き不向きに合わせた医師のキャリアの道

手術が苦手な医師の場合

外科系の医師で手術が苦手だという医師も少なくありません。

手術が出来ないからといって活躍の場がないかというと考え方一つで道はあります。

例えば整形外科医師の場合。

整形外科の疾患と言えば腰痛にヘルニア、腰椎圧迫骨折、手や足の骨折、大腿骨頚部骨折に手根管症候群、バネ指などなど、まだまだたくさんの疾患があります。

中には手術が必要なく保存療法にて対処出来る疾患もありますが、手術が多いのも確かです。

そんな整形外科で手術が苦手な場合、どの道に進むかを考えていけば活躍の場は必ずあります。

例えば、慢性期の病院に就職し、回復期病棟などでリハビリドクターとして働くことも出来ますし、スポーツドクターの資格を取得するだけで就職先は格段に広がります。

現在は、専門外来としてスポーツ外来を開設している医療機関も多く、中高生を中心とした患者獲得を行い診療しているところでは重宝されます。

実際に私がいた医療機関でも、増患対策の一環として私がスポーツ外来を開設した経験がありますが、その先生は国体などに帯同するドクターで、野球にしろサッカーにしろ卓球であれ、あらゆるスポーツに対しての知識はあり、患者ごとに復帰するまでのプログラムを考えリハビリなどの処方は行なっていましたが、骨折などで手術が必要な場合は一旦他院に紹介をし、手術後にこちらへ戻ってきてリハビリをするといった流れでした。

しかし、地域からも重宝され、地域住民へ向けた講演会の依頼なども入っていたぐらいです。

精神的な病気になりがちな医師の場合

現代では、4人に1人の医師が精神的な疾患にかかったことがあると言われています。

原因は言うまでもなく総合病院の場合、外来診療を診て入院患者も診る。

そんな過酷な労働環境に加え、夜は救急患者受け入れたり、やはり医師としての使命を果たそうとすればするほど自分自身を犠牲にしているのが現状だと思います。

そのような先生ほど「患者さん想い」であり、「勉強熱心」であり、本当に真っ直ぐなドクターが多いように感じます。

私は、救急だけが本当の医療の現場ではないと思っています。

私が600床クラスの救急病院に勤務していた時ですが、ある呼吸器外科のドクターがいました。

呼吸器外科の部長でしたが、上には副院長がいました。

副院長は、回診には行くもののオペはほとんど行うことはなく、その部長がオペを行なっていました。

毎日のように午前中は外来診療に出て、お昼からは手術。

気胸や肺腫瘍、肺がん、食道がん、縦隔腫瘍と様々なオペをこなし、私が記憶している限り手術待ちは半年以上先になることも珍しくありませんでした。

私の方が先生より早くその病院を去ったのですが、数年後に先生が辞められるとのことで送別会にわざわざ呼んで頂きました。

久々に先生に会えると喜んで行きましたが、私が見たのは当時バリバリに手術をこなし、術着のまま病棟でパソコンに向かっている、イキイキとした面影はそこにはありませんでした。

ゲッソリとした本当に疲れきって、私でさえ病んでいるなと感じたのを覚えています。

その後は少し期間をあけ、次に先生が選んだ道がホスピスでした。

これまではガンと闘う場にいた人間が、言うなれば今度はガンとどう向き合うかという場を選択されたのにはビックリしました。

しかし、それから数年後に先生と話す機会がありましたが、あの手術をしていた時期よりイキイキと輝いていました。

「ホスピスは、確かに病気を治す場ではない。その患者さんらしい最期を医師としていかに迎えさせてあげられるか。」だとおっしゃっていました。

今では、そういったガンの患者さんの最期を「病院ではなく自宅で」と考え、自らホームドクタークリニックを開業し、今でもガンと闘っています。

言い方は悪いですが、一見すると大病院でバリバリ手術をして、たくさんの部下を育てながらも、また1番には患者さんを助けていた時の方がカッコよく見えますが、「病気と闘う」ってのは何も大病院だけではないんだなと私はその時気づきました。

過酷な労働環境においていた病院側にも責任はあるのかもしれませんが、今の日本の大病院の実態でもあります。

そんなドクターはたくさんいるはずです。

やはり「医師として…」という自分自身の信念があるからこそ、何を犠牲にしてでも患者さんをという思いになるのだと感じます。

しかし、そのような先生こそ私は「宝」だと思います。

決して第一線から身を引くことは「終わり」とか「負け」ではありません。

どんな舞台にも患者さんはいます。

患者さんがいる限りそこが第一線であり、闘う場になると思います。

医師も人間です。

自分が壊れたら残された患者さんが困ります。

私は、本当に多くの病んでいく先生方を見ました。

だから、声を大にして言いたい。

自分を見つめ直す時間があってもいいじゃないですかと。

そうすることで新たな発見がきっとあります。

今すでに精神的に参っているドクターも世の中にはいると思います。

そのような先生には、ぜひ一歩でもいい、半歩でも下がって少しゆっくりとした環境で自分を見つめ直してほしいと思います。

コミュニケーション能力もなくすべての意見に否定的な医師の場合

ドクターで昔ながらの考えを持っている方は多く見受けられます。

それは、「オレが患者を治している」と思っている人です。

確かにすべての医療行為において医師の指示のもとで医療行為が行われ、患者さんによっては治っていく方もいます。

しかし、実際の医療行為やその補助的業務は、看護師、リハビリスタッフ、レントゲン技師、検査技師、MSW、補助看や事務の方と様々な職種の方が関わっています。

最近では、「チーム医療」という言葉をよく耳にするようになりましたが、まさにその名の通りで、それぞれの職種が関わることにより「医師は医師の仕事に専念でき」、「看護は看護の仕事に専念できる」などといったように自分一人で患者さんを治療し、治していくことは不可能であるという事です。

それを理解していないのか「自分が1番偉い」、「自分中心」といったような考え方の医師が今でも多くいます。

正直、1番医師として向いていないと言えると思います。

すでに「医者が神様」といったような時代は終わり、リハビリが有名で患者さんが集まる医療機関もあるくらいで、「医師が」ではなく「リハビリが」といったように医師より他職種の方が上に来ていることもあります。

上記にも記載したようなドクターがいる医療機関はおそらく人材の定着率も悪いのではないかと予測できます。

自身で自覚している先生方は、一旦現場を離れ、現在は夜勤のバイトのみという働き方でも出来ます。

夜勤のみでも結構なお金にはなりますし、それを斡旋、サポートしてくれる企業もあります。

まずは、そういった働き方で現場というものを外側の視点から見て、自身を見つめ直さなければ、残念ですがついて行こうと思うスタッフはいないと思います。

現代の流れに乗り、他の医療機関との差を生まなければ生き残れない時代へと突入しています。

そういった事も踏まえて、医師にはいろいろな働き方があります。

提案した夜勤もいろいろある中のほんの一部です。

「病院とは?」、「自分の役割とは?」、「本当に一人で患者を治せるか?」などなど考える期間があっても良いのではないかと思います。

医師がキャリアアップのために普段からやっておくべき4個のこと

技術の習得

これは当たり前のことですが、まずは医師としての技量を磨くことです

コミュニケーション能力を磨く

コミュニケーション能力は特に大事な部分です。

患者さんであれば意外と上手く接する、優しいといったドクターは多いです。

しかし、対職員に対してや部下に対しての接し方は自分自身で学ぶことが大事です。

例えば後輩医師に対しての接し方で言うと、昔であれば「技術は見て盗む」と言ったような時代でした。

しかし、もうそのような体育会系の時代は終わりました。

また、対職員に対しても同じことです。

医療の現場は特殊で、それぞれ違う国家資格や民間の資格を取得している人の集まりです。

それぞれにプライドがあり、それぞれに違った考えがあります。

そのような中で私が言いたいのは、「優しくする」、「怒らない」、「下の人間に気を遣う」といったような事を言いたいのではありません。

ようは相手の意見をまずは受け入れ、尊重し、信頼する、そして同じ目標に向かって協力できるような人間関係を構築する。

自分の意見を相手に押し付けない、また助けてもらった時は素直に「ありがとう」と言えるか、そういった事です。

最初は苦労するかもしれません。

どのように扱えば良いのか、どのように伝えれば良いのか悩むと思います。

しかし、それが今後の人生に大きく響くポイントになります。

単に優しくするだけでなく、「誰からも」、「どんな職種の方からも」頼りになる、好きだと言えるドクターになることを磨いて下さい。

人をまとめる力(統率力)を身につける

人をまとめるのは誰もがやりたくない事です。

しかしながら、先述にも記載したようにチーム医療が主流な時代の中、医師を中心とするチーム作りを経験するのも一つであり、当然年数を重ねていくと後輩も出来るようになります。

そういった医局内での自分に出来る役割の中で統率力というものを自然と身につけてほしいと思います。

「治す」診療力だけでなく、「経営」も考えた診療力を

若いうちは技術を習得し、より多くの患者さんを診て、様々な症例と向き合っていくことが基礎となります。

しかし、中間層(いわゆる40歳代から)は、単に治す医療だけでなく、その医療機関の方針や考えに沿った診療を行いつつ、経営面にも重きを置くことが重要となります。

自分のやりたい医療を好き勝手にやっている医者はいらないという医療機関も多くあります。

自分のやりたい医療があるならば、それを認めてくれる医療機関を探すか開業するかしか選択肢はありません。

やはり医療機関は診療報酬制度によりルール化されており、また保険診療も厳しく制限があります。

そのような中で、そういった制度を理解し診療を行っていくことで、医師という技術屋だけでなく、組織人としての成長が必ずあります。

かつ、医師を続けていく中で上を目指そうとしている人は必ずこの力は必要になります。

しかし、私は上を目指す医師だけでなく、すべての医師がこういった考えを持ち、日頃の医療に携わることでその医療機関の成長力は計り知れないと思っています。

最後に

医療介護は本当に厳しい時代へと入っています。

大きな法人へ吸収させれるのも今では珍しくありませんし、経営不振だからこそ不正請求をしたりといった事も現実に起こっています。

また、一方で人手不足の問題も深刻で、看護師の数が定数に足りずベッドを10床空床として運営している医療機関や、人手不足により働くスタッフが疲弊して老人虐待などの事件に繋がっている可能性も否定出来ないはずです。

これから超高齢化社会を迎えるにあたって、私は病院の管理者で採用する側も経験し、現在はエージェントとして医療介護業界に携わっていますが、あまり危機感がないところが多く見受けられます。

やはり患者さんの事も確かに考えていかなければならないですが、医療機関が潰れたら元も子もなくなります。

各々の職種の管理者ぐらいは経営の数字を把握し、それ専用の経営部隊を編成しても私は良いと思っています。

経営=事務方の仕事。という時代ではありません。

確かに事務長や医事課長の手腕が問われるところでもありますが、これもチーム医療と同じく、チーム経営が私は本来あるべき姿ではないかと考えています。

何も知らない私が生意気な事ばかり言わせて頂きましたが、少しでもこの思いが伝わればと思っております。